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コラム「パレスチナ便り」第4回

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第4回:小学校1年生から英語が・・・
パレスチナの教育問題(その1)

田中 好子

特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン
事務局長

田中 好子(たなか よしこ)

特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーン事務局長。1986年の同キャンペーン設立に参加。パレスチナやレバノンの難民キャンプで、子どもの教育、保健、人権に関わる支援事業をコーディネート。国連パレスチナ問題NGO国際調整委員会委員、同アジア地域調整委員会委員を歴任。パレスチナのNGOはもとよりイスラエルの平和団体や各国のNGOとの関係が深い。 同キャンペーンは1996年に東京弁護士会人権賞を受ける。
翻訳書「イスラエル兵役拒否者からの手紙」(NHK出版)。

■ パレスチナ子どものキャンペーン ウェブサイト  http://ccp-ngo.jp/

1940年代後半に難民となったパレスチナ人たちは、教育を非常に重要なものと考えるようになりました。自分たちが十分な教育を受けておらず、世界を知らなかったから、家や土地を奪われ、故郷を追われることになったのだと考えたからです。また土地も財産も失ったあと、頼りにできるのは教育しかないと実感したからです。

難民キャンプ1950年代、中東の各地に作られた難民キャンプでは、テントの学校が作られ、10代の少年少女が教師になりました。60年代には、クウェートなど石油産出国では、教員のほとんどが国連の作った難民のための学校を出たパレスチナ人で占められていました。

電気のなかった難民キャンプに育った知人は、夜、街の街灯の下で勉強をした思い出を話してくれました。

弟や妹に教育を受けさせるために、学校に行かずに働いて学資を出し続けた兄や姉たちはどの家族にもいました。80年代、パレスチナ人は難民でありながら、中東で最も教育水準の高い民族だといわれていました。

しかし、現在、パレスチナ人たちの教育水準は大幅に低下しています。30万人以上のパレスチナ難民が生活するレバノンでは、1975年から1990年まで続いた内戦の中で、パレスチナ人は当事者となり、被害者となりました。難民キャンプは瓦礫となり、多くの青年が殺されました。この長期の期間、教育は途切れ途切れになり、形式的には学校を出たけれども十分に読み書きのできない多くの人々が生み出されました。

21世紀に入ってからは、小学校1年生からカリキュラムに英語が導入され、小学校5年生からは算数と理科の授業は英語で行われるようになりました。もともと母語のアラビア語自体が、口語と文語に分かれている難しい言語で、学校で習う文語に小さい子どもが慣れるまでに非常に時間がかかるものですから、その上にもうひとつ別の言語である英語が小学校入学時に加わるのは大きな負担になります。

なぜこういうことがおきているかといえば、パレスチナ難民は、住んでいる国(この場合はレバノン)のカリキュラムを勉強することになっていて、グローバリゼーションの中でバイリンガル教育を進めるレバノンのカリキュラムを強制されます。しかし、難民キャンプの生活状態は、バイリンガル教育に対応できるものではないのです。

学校のほとんどは、生徒の数が多すぎて、二部制をとっています。1つの教室を午前と午後違う子どもたちが使っているのです。そのため1日の授業時間は4時間しかなく、しかも1つの教室には40人から50人の子どもであふれています。先生たちは分厚い教科書を終わらせるのに必死です。小学校1年の英語の教科書は、質量ともに日本の中学校3年生の教科書を上回っているかもしれません。家でも、失われた時代に学校を出た親たちにとってはアラビア語を教えることさえも困難です。

その結果、小学校で2割、中学校で3割の子どもたちが実質的に落ちこぼれていると考えられています。特に中学校では2度落第すると放校されるので、ドロップアウトは深刻な問題です。職業訓練を受けるためにも中学卒業程度の学力は必須だからです。
一方で、大学で医学などを学び卒業できたような恵まれた若者の場合でも、レバノン社会では医師になれないという大きな障害が立ちはだかっています。というのも、パレスチナ人はレバノンで市民権を持たず、70種類以上の職業に就くことが禁じられているからです。しかも土地や不動産を持てないので、自営業をすることも難しいのです。

子どもが勉強をするためには、環境とモチベーションの両方が必要ですが、難民キャンプでは現在、その双方が失われた状況にあります。その二つを作り出すことが、私たちの取り組む教育支援の目的なのです。(続く)

*3月11日夜に、毎日エデュケーションさんのスペースをお借りして、パレスチナの教育問題と当会の支援について勉強会を開きます。会では、ここでご紹介したレバノンの教科書をお見せします。また、レバノンのほかにガザやヨルダン川西岸の問題、現地で私たちが取り組んでいる教育支援についてご紹介します。ぜひご参加ください。



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