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コラム「ボボたちのパリ」第5回

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第5回:中流層の反乱


1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。

「大学を卒業しても就職は容易ではない。たとえ就職出来ても2年間も解雇の不安が続くなんて」。パリ大学ジョシュア校演劇学部修士課程のイザベラさんは雇用促進策「初期雇用契約」(CPE)への反対理由をそう説明した。フランス全体の失業率9・6%に対し、26歳未満の失業率は23%と他の欧州諸国に比べても高く、若者の間には漠然とした雇用不安が広がっていた。

セーヌ川の橋上の学生たちしかし、23%を詳しくみると大卒者は9%で仏全体よりやや低く、高卒者14%、無資格者40%と幅が広い。ドビルパン首相(当時)はCPEの説明で「若者の失業率40〜50%もの地域がある」と強調し、05年秋に暴動を起こした移民系若者を対象にしたふしがあった。ところが、移民系若者たちは「解雇される以前に就職がない」とCPEにほとんど反応しない一方、漠然とした不安を抱く大学生が敏感に反応した。仏社会学者は一斉に「中流層の反乱」と呼んだ。


若者の反乱は「経済の国際化(グローバライゼーション)への抵抗」ともいわれたが、そればかりではない。日本のように「新卒採用」という雇用制度がなく、長引く不況の中での就職難を身にしみて実感し、「CPEがより多くの職を創出する」と言われても「より簡単に解雇される」との不安が先行してしまったのだ。

パリで中学の臨時教師をしているサランジェ・ディアロさん(27)は、パリ大学法学部を卒業後、出版社の法律部門での就職を目指した。しかし、この部門での求職は少なく、20数社に願書を出して面接できたのは1社のみ。それも「担当者の産休中の一時雇用」のためで、あきらめて方針を転換し、税務署職員になる公務員試験受験を準備をしていた。しかし、フランスでは希望職種に就けず公務員試験を受ける学生が急増し、税務職員試験の倍率も67倍という驚異的な高さとなっていた。

フランスには新卒を一括雇用して一から訓練するという制度はなく、新卒者も既卒者も「社員の退職や転職で空きが出たら採用する」状態。応募者は常に即戦力となる技術を求められ、新卒者はむしろ不利となる。学生の多くはインターン生として低賃金または無給で働いて機会を狙うが、簡単に就職にはつながらない。

一方、いったん就職できると、手厚い社会保障制度と労働者の権利保護があり、経営者側からすると雇用の経費は高く解雇は容易ではない。CPEは「試用期間中は理由なしで解雇できる」制度で、「若年労働者の解雇を容易にし、新規採用も容易にする」狙いだったが、就職難に直面する若者には「負の側面」しか映らなかった。

経済協力開発機構(OECD)のコティス主席エコノミストは「保険のアクサ、航空機のエアバス、小売のカルフールや高級ブランドのルイビトンなど、仏の優良企業は十分グローバル化に対応している。問題は生産効率の悪い未熟練労働力が手厚く守られすぎている労働構造だ。労働者の中で未熟練労働者の割合が高すぎ、訓練・教育でスリム化せねば経費がかかるので雇用せず、これが新規雇用にも影響し、若者が就職できない悪循環が続く」と指摘した。

【同時掲載コラム】 「Mainichi Daily News 編集長の目



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