グローバルキャリア塾 連載コラム

クロアチアからこんにちわ (第3回)

第3回:ZSEMからこんにちわ

ザグレブ経済経営大学
Zagreb School of Economics and Management

純子 スボタ

国際基督教大学国際関係学科卒。1995年より9年間シャープ株式会社に勤務。 海外代理店営業、OEM営業、及び渉外部勤務を経て、2003年より駐クロアチア日本大使私設アシスタントとしてザグレブに滞在。 生け花、茶の湯、着付け、寿司ワークショップ等日本文化関連行事の運営に携わり、クロアチアにおける日本文化理解の向上に尽力。 任期満了後、2007年から1年間、在パリのシャープ・エレクトロニクス・フランスに勤務。クロアチア人と結婚後、2008年2月よりザグレブ経済経営大学に勤務、 同大学のインターナショナルオフィスおよび日本センターの運営に携わる。2010年同大学MBA課程終了。3児の母。
■ ザグレブ経済経営大学 HP: http://www.zsem.hr/

ザグレブ経済経営大学

(2013年11月15日掲載)

ZSEMのキャンパス

▲ザグレブ経済経営大学(ZSEM)のキャンパス

ザグレブ経済経営大学(ZSEM:Zagreb School of Economics and Management)はクロアチアの私立大学。経済経営系の単科大学のため、ビジネススクールと言った方が適当かもしれない。事実、仏系コンサルティング会社が実施しているEduniversalの世界ランキングではクロアチアのビジネススクールという分類で、2013年度まで6年連続トップという評価を頂戴してきている。ビジネススクールとして当然のことながら経済経営系の科目数や教授陣は充実しており、今年は開学以来の悲願だったAACSBの認証も受けた。AACSB(The Association to Advance Collegiate Schools of Business)はビジネススクールの教育レベル向上を目的としたもので、ハーバードやエールなどの大御所が名を連ね、日本では慶応と名古屋商科大学が認証を受けている。

そもそも国立大学が幅を利かせてきたクロアチアで、ZSEMは私立大学の先駆者である。開学は2002年とまだその歴史は浅いが、ユニークさでは際立っている。規模が大きく身動きが取りにくい国立大学に比較してフレキシビリティーに富み、教授陣と生徒との距離が極めて近いという小規模ならではの利点がある。経済経営系の大学なら就職に強いはず...という学生の期待を裏切らず、学内に設置されたキャリアセンターが就職のサポートをするのも売りの一つである。失業率が19%を記録するクロアチアで9割の学生が卒業後6ヶ月以内に就職しているという数字は無視できないものだろう。

もう一つのユニークさとして挙げられるのが積極的な国際化。世界各国100校以上と提携し、学生の交換留学を率先している。半年あるいは1年を海外の提携校で過ごす学生の数は全学生の10%に及び、日本の提携校の中では名古屋商科大と別府の立命館アジアパシフィック大学が人気のデスティネーションである。ヨーロッパでは屈指の観光地として挙げられるクロアチア。ZSEMへの留学を希望する学生はさすがにEU圏内の国からが多い。特にフランス。次いでスペイン。意外なことにメキシコからも多数。アジアでは今年初めて韓国からの留学生が3人。これは非常に画期的なことで、日本からの留学生の到着にも期待が膨らむ。授業は英語で行われる。少々苦手な英語も毎日授業に出る中で磨かれる。今秋、カザフスタンから入学した生徒はいわゆる特別枠での受け入れだった。弱点の英語を補講で補いつつ頑張っている。

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このZSEMに勤務し始めて6年が経つ。内、3度産休を取った。3度も立て続けに産休を取りながらもまだ勤務を続けているのは大学側の温情か。クロアチアにおける制度的なアドバンテージについてはまたの機会に触れるとして、今日は仕事を通じ感じてきた文化の違いについて触れてみたい。

先ずは職場における年齢の重みの違い。私は職場の年長者に対する配慮はイロハの一つだと思っていた。私よりかなり若いスタッフが多い職場で今だに面食らってしまうのが、つい昨日大学を卒業したばかりという風情の同僚達にタメ口をきかれることである。試しにこちらが敬語で返してみるが効果なし。同僚は同僚、年齢で仕事をしている訳ではないという理屈は理解できる。歳は若くても私よりZSEMでの在職歴が長い人も中にはいる。でもなぁ...と、ついボヤいてしまいたくなるのは私だけだろうか。シャープでは職場の後輩達に対してですらタメ口をきくことは躊躇された。重要なのはきちんと職務をこなせるかどうかであって、若い同僚達が私にタメ口をきいたとしても動揺することは何もないのだろうがどうしても違和感が拭えない。ミニスカートで出勤する同僚を見てドキッとさせられる私なのだ。海外に暮らす者としてナイーブに過ぎるというものだろうか...。

一方、若い同僚の堂々たる姿勢に感心させられることもある。例えばZSEMでマーケティングのトップをしている同僚。大学卒業後すぐにZSEMに勤務し始めた彼女は私より10歳以上若輩である。しかし全く臆すことなく堂々とマーケティングの“ディレクター”を自称している。若いから未熟という観念がなく、未熟だから周囲に遠慮しつつなどという雰囲気も皆無。日本だったら叩かれそうな勢いで「自分は出来る」オーラを撒き散らしつつ、実際抜かりなく仕事をこなしている。年齢に惑わされる部分を残す私はまだ多分に日本人的なのかもしれない。○歳だから何が出来る、出来ないという議論はそもそもありえない環境にいるということでもあるだろう。

もう一点は大卒としてのプライドの高さ。先に書いた通り、ZSEMは私立大学。当然のことながら有料だ。成績優良者が国立大学の学費を免除されることを思えば、学費が発生すること自体驚きかもしれない。大学に進学する人口がまだ一部に過ぎないことも勘案すると、金銭的な投資をしつつ修学するということのハードルがまだまだ高いように思う。そうしたことが大卒のプライドに影響しているのかもしれない。例えば、来客時にコーヒーを淹れるよう上司に指示された同僚が「大学まで出てコーヒーを淹れるなんて!」と大憤慨。シャープ入社当時、職場の40数人分の机を毎朝雑巾がけすることに何の疑問も抱かなかった私とは大違いだ。入社当時は大卒であろうと院卒であろうと何でもするものという認識は日本の組織だけの特殊性かもしれないが、コーヒーくらい淹れても仕事に大幅なロスが出るわけでもないでしょ~と思ってしまった。

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余談になるが、某TV番組の関連で、セクシー派で有名なクロアチア人女優に出演を打診した際のこと。ロケにはセクシーさを強調する服で来てくださいとの依頼をしたところ「娘がいるし大卒だから」と回答を留保された。娘がいるからという説明は了解した。しかし「大卒だから」が出てくるとは思わなかった。「大卒なのに」アラレもない姿の写真がネット上に多数見られるのはどう解釈したらよいのか、しばらく理解に苦しんだ。

国が違えば文化の違いは想定範囲内。圧倒的に少数派の日本人としてクロアチアで生活をしていくためには、文化の違いを認識しつつ、くじけず凹まず泳いでいくしかない。

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ZSEMに設置された日本センターはしばらく休眠中だが、近い将来ZSEMに留学を決める日本人留学生のための相談窓口として活用できるかもしれない。くじけず凹まずクロアチア留学ライフを楽しんでもらえるように気の利いたアドバイスの一つくらい出来るといいと願っている。

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