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コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第10回

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第10回 2010.3.1 国母選手の誤算

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

あの恰好でなぜたたかれるのか。五輪スノーボードの国母和宏選手の空港でのラフな姿の映像と写真を見て不思議に思った。

何を隠そう、私は「隠れ国母」なのだ。編集長だがネクタイをして会社に行ったことがない。髪は白髪交じりでボサボサ(不潔ではない、と思う)、午後にはガムを噛んで眠気を覚ましている。やることやッてりゃ恰好なんてどうでもいい、が私の立場だ。新聞社だからか、編集長だからか、周りから文句を言われたことはない。

そんな私から見れば、国母選手の空港での姿は「今どきの若者によくある恰好」で、何が問題なのか分からなかった。「日本の五輪選手らしく!」という非難には気が滅入る。かつて日の丸の重みに圧され自殺した五輪選手がいたが、国家を背負って戦うのはきな臭い。「税金で行ってるんだぞ!」というのは事実だが、あれくらいの自由はあってもいい。

ところが、非難を受けての会見での彼を見て印象は変わった。記者の質問に、国母選手は「反省してまーす」と、あっさり非を認めてしまったのだ。「これはボクのスタイルです。試合ですべてを出し切ります」くらい言ってくれれば納得できたのだが…。しかも、テレビの映像では、その直前に「チッ、うるさいな」という舌打ちのひと言がはっきり聞こえた。

あれはマズイ。彼には自分のスタイルへの自信はなかったわけだ。その上に、非難されたら「うるさい」と思っているのに、「反省してまーす」と実際にはまったく反省していないことが日本中の視聴者に知れてしまった。

彼にとっては五輪も他の賞金大会の1つだったかも知れない。しかし、五輪は賞金はないが観ている人の数が他のどの大会より桁違いに多く、ふだんのスノボー・ファンの他にも様々な層の人が注目している。そのことを自覚していれば自身のスタイルを貫くか、あるいは方針転換を認め誠実に謝るべきだった。

競技の結果は大技に挑戦して失敗し、8位入賞。翌日の新聞は彼が難病の友人のためにカンパを続けてきたことや授業やレポートをきちんとこなしてきた誠実な人柄を紹介していた。意思が強く本当はやさしい若者のようだ。外見がすべてではないのだ。彼にはそう語ってほしかった。



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