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コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第12回

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第12回 2010.5.1 権利意識の進歩

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

岡本真夜さんの「そのままの君でいて」に類似した曲が上海万博のテーマ曲となった問題で、著作権が脚光を浴びた。デザインや商品名などでも、他国の類似品が出回っている事実はこれまでもしばしば指摘されており、中国での著作権意識の低さが改めて問題視されている。

日本でも著作権を文書化し、きちんと守るべきとの意識が強まったのはここ数年ではないだろうか。インターネットの普及で情報のコピーとアクセスがより簡単となっており、対策としての著作権保護が広く叫ばれ出した。著作権や人権の尊重を巡っては、概して「途上国であいまいで、先進国で厳格」とみられている。確かに、かつて途上国だったころの日本ではあいまいで、最近は意識が定着しつつある。それでは、各種権利の保護は「厳格になることが先進国入りの条件」なのだろうか?

昨年春まで3年半、特派員として暮らしたフランスは人権感覚に優れ、特に「労働者の権利意識」がはっきりしている社会として知られる。労働者の権利が明確に保証されると最低賃金、労働時間、休暇日数が保証される。具体的には、(幹部を除く)一般労働者は年間5週間の休みが保証され、労働時間は週35時間(1日7時間)と規定されている。休みはたとえば「夏休み4週間、クリスマス休み1週間」と、長期休暇を取る人が大半で、8月は社会全体が事実上動かなくなる。労働時間は延長もできるが、社会保険料や税金も加算され経営者は気乗り薄で、何より労働者側に7時間以上喜んで働こうなどという意思がない。権利が脅かされると感じれば労働者側による大規模ストが続発する。

日本では店員は客の注文に素早くにこやかに対応するのが常識で、修理なども的確で早い。フランスでは顧客尊重より労働者の権利意識が強く、高級店でなければ店員はニコニコしておらず、時間が来ればサービスを切り上げ、帰ってしまう。日本人観光客は大いに不満だ。しかし、日本では「サービス残業」が恒常化しており、超過時間も超過賃金もあいまいで、労働者意識の欠如が指摘されている。

日本の労働者が働きやすいとは言えず、フランスの消費者が暮らしやすいともいえない。著作権は創造物への権利だから明確にするほかないが、サービスや労働など人がからむ権利は「明確になれば進歩」とだけでは割り切れない面もある。



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