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コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第13回

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第13回 2010.6.1 「ほほ笑む」仏の教え

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

並みの石段ではなかった。登れども登れども頂上は見えてこない。週末、熱海近くの伊豆山神社に遊んだ。下の国道から山の中腹にある神社まで石段が837段あるそうだ。途中休んでいると、運動着の青年が身軽に駆け下りて行った。参道脇の自宅庭を手入れしていた老女の「えらいねえ。もう10回くらい往復してるねえ」のつぶやきが耳に入り、気絶しそうになった。1回登るのに苦闘しているのに、10回も往復している人がいるとは…。

伊豆山からしかし、登り切った時の気分は最高だった。自分の来た道を征服したようだった。新緑がまぶしく、吹き渡る風がすがすがしい。境内から見下ろす熱海港と相模湾の遠望は期待通り。源頼朝が平氏から逃れ、北条政子と出会ったのがこの地で、境内はデートの場所だったそうだ。2人はあの石段を登ってきたのだろうか、馬か籠か?想像するだけで楽しい。

本殿の右奥に郷土資料館があり、そこで思わぬ発見があった。かつての本尊が「えびす様」のように笑みをたたえた仏像だったのだ。神社なのに仏像とは?伊豆山神社は江戸末期まで「伊豆権現」と呼ばれ、山岳信仰と仏教が合体した神仏習合(しゅうごう)で、本来神社の神であるえびす様が、ほとけ様のように祭神となっていたのだ。

なんとあいまいでおおらかで太っ腹な神(仏)だろう。それが明治初期に起きた廃仏毀釈運動で神社となった。日本はこれを機に天皇の神格化、個人崇拝、軍による天皇と神道の政治利用へと進む。軍事拡大への一直線だった。

普天間、金融危機、高齢化、財政逼迫ーーと、新聞を開けば難題が山積している。ただ、あまりギチギチ詰めない方がいいのかも知れない。平日は仕事に追われるが週末は小旅行に出たり、外食する自由と余裕はあるし、日常で買いたいものはないほどだ。難題を問いつめるばかりでなく、行き詰まったら伊豆山のあのほとけの像を思い起こそう。


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