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コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第15回

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第15回 2010.8.1 移民受け入れ問題

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

ユニクロを運営するファーストリテイリング社の柳井正会長兼社長が、移民の積極受け入れを提唱している。同社はノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのムハマド・ユヌス氏率いる貧困者向け少額融資機関「グラミン銀行」と合弁会社を設立し、現地の雇用創出などを目指す事業に乗り出すと発表しており、これには最大限の称賛を贈りたい。ただ、積極的な移民受け入れは問題が別で、容易に同意はできない。

柳井氏は、日本が成長力を取り戻す手だてとして「移民受け入れは人口を増やし、経済を活性化させるメリットが大きい。子どものころから日常的に外国人と接すれば、日本人が苦手な国際化にも役立ちます。欧米など先進国はみんな移民を受け入れています。経済がグローバル化する中、日本も日本人だけで済むような時代ではありません」(毎日新聞7月17日朝刊)と提唱している。

高齢化社会に向けて、若く有能な移民を受け入れて日本を活性化しようという議論は、しばしば登場する。しかし、「日本人に活性化する力がないから移民導入に頼ろう」との姿勢は本末転倒の気がする。有能な移民受け入れは、当事国には頭脳流出ともなる。さらに、途上国から先進国に移り住む場合、最初の移民は有能で先進国社会に融和しても、彼を頼って親類・知人が次々と入国を図り、やがて融和しない一大集団を作ることがよくある。産業界の要請で受け入れを認めても、彼らは生身の人間で、一度受け入れれば子供の教育や就職、社会保障まですべての問題が発生し、「それは知らない」では済まなくなる。

南アフリカ・ヨハネスブルクに駐在した時、一番引っかかったのは、民族・部族ごとに言葉が違い、コミュニケーションのないことだった。その後駐在したウィーンやパリでも、旧植民地などからの大量の移民はフランス人やオーストリア人とは別の、事実上「ゲットー状態」で暮らしていた。私は日本にあの状態を生み出したくはない。

欧州諸国ではかつて左派が移民受け入れに寛容だったが、いまや積極的に賛同する人は左派にもいなくなりつつある。「人出が足りないから入れればいい」というような単純な問題ではないのだ。移民受け入れに消極的な日本は非民主的に映るが、受け入れ後に発生する問題の責任も考慮すべきではないだろうか。



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