スマ-トフォン向けサイトへ
サポートセンター

コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第22回

トピックス

グローバルキャリア塾・連載コラム

Mainichi Daily News編集長の目

> > Mainichi Daily News編集長の目

第22回 2011.3.1 落とし物が戻る社会

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

郊外に出かけた週末、帰りの電車にマフラーを忘れた。コートと一緒に棚に上げ、東京駅で下車する際、マフラーだけ置き去りにしたらしい。東京駅に電話で聞いてみた。この時点で「たぶん出てくるんじゃないか」と感じていた。高価なものでもないし、到着後掃除の人が見回って棚の忘れ物は回収してくれるはず、と思った。電話するとそれらしき物があるといい、翌日取りに行くとやはり戻ってきた。

これは凄いことだと思う。かつて暮らしたヨハネスブルク、ウィーン、パリのどの町でも、落とし物が所有者に戻ってくるなどという話しは考えられない。日本社会が親切だからというだけではない。むしろ、社会の中に「拾得物があれば所有者に戻そう」というシステムがあるからだ。東京駅にはJRを退職した取得物専門の担当員がおり、窓口や電話で対応してくれる。知らなかったが取得物が一覧できるネットサイトもあるという。この部門はJRにとって何の収益も生まないが、私のような客に「JRはきちっと対応してくれる」という安心感と信頼感を生んでいる。

かつて英テレビで米紙の記者がロンドンの地下鉄の遅れを批判して「東京では地下鉄もJRも2分遅れれば車掌が車内放送で謝る」と話していた。そこまで時間に囚われなくてもいい。日本社会には無駄な礼儀やおせっかいも多々ある。が、大都市でも落とし物が戻ってくるという安心感はすばらしい。こんな社会は他にはない。




 Mainichi Daily News 最近のお薦め記事  2011.3.1

※ Mainichi Daily Newsのサイトでは、基本的に各記事の掲載期間が1ヶ月となっています。掲載後1ヶ月経過した記事については、ページが削除されている可能性がありますので、ご了承ください。

★就活漂流:269社受け、ようやく内定

★EVに乗ってみた!/静かで加速も滑らか

★日中GDP逆転/海渡り「和僑」活路

★座禅:人気 「心をリセット」

★芥川賞:西村さん「自分より駄目な人」に受賞報告



=== 福井さんの新刊発売のお知らせ ===

「パリに吹くBoboの風 「豊かな左派」のフランス政治」
(第三書館 2010年6月)

毎日新聞社パリ支局長として約4年間をパリで過ごした福井さんが、その時の経験をもとに書き下ろした新作。移民や格差社会の問題、新たな政治的・文化的スタイルをもつ人々の登場など、フランス社会の変容とその背景に迫ります。
詳しくはこちら



Share (facebook)  このコラムをFacebookでシェアする。

  • カウンセリング予約
  • 説明会イベント
  • 資料請求

ページトップに戻る