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コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第1回

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第27回 2011.8.1 「アバター」と「ハート・ロッカー」

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

旧聞で恐縮だが、映画「アバター」をDVDで観て、ソマリアを思い出した。「アバター」は資源豊かな惑星に米国の宇宙船軍団が出かけ、懐柔しようとしたがうまく行かず、結局、武力制圧で支配しようとしたーーという筋書きだ。

興味深いのは、米国の宇宙船軍団は、インディアンに襲い掛かる騎兵隊のように異星人・アバターを襲撃するが、主人公とその背後にいると見られる監督(ジェームズ・キャメロン)の視線は一貫して宇宙船軍団の征服欲に反発し、アバターの立場を尊重する。

2001年の米映画「ブラックホーク・ダウン」は、ソマリアに「人道支援」に出かけた米軍が、現地のソマリア人の抵抗に遭い戦闘となり、ゲリラ戦で敗退して行く様子を描いていた。私は92年12月の米軍ソマリア進攻から95年3月の撤退まで、アフリカでソマリア情勢をカバーし、米軍の短絡的な介入・撤退にあきれ果てた。「アバター」も同じ構図だが、米宇宙船団の主流がソマリア米軍と同じように描かれている一方、主人公と(背後の)監督の存在が米社会の多様性を映し出していた。

キャメロン監督は1昨年のアカデミー賞で、元妻だったキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」対「アバター」の、元夫妻による賞争いを演じ、敗れた。「ハート・ロッカー」はイラク戦争での米軍爆弾処理班の兵士を描いた力作だが、基本的立場としては宇宙船軍団・騎兵隊路線に属し、米軍賞賛映画だ。夫妻は、まったく異なる立場で賞を争い、「ハート・ロッカー」が射止めた。授賞式でビグロー監督がオスカー像を掲げ「戦場で戦うすべての米兵に捧げる!」と言ったのを見て、「米国映画はこうでなくては受賞できない」と感じた。現地人に傾いてしまった「アバター」では受賞できなかったのだ。



▲ソマリアで警備に当たる米兵と子供たち



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