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コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第4回

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Mainichi Daily News編集長の目

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第4回 2009.9.1 コンクリートのカヌー

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

インターネットサイトの編集長はページビュー(PV)を気にしなければならない。サイトの影響力を測る指数であり、存立基盤ともいえるからだ。

8月は欧米読者の多くが休みで事務所を離れるため、一般にPVが落ちるといわれる。「毎日デイリーニューズ」にとっては月前半にヒロシマ・ナガサキの被爆者特集があり、PV増は一層難しくなる。今年の特集は高齢化の進む被爆者たち20人ほどのインタビューが中心で、英訳するとかなりの量となり、掲載を終えるまでに2週間ほどかかった。広島・長崎両支局や大阪本社からの要請もあるが、「唯一の被爆国」の新聞としては、年々少なくなりつつある彼らの声を「核なき世界」に向けたメッセージとして世界に伝える使命がある。

重く硬いテーマで、当然PVは落ち、米国人からは「戦争終結に投下は必要だった。そもそも奇襲攻撃で開戦したのは日本側だ。被害者意識の押し売りはナショナリスティックだ」などと批判が来る。日本人の多くは「原爆は二度と繰り返すべきでない人類最大の過ち」と信じて疑わないが、米国人の多数派は「必要だった」と信じ、敗戦国側の犠牲者の痛みに思いを寄せる人は少ない。初めて米国を訪れた20年前、彼我の受け止め方の違いに大きく戸惑った。

しかし、たとえナショナリストと批判されようと、この特集を止めるわけには行かない。日本が仕掛けた戦争であろうと、日本軍が中国やアジアで蛮行を繰り返したのが事実であろうと、今は米国の「核の傘」の恩恵を受けていようと、核の犠牲の生き証人の、核廃絶に向けた叫びを報じないわけには行かない。あの2度の核投下は、米国が当時の旧ソ連に威嚇を示したもので、日本は実験の場に利用されたのだ。核兵器は他のどんな兵器とも異なり、2度と使用されてはならない兵器だ。日本の新聞のサイトが毎年8月、別の受け止め方に固まっている米国読者に向けてそう主張する記事を発信するのは自然だ。

低迷していたPVは月半ばから急に回復し始めた。名古屋で行われた「世界コスプレ大会」の写真特集が大きく貢献した。酒井法子容疑者逮捕関連や地震報道も大きかった。そしてここ数日、PVトップを占めたのは「大阪・淀川でコンクリ製カヌー転覆、学生1人死亡」という記事だった。社会面の片隅に載った小さな記事で、「珍しいな」と思い翻訳し掲載したが、欧米読者は飛びついた。なぜコンクリ製カヌーを作ったのか、事故の状況がどうだったのか、ほとんど記載のない不完全原稿だったが、「コンクリ製カヌー」の見出しだけでネット読者をひきつけたようだ。

原爆とコスプレとコンクリ製カヌー。ネットサイトのPV獲得競争の中での、この硬軟の大きすぎる落差には、今なお付いて行けない。

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