スマ-トフォン向けサイトへ
サポートセンター

コラム「Mainichi Daily News編集長の目」第5回

トピックス

グローバルキャリア塾・連載コラム

Mainichi Daily News編集長の目

> > Mainichi Daily News編集長の目

第5回 2009.10.1  酒井法子被告の涙の写真特集

ナバ 高田容冶氏

英文毎日編集部長、毎日デイリーニューズ
編集長

福井 聡 (ふくい さとし)

1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。
パリ支局長時代の経験をもとにフランス社会の抱える問題について書かれたコラム「ボボたちのパリ」も同時連載中です。>>連載コラム「ボボたちのパリ」

後世に「歴史的」と記されるだろう政権交代が起きた。鳩山新政権が発足した9月16日夜から17日にかけて、毎日デイリーニューズ(MDN)もてんてこ舞いとなった。

新内閣の組閣に小沢一郎氏の影響力がどれほど出るかに始まり、閣僚任命後は「官僚天下り凍結」、「日米密約への調査命令」、「八ツ場ダム建設中止」など、従来思いもしなかった大臣発言が次々に飛び出した。「日本の今を世界に発信する」使命を持つMDNにとっては、かつてなかったほどの繁忙期到来であり、踏ん張りどころとなった。

中でも、民主党と社民党・国民新党の連立協議以来脚光を浴びている「沖縄の普天間基地や日米地位協定をどうするか」は、日本が米国とどう付き合うかを改めて考え直す大問題だ。1960年安保、あるいは70年安保以降ほとんど消えていた「米国への要求」という言葉が半世紀ぶりに甦った気がした。政権交代で日米交渉がこれほど前面に出てくるとは思いもせず、人知れず興奮してしまった。鳩山首相や岡田外相が「米国との対等な関係」に触れるたびに嬉しくなる。自民党時代にこの表現を公言する政治家はいなかった。

ところが、「鳩山内閣支持率77%」や「事務次官会見廃止に修正発言」などの翻訳チェックに忙殺されていた17日午後、ニュースの局面ががらりと変わった。覚せい剤取締法違反で起訴されていた女優の酒井法子被告(38)が拘置先の東京湾岸署から保釈され、東京千代田区の如水会館で記者会見したのだ。

如水会館は毎日新聞本社とは目と鼻の先。酒井被告を乗せた車が本社前を通ると、MDNの入っている3階のデジタル・メディア局では、スタッフが一斉に窓際に駆け寄り、彼女の車を目で追った。会見が始まると、テレビに映し出された彼女の表情と大粒の涙のアップにみな釘付け。あれが真実の涙か、仮初めの女優のそれかに議論が沸騰した。

やがて夕方のフォトジャーナル(朝夕2回切り替える写真記事)に彼女の保釈姿を使うかどうかの判断を迫られた。その日の朝は、前夜発足したばかりの鳩山内閣就任のひな壇写真。頭の中はすっかり政権交代モードとなっていたが、覚せい剤使用ばかりでなく「逃走していたかつてのトップアイドル」の保釈はニュースだと気を取り直し、掲載した。

しかし、その後、日本語サイトの「毎日jp」に彼女の会見の表情アップを中心とした写真特集(30〜40枚集めた写真記事)を見た時は、「これは週刊誌のやることだろう。MDNは違う」と突っぱねた(かなり手間のかかった「大相撲国技館創立100周年」の写真特集を前日掲載したばかりで、1日でそれを写真特集のトップから降ろして酒井法子モノに替える点でも抵抗感があった)。

ところがその夜、さらに翌朝と、テレビ・新聞は保釈会見を大報道。日本中が彼女の涙の真偽論争に沸騰した感があった。翌朝、私は部員に前言撤回をわびた上、保釈会見の写真特集作成を指示した。翌日に現れるページビュー(PV)の順位表で、彼女の写真特集は私の当初の判断をあざ笑うかのように1位に躍り出た。外国人読者の関心も高かったわけだ。

歴史的な政治ニュースと女優の涙。ネットのニュースは瞬時に切り替わる。そして編集者には常に全開にした視野が求められる。

 Mainichi Daily News 最近のお薦め記事  2009.10.1

※ Mainichi Daily Newsのサイトでは、基本的に各記事の掲載期間が1ヶ月となっています。掲載後1ヶ月経過した記事については、ページが削除されている可能性がありますので、ご了承ください。

★クールジャパン・ブランド「まとう」

★スタンフォード旧友の語る鳩山首相@

★スタンフォード旧友の語る鳩山首相A止

★「小沢ガールズ」転進術のイロハ@

★「小沢ガールズ」転進術のイロハA止

★幸夫人が見た素顔の鳩山氏

★三宅島・「漁場荒らし」を観光資源に



Share (facebook)  このコラムをFacebookでシェアする。

  • カウンセリング予約
  • 説明会イベント
  • 資料請求

ページトップに戻る