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コラム「写真に込める一瞬のエネルギー」第5回

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写真に込める一瞬のエネルギー

> > 安田 菜津紀さん

第5回:1枚の写真から

安田 菜津紀さん

studioAFTERMODE 所属
フォトジャーナリスト

安田 菜津紀

1987年生まれ。2003年8月、「国境なき子どもたち」の友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。2006年、写真と出会ったことを機に、カンボジアを中心に、東南アジアの貧困問題や、中東の難民問題などの取材を始める。2008年7月、青年版国民栄誉賞「人間力大賞」会頭特別賞を受賞。2009年日本ドキュメンタリー写真ユースコンテスト大賞受賞。主な写真展に2010年「緑の村」HIVと共に生きる(コニカミノルタプラザ)など。上智大学卒。

◆オフィシャルサイト   http://www.yasudanatsuki.com/
◆ブログ   http://ameblo.jp/nyasuda0330/
◆Twitter http://twitter.com/NatsukiYasuda

7年前のカンボジアでの出会いは、それまでの価値観を決定的に揺るがすものでした。あのとき出会った子どもたちのように、自分も誰かを守れる人になりたい。そう思えたとき、自然と自分自身を傷つけることをやめ、家族との接し方も変わっていきました。そして人として生きる上で大切なことを教えてくれた彼らに、何かを返したい。そんな思いが日増しに強くなっていきました。けれども「伝えたい」思いは胸の内にあっても、どのように表現し、どんな風に伝えていけばいいのか、帰国後の数年間は手探り状態でした。

次の大きな出会いは、1枚の写真から始まりました。高校3年の夏に偶然足を運んだ写真展。たくさんの写真家たちが、各国の戦争の実情を写真に込めていました。会場にはぴんと張り詰めた空気が漂い、どの写真も激しい感情がむき出しになっていました。その中で、1枚の写真に目が止まったのです。ガリガリのお母さんのお乳に、小さな赤ちゃんが必死に吸い付いている写真。内戦下のアンゴラで撮影されたものでした。けれどもそんな絶望的な状況の中で、お母さんの目に子どもを抱える母としての決意のようなものを感じたのです。守りたいものがある人間の強さ。自分の心と何かが共鳴して、その写真の前から足が動かなくなってしまいました。このとき国の名前さえ知らなかったアンゴラの親子と私自身が、1枚の写真を窓にして、確かにつながったのです。

その写真を撮ったフォトジャーナリスト、渋谷敦志さんと出会ったのは、大学2年になってからでした。偶然にも彼は、NPO法人「国境なき子どもたち」と長い付き合いがあったのです。「写真は面白いで。まずはそこに写る、人を見つめてごらん」。

渋谷さんは何よりもまず、人と向き合うことを考える人でした。何が伝えられるか、どうしたら伝わるのか、そして何を一番に守らなければならないのか。渋谷さんと話をするようになってから、私の中でもやもやしていたものが、ふっきれていくのを感じました。写真はそれまで「無関心」だった人の目にも、ふとした瞬間に飛び込み、そして心をつかむ可能性を込められます。かつて無関心だった自分が一つの出会いで変わっていったように、写真を見てくれる人に、そこに写っている人に出会い、何かを感じてもらえることができるかもしれない。気づけば私自身もカメラを手に取り、写真で表現することにのめり込んでいったのです。自分のツールをやっと見つけた。そんな思いが更に、私をカンボジアへとかき立てました。

「なぜ写真なのですか?」ということをよく聞かれます。必ずお答えするようにしているのは、いい写真が撮りたいから、カメラが好きだから写真を撮るのではない、ということです。カメラは飽くまでも、自分が伝えたいことを表現するための手段でしかありません。一番大切なのは出会った人たちとどんな風に時間が共有できるか。そしてその経験を、写真を使うことで、どう昇華していくか。それが出会った人への精一杯の誠意でもあります。
 
次の連載ではその後、どのような取材を重ねてきかた、写真にどんな可能性を見出してきたかをお話したいと思います。



フォトジャーナリスト渋谷敦志さんと、ウガンダにて。
フォトジャーナリスト渋谷敦志さんと、ウガンダにて。



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