グローバルキャリア塾 連載コラム

2010年シェフィールド阿呆日記 (第6回)

第6回:学生の身分

ビジネスアドバイザー、ジャパンリンク

よしみ マクラウド

浅草生まれ。明治学院大学 (英文学科)及びシェフィールドハラム大学(芸術デザイン学科)卒業。シェフィールド大学経営修士。ロンドンのインペリアル・カレッジ金属学部の教授秘書、シェフィールド大学付属ジャパン・ビジネス・サービス、南ヨークシャー・インターナショナル・トレード・センターの日本担当、シェフィールド大学英語教育センターのマネジャーを経て、現在ジャパンリンクの名の下、翻訳、通訳、日英ビジネスサービスを提供。

(2010年8月15日掲載)

芸術・デザインの基礎コースを終了した後、いろいろ迷ってSilversmithing & Jewellery の学位コースを選んだ。シェフィールド市は昔から刃物類、銀製品作りで有名だ。3年間の勉強の後、その方面の仕事につくかどうか、確かな気持ちが無いまま、面白そうだからやってみようかという軽い気持であった。

資格取得を望むのであれば、それこそインテリアデザイン、自動車修理、家具の布張り、配管工事、料理、理容・美容、ありとあらゆるコースが設けられており、望むなら、永遠に学生となって、学び続けていける。

ところで、日本のような入学式はない。初日に、コース説明や施設、設備の案内などがあって、すぐに授業に突入。周りをふっと見渡すと、18歳ぐらいの血色のよい若者ばかり。その中に一人ぽつんと席を探す。でも、座ってよくよくみると、私のようなちょっぴり年のいったおばさんや、20歳半ばの青年達がいるのでホッとした。昼食時間になると、食堂へ流れて行き、ペチャクチャと新しく友達になったばかりの隣の人たちと笑いさざめいている。2、3人のグループになって行動する人たち、一人で歩き回る人たち、いろいろだ。

イギリス人の中に混じって、勉強することにいくばくかの不安があったが、科目がとにかく学術的なものでないのだから、何とかついていけるだろうという気がしたのだ。

とにかく先生は余程困らない限り、助けてくれない。一度、与えられたプロジェクトが完成寸前に壊れてしまった時、泣きそうになって、先生の助けを求めたけれど、もう一度やり直せ。それだけだった。日本で大学時代、先生の講義をノートにとることに明け暮れて、それに疲れると喫茶店に逃れたりしていた私には、どのように取り組んだらいいのか途方にくれることがあった。プロジェクトを与えられると、自分で方法を学び、調べて、自分の考え、結論を出す。他のみんなは自分なりの方法を下に、失敗をしては、またやり直していく。黙々と自主的に学んでいく。

時々、相手の言っていることがわからず、ついついニコニコして、体裁をつくろってしまうと、相手は皮肉や嫌味を言っていたりして、時には気持ち悪がられたり、馬鹿だと思われたようだ。それ以後、何がなんでもわからなかったら何度でもきいて、相手の言った事に何でもいいから言い返すことを学んだ。イギリス人は、小さい時から、自分の意見を表現するよう訓練されてきているから、黙っていて、相手に自分の気持を汲んでもらおうとする日本人特有の言語表現は持っていない。

勉強の合間にいろいろな社交行事があった。ダンスや仮装パーティー、アイルランドのダブリンへの旅行は楽しかった。久しぶりに大部屋でみんなのいびきを聞きながら寝入ったり、パブで飲み明かしたり、主婦の身では味わえない学生気分を大いに満喫したものだ。

大学で仕事を始めてから、しばらくして、再び、学生になった。仕事をしながら、週末と月曜日の3日間、朝から夕方まで、今度は、MBAのコースをとって、缶詰状態で勉強した。12人のクラスメートはいろいろな会社の幹部級の人たちばかり。授業はほとんどが活発な討論で、講師が言うことに反論し、仲間同士で議論するのが常で、私は自分の英語の力不足と、すぐに他に追従する自分の意見の無さをまじまじと思い知らされ、敗北と自信喪失の辛い2年間だった。本を斜に読むことを学び、レポートに終われた。こんなに厳しく勉強したことは今までに無かった。フー、きつかった。

若い学生と混じって、「つらい」と愚痴を言い合って勉強した学位コースは、「実に楽しかった」。

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