テンプスタッフ・コリア代表取締役社長 栗城健様インタビュー

(2013年1月23日撮影)

海外留学をする上で誰でも一度は考える「海外で働く」という目標。
今回、『韓国で働く』というテーマにフォーカスし、
株式会社インテリジェンスコリア(旧社名 テンプスタッフ・コリア株式会社)
代表取締役社長の栗城健様にインタビューをさせていただきました。

(2013年6月掲載)


株式会社インテリジェンスコリア
(旧社名 テンプスタッフ・コリア株式会社)

代表取締役社長
栗城 健(くりき けん)様


【協力】K-ACADEMY(オンライン韓国語スクール)
【取材】箕浦敬子(毎日エデュケーション ソウルデスク) 
【編集】石山飛嘉(毎日エデュケーション ソウルデスク) 

海外でステップアップをするというチャレンジ

---まずは現在韓国で働くに至った経緯を教えてください。

わが社は海外法人へ駐在する際に社内公募がかかり、立候補することによって決まります。初めて『海外転勤』という言葉を聞いたとき、今まで留学経験も何もなかった私ですが一気に頭の中で夢が広がり・・そして、チャレンジするに至りました。

---以前から韓国語学習など韓国で働くための努力はされていたのでしょうか。

駐在するまでは全く韓国に興味もありませんでしたので、韓国語でさえ全く学習もしませんでした。私の場合は「こんにちは」「トイレはどこですか」だけ覚えて訪韓しましたので、本当にいろいろと苦労しました。渡韓前にした事といえばソウルのガイドブックを買ったりして、実は妻を説得することが大変でしたね (笑)。

---どのようなことで最初は苦労されましたか?

外国ですから言葉が違う、文化が違う、食事も違う程度は当たり前と思っていましたし、それほど問題ありませんでしたが、仕事の面では非常に苦労しました。一緒に遊んだりお酒を飲んだりする程度であれば、日韓でそんなに違いは感じませんし、逆に陽気で親切な韓国人と飲んだりすると大変楽しいのですが、仕事は別ですね。やはり仕事のやり方も考え方も大きく異なる仲間達と言葉も通じない中でビジネスを行うという事の難しさを痛感しました。韓国に新規進出する日系企業の多くは、文化慣習のギャップに苦しんでいるように思います。

海外就職、理想と現実の差は思ったよりも大きい

---読者のみなさんの中には『韓国で働く』と言う夢を持ち韓国留学を考えている方がいらっしゃると思います。韓国で働く日本人の方々はどんな形で来られたのでしょう?

圧倒的に多いのが企業派遣の駐在員でしょう。私自身もその形で来ました。そして韓国での現地就職される方、またはワーホリビザや学生ビザでアルバイトをされる方等です。


---現地就職のハードルは高いのでしょうか?それは例えばどんなことで?

はい。非常に高いと言えます。実際にビザを取得してもらう条件で入社し、家具も生活用品も全部そろえて生活をしていたらビザが取得出来ずに、泣く泣く帰国せざるを得なかったというケースも伺えます。まずは言語ができないといけません。次いで就労ビザです。専門知識や特定の分野での経験が無ければ就労ビザが下りないと言っても過言ではありません。

--専門知識とは?

一言で言えば韓国にあまりない技術や経験などです。身近な例で言えば日本食の料理人、うどんやそばの専門家などが例です。他には韓国が得意とする電子・電機製品などをつくる際に必要な先端部品や化学製品などは日本から輸入しているケースが多いので、これらを作成する技術や知識などが該当します。日本語教師や日本人向けコールセンターなども日本人だからこそ強みを活かせる専門性と言えるでしょう。

 

---今までに韓国での就職相談でいらした日本人の方について教えていただけますか?

弊社にご相談をいただく方は女性が多い傾向があります。海外転職と言う高いハードルを目指していらっしゃるので非常に意識も語学力も高い方が多いですが、中には目的が曖昧な方もいらっしゃるように思います。例えば韓国に永住するつもりがあるかどうかを問われた時に、「勿論です。」と即答出来るくらいで無いと正社員で現地採用される事は難しいと私は思います。

 

---日本語ネイティブがアドバンテージになる事は?

韓国は日本語スピーカーも非常に多いので、日本語ネイティブというだけでアドバンテージを得る事は出来ないと思います。日本人ならネイティブ並みの韓国語能力と上記の専門性があれば大きなチャンスをつかめる可能性はあると思います。さらに韓国文化慣習や韓国人の考え方なども理解していれば完璧です。

韓国の人材の能力の高さと意識の高さ

お話を伺うと待ち構えている現実の厳しさに困惑します・・。逆に韓国の国内事情についてお話を聞かせていただけますか?

先ず学生についてですが、日本同様韓国でも就職難が続いており、どの学生も必死になってよい就職先を探しています。大企業に入る為には高度な英語能力に加えてもう1カ国語出来ないといけない等、非常に厳しい声も聞かれる程です。また韓国では就職率が悪い大学のワーストランクが発表され、就職率の悪い大学は政府からの補助金を打ち切られる為、学校も就職率を上げる為に必死になっていますし弊社では一昨年から多くの大学でセミナーを実施しながら学生の就職支援を始めていますが、就職出来ないとは信じられないくらい優秀な人材揃っているという印象を受けました。近年は行動力・語学力などの様々な能力にたけているという事から、韓国人学生を日本で採用したいという日本企業も増加しております。

---会社や社会人などの事情はどうでしょう?

韓国では転職をする事により給与と役職を上げていくという転職スタイルが当たり前で、比較的1社で長く勤務する日本とは状況が大きく異なります。1社で勤務する年数の平均は4年と言われており、20代や30代中盤ぐらいまでは1~2年で転職を繰り返すケースも珍しくありません。同業への転職も当たり前でライバル企業からチームごと人材を引き抜くなどという事もあり、我々日本人には中々馴染みにくい面もあると思います。

また、韓国固有の文化を理解するという事も大切だったと思います。年上を重んじる韓国では目上の人の前で酒を飲むときは横を向くというのは有名な話ですが、会議で目上の人とのアイコンタクトを避ける、はては女性が食事の席でお酌をすることは避けるという到底自分に必要のなさそうな事まで覚えましたが、こういった事はすべて韓国で韓国人と働く事で学び、そしてその為に必要だった事なのだと思っています。

---なんだか相当ハードルが高く、特別な能力が無いと不可能な夢に思えてきました・・

なんだか出鼻から厳しい話ばかりをしてしまいましたね(笑)。でも、自分が先ずすべきことを考え、必要な事を整理して行動をすれば不可能なことではないでしょう。理想を描く事は非常に大事な事だと思いますが、しっかりとした準備無しでは、理想の実現は非常に難しくなってしまいます。せっかくの韓国生活(留学)です。自分の理想を叶える為にしっかりとした準備をし、よりよい海外体験にしていただきたいと思います。

労働環境の厳しさはどこも同じ

---日本人にとって韓国の職場環境はどうなのでしょうか?

はい、韓国に来たからと言って厳しい労働環境から解放されるという幻想も捨てたほうが良いと思います。特に大企業の拘束時間は日本同様長い。よく仕事が終わり街中の食堂に入るのですが、同じ年位の方々が夕食を取っているんですね、でも何か違う。そう、彼らはまだスーツをきて首からネームタグを下げているんです。こんな時間までご苦労様です・・なんて思う事もよくあります(笑)。

 

-----中小企業もですか?

中小企業で働いている方々よりも大企業で働いている方でしょう。夜遅くにネームタグをつけながら食事取っている男性は韓国のエリート企業所属の可能性が高いという事ですね。ちなみに企業規模にかかわらず、韓国企業は月1~2回会社の費用で「フェーシク(会食)」と言う名の飲み会を開催し、社員の親睦をはかります。上下関係の厳しい韓国企業も、この日はある程度無礼講になります。日本では会社の飲み会は嫌遠される事も多いと思いますが、韓国はほとんどの社員が楽しみにしているようです。

--仕事の進め方についてはどうでしょう?

これは180度日本と正反対です。とにかくスピード!スピード!スピード! とにかく始めて後から修正を加えながら前に進んでいく。工場をつくる時に設計よりも施工が先にはじまるという事なども、はじめは冗談かと思っていましたが、本当の事だと聞いて驚きました。しっかりとした計画を立てて間違いなく、じっくり進めて行く日本とは大きく違います。こういう環境の違いを経験することはとてもいいことだと思います。

 

--なんだかおおざっぱすぎるような気がするのですが・・

たしかに我々はそう感じるかもしれません。しかしこのスピード感こそ韓国ビジネスの強みであり、特に新興国市場で受け入れられている大きな要因の1つだと思います。例えばある新興国でブルドーザー100台のオーダーがあるとします。日系企業はブルドーザーを100台捜して動くかどうか確認してから見積もりを作成しますので、返答まで数週間から数カ月もかかります。一方、韓国の企業は100台の契約を即決で結んでからブルドーザーを捜し始める。返答まで1カ月もの差が生まれてしまいます。日系企業が返答するころには、50台ぐらいのブルドーザーがすでに納入されて稼働している、こんな事が現実にあるそうです。市場によってニーズは大きく異なる事を我々は理解していかなければならないという一例ですが、我々日本人はもう少し韓国のスピード感と、良い意味での「適当さ」を学ぶべきではないかと、韓国にいると時々思います。

 

東アジアの拠点、企業投資先としての韓国

---韓国は経済的にも更なる発展の余地があるのでしょうか?

かつてのアメリカや日本がそうであったように、製造業に関しては韓国も中国企業やその他新興国の激しい追い上げにさらされる事もあると思います。また、日本以上の速度で急速に少子高齢化が進み、労働力人口が減少して行く事、内需の規模が小さい事など、韓国経済の先がすべて明るいという訳では決してありませんが、日中韓の関係が日ましに重要になっている昨今、巨大な消費市場である中国市場とのかかわりにおいて、韓国は更なる発展の機会があるようにも思えます。(新政権も相当中国を意識した動きをしています。)地理的にも日中の中間に位置する韓国。製造、開発、物流において独特のポジションを活かし更なる飛躍のチャンスは多くあると思います。積極的な日系企業の投資誘致促進に安価な法人税や電気料金、欧米とのFTAの締結など、韓国には外国企業が投資する魅力がまだまだ残っていると思います。

 

--日本との関連は?

自動車、電機機器、スマートフォンに至るまで、韓国企業が近年世界を席巻している分野は多いですが、これらを構成する部品や素材は多くが日本製です。よく日本と韓国の関係は垂直分業と言われますが、当地に来ると本当に実感出来ます

最近は少し変化もみられるようですが、韓国の輸出が増えれば対日赤字が増える。ように、両国は切っても切れない関係と言っても過言ではありません。

私たちが近道を作るには?

---韓国就職のむずかしさ、国内の競争の激しさ、労働環境の厳しさ、しかしまだまだ発展を続ける韓国・・。私たちが韓国就職をするための近道ってなんでしょう?

もっとも大事な事は、自分自身の強みや専門性を身につける事です。“韓国内で捜してもなかなかいない人”でなければ、わざわざ言葉も不自由でビザの問題もある外国人を採用したい企業はほとんど無いと言えるでしょう。「日本語教師」「日本食の職人」「うどんやラーメンの専門家」「有名ホテルのマネージャー経験者」「化学素材の専門家」「○○部品の開発技術者」「石油プラントの建設経験者」や意外な所で言うと「イタリアンのシェフ」など、我々に寄せられる日本人求人のほとんどは、韓国人求職者がなかなか経験していない分野のお仕事になって来ます。韓国の社会の流れ、傾向などに常に関心を持ち、日本人の自分だからこそ出来る事は何なのかを考えながら、専門性を身につける事が重要です。

また、韓国就職の目的をはっきりさせる事も大事です。韓国が好きだからこちらで働きたいのか、文化が好きだからなのか、海外経験がしたいからなのか、それとも自身のキャリアアップの為なのか。前回も少し触れましたが、自分は韓国で永住出来るのか?を問いかけてみると、今後どういった形で韓国とかかわって行きたいのかが、自分でもはっきりしてくると思います。ほとんどの場合は、ベースはやはり日本にあって数年間滞在してみたいとか、頻繁に日韓を行き来するような仕事を想像しているケースが多いように思えます。

---韓国留学が近道になる事は?

これは非常に大切なこと、とても大きなアドバンテージになるでしょう。なぜか。まずは外国語が取得できますね、続いて異文化を知るという経験、これは仕事にも生きますし人生の糧ともなります。そして自らの行動力を示すことができる。日本に居て、ただ思い込みをしている人と比べられた時に実際に留学を決意して現地で学んだ人の方が遥かにいい評価が得られることは言うまでもありません。韓国留学を経て言葉は勿論さまざまな経験を積む、それを生かして例えば自分が行きたい企業にまずは日本で就職をする。そこでさらなる知識と経験を積み、企業派遣なりもしくは自分の力で韓国転職をつかむ、これが目指すべき道の1つであると私は思います。だから特別な才能が必要な事ではないと私は思います。

日韓の更なる発展と交流を

---栗城社長、ここまで様々なお話をありがとうございました。栗城社長自身が韓国で生活されて日韓問題を感じたことはありますか?

これはネガティブな面に関して言えば全くと言っていいほどありません。例えば昨年の竹島(韓国名:ドクト)で一悶着ありましたね。その時に中国の支店から『だいじょうぶ?』とメールが入っていたんです。その時何のことかわからず?『なにがですか?』と返信しました。竹島問題で揺れ動いているから在韓の日本人としてなにか危害が加えられていないか確認したようですが、全く平時と変わりませんでした。確かに日韓の政治問題はセンシティブかもしれませんが、経済的な結びつきや人的交流は深まる一方だと思います

---確かに、日本人だからと言って何かされるって全くないですよね。むしろ互いに良きパートナーとして競争しあっているのが現実だと思います。そんな日韓について考えたり、仕事に打ち込まれる現実から解放されるひと時の休日について聞かせてください(笑)

私の希望で家族の人生を変えてしまっていますので、休日はやっぱり家族と過ごすことがせめてもの罪滅ぼしと考えています(笑)。来韓して初めて子供達と訪れたのは漢江(ハンガン)のほとり。大都会の中でゆっくりと川の流れを見ながらのんびりと過ごしました。また、日本海側の海にもよくいきます、エメラルドグリーンのきれいな海が広がっていて、非常に綺麗ですし、イカがおいしくてお勧めです。冬は非常に厳しい寒さで行動が制限されますが、ソウルの近くでもスキーが楽しめるのでよく行きますね。

---仕事も家族生活も充実されているようで本当に理想のビジネスマン像ですね・・最後に栗城社長の好きなお言葉を聞かせてください!

はい、私が好きなのは本田宗一郎氏のこの言葉です。

“The value of life can be measured by how many times your soul has been deeply stirred.(人生の価値は何度魂が揺さぶられたかによってはかられる)”

栗城社長ご協力ありがとうございました。

(2013年1月23日撮影/写真中の社名は当時のもの)

(2013年1月23日撮影/写真中の社名は当時のもの)

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