スペシャル・インタビュー 井上英之さん

チェンジメーカーを生み育てる街。
それが「シアトル」の新ブランド!

マリナーズのイチロー選手で一躍日本中の人々が知ることになったアメリカ西海岸の都市「シアトル-SEATTLE」。
イチロー選手の活躍も素晴らしいけれど、この街が、これからの社会を変えるムーブメントの発祥地であることを知る人は意外に少なくありません。
チェンジメーカーを数多く育てる街シアトルの魅力と原動力を、日本の社会起業家育成・輩出の先駆者でもある慶應大学総合政策学部(SFC)専任講師で、ソーシャルベンチャーパートナーズ東京 代表の井上英之さんに伺いました。
(2010年3月掲載)

井上英之さん

プロフィール

慶應義塾大学 総合政策学部 専任講師 
ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京 代表

慶應義塾大学在学中より緊急援助NGOに参加。ジョージワシントン大学大学院でパブリックマネジメントを専攻。その後ワシントンDC市政府、アンダーセン・コンサルティングを経て、ETIC.に参画。2002年から社会起業家の育成・輩出に取り組み、2005年シアトルの社会起業向け投資機関「Social Venture Partners」に勤務。同年秋より、慶応義塾大学総合政策学部専任講師。2009年、World Economic Forum(ダボス会議)より、Young Global Leaders として選出。
井上英之研究室HP http://social.sfc.keio.ac.jp/

「シアトルナイス」が最大の魅力

シアトルはよく「エメラルド・シティ」と言われますが、本当にエメラルド色の街なんですよ。湖と森がたくさんあって、非常に美しい。特に春から秋口にかけての美しさというのはシャレにならない。毎日空を見ているだけで、「生まれてきてよかった」、「今日一日が始まって良かった」と思える程の美しさです。一方で、秋と冬は雨のシーズンで、暗くてどんよりしていて、実は結構自殺も多いんです。でも雨の季節に蓄えた素晴らしい生命の息吹を、残り半分の季節で一気に開かせると思えばいいかなと。
ぼくが住んでいたPhinney Ridge(フィニー・リッジ)は、ダウンタウンを上がっていった丘の上にあるんですけど、一方には湖と山、反対側には海をはさんで国立公園があり、オリンピックマウンテンが見えました。都市なのに、朝起きると庭にハミングバード(ハチドリ)が現れます。こうした環境の良さに加え、アメリカンフットボールや野球などスポーツも盛ん。コンパクトに全てが揃っていて、本当に住みやすい街ですね。

もっと大事な面でいえば「シアトルナイス」と言われる人柄の良さ。住人たちの素晴らしさというのが、ものすごく大きい。
象徴的なのは、歩いていて道路に差しかかると、車が自ら停まって手で催促してくるんです。「早く渡っちゃいなさい!」と。その瞬間ぼくは「やられた!」と感じるんです。美意識が東京と逆で、譲ったほうが勝ち。懐の深さ、人間の大きさを見せつけられた感じですね。カフェで並んでいても、待っている人たちがイライラしたりする感覚がない。それどころか逆に「今日は大変ね」と、店員に声をかける。大変な状況というのは、店員のせいじゃないじゃないですか。本当はオーナーが店員を増やすべきであって。

そういう、何かをしている人や、誰かの挑戦に対して、非常に共感性が高い。それを「ソーシャルキャピタル」と言ったりします。いろんな背景があって、シアトルではこのソーシャルキャピタルが育まれている。だから例えば黒人とアジア系が結構溶けあっていたりする。もちろん人種差別がゼロだとは言わないけれど、僕の感覚で言うと、お互いが非常に近い。

シアトルには、新しいことを始められる空気がある

ソーシャルキャピタルについて言えば、ぼくが最初にシアトルに行ったのは1992年。コーポレイト・フィランソロピーの勉強のためでした。英語が下手で、まだ希望や夢しかない状態でも、いろいろ回っていると「この子は日本のフィランソロピストだ」と、すごくポジティブに評価してくれた。つまり「シアトルナイス」というのは、誰かが何か新しいことを始めようとするときに、最初に「それいいね!」と言う感覚なんです。そういう姿勢がかっこいいとされるし、スタンダードなんですよ。その上で「じゃあどうしようか」と、困難などについても検討していく。

こうした態度から何が起きたかというと、アマゾン・ドットコム、エディバウアー、マイクロソフト、スターバックスなど、様々な新しい企業が生まれた。最近ではバイオ・ベンチャーもすごく盛んです。それからジミ・ヘンドリックス、パールジャム、ニルヴァーナなど新しい音楽が生まれ、同時にノンプロフィットが生まれた。だからシアトルには新しいことを始める何らかの空気があるんですね。

全体的にみると、シアトルでは同時にIT革命もちゃんと起きています。ITが人の生き方、働き方を促進して、みんな5時に帰って家族や恋人と過ごし、自分の時間をもてるようになった。そして翌日は元気に職場に行く。さらにシアトルは「バーよりカフェ」の文化があって、朝早く起きて、カフェに行って話をする。こうしたライフスタイルが新しい価値を生み出し、スターバックスやマイクロソフトを生んだんです。日本ではその新しい価値がうらやましくて、死ぬほど働いて、稼いだお金をどんどんマイクロソフトやスターバックスにつぎ込んでいく。それを見てると悲しくなってしまうこともあります。

シアトルでソーシャルイノベーションを学べるプログラム

シアトルで行われるユニークなプログラム「Social Innovation in Seattle(SIIS)」(iLEAP主催)を見学中の井上さん。インターンシップ&ワークショップで構成され、社会的起業・社会変革について学ぶプログラムです。詳しくはこちら

留学先としてシアトルを見た場合、メリットとデメリット

デメリットはすごく簡単で、「長い冬」。秋から春先までの雨の季節は、本当に気が滅入ります。そこはいずれ訪れる美しいシーズンに備えて「これは投資なんだ」と考えるといいですね。部屋にこもって勉強したり、人と会って話したり。その期間を栄養としてどう使えるかです。
メリットはやっぱり「ソーシャルキャピタル」。非常に人のつながりがあって、ポジティブ。自分から戸を叩いて、「私はこういうことに興味があるよ」「こんなことがあるんだよ」と、どんどん人に言ったほうがいいですね。人に伝えることによって扉が開かれていく。だから貪欲に自分をもって、大いにそれを利用しないと。戸は開かれているけど、自分から踏み込んでいかないと、中には入れない。それさえすれば、ビジネスでもソーシャルイノベーションでもいろんなチャンスがあります。
ただ、ぼくも、92年に初めて留学した時、最初はすごく苦労しました。最初に行ったホストファミリーがちょうど家庭に問題を抱えていた時期で、家族の会話が全くない。夕食も毎日同じようなメニューという、最低な状況でした。気が狂いそうになって、下手な英語で一生懸命ジョークを言ったりするんですけど、シーンと・・。そこからホストファミリーを代えてもらった。必死に、状況を伝え、いろんな人の協力をもらいながら、今度は、自分で環境をつくりなおしたんです。だから「フレンドリーなホストファミリー」とか「オープンなアメリカ人」とか、そんな映画みたいな生活を思い浮かべて、過度な期待をしちゃいけない。土地によって人柄も違うし。何より、自分で環境を作っていかないとだめですね

シアトルのおすすめスポット3つ教えてください!

(1) セーフコ・フィールド Safeco Field
セーフコ・フィールドは絶対に行ったほうがいい。野球に興味がなくても、あそこは人が集まるコミュニティ・スペース。子供の遊び場所もあるし、立ち飲みバーもあります。野球だけを楽しむだけでなく、人が集い、つながる場所なんで、あそこに行くとシアトルがよくわかります。

(2) レッドミルバーガー Red Mill Burgers
めちゃくちゃ美味しいですよ。日本人はマクドナルドみたいなのがハンバーガーだと思ってますけど、食べ物はそれが生まれた土地で食べるのが一番美味しい。レッドミルバーガーは、そんなに高くないんですけど、丁寧にしっかり作られている。パテとパンがちゃんと合ってて、新鮮な玉ねぎが入っていて、クセになる美味しさです。そこで売ってるレモネードもたまらなく美味しいです。

(3) カフェ
カフェをぐるぐる回りましょう。大手チェーンよりも、インディペンデント系がいいですよ。たとえば、スターバックスにいた有名なバリスタらが、どんどん自分たちでインディペンデント系カフェを立ち上げた。そこも流行ってきたら「もうこれじゃない」と、更なるカフェに挑戦する。シアトルには伝説のバリスタが何人かいて、有名なところだとエスプレッソ・ヴィヴァーチェ(Espresso Vivace)を立ち上げた人は、イタリアで修業してアメリカに初めてラテアートを広めたバリスタだときいています。

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