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コラム「ボボたちのパリ」第1回

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ボボたちのパリ

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第1回:郊外暴動勃発


1954年名古屋市生まれ。80年毎日新聞入社。甲府支局、東京社会部、外信部、90-93年アフリカ特派員ハラレ支局長、93-95年同ヨハネスブルク支局長、99-03年ウィーン支局長、03-05年外信部副部長、05-09年パリ支局長、09年4月から現職。著作 『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)。

高級ブランド、グルメ、ルーブルにオルセー。パリ赴任前、私の頭にあったフランスおよびパリのイメージは、多くの日本人とさほど変わらなかった。イラク戦争に反対したことの記憶から、政治的には反米、あるいは独自路線の印象があった。しかし、経済では米国と同じような「資本主義の先進地」のイメージがあった。パリは豊かで、人々は皆優雅に美食を楽しんでいるんだろうな、と漠然と思い描いていた。

そのイメージは徐々に崩れていった。

まず最初に、2005年10月初め、パリのシャルルドゴール空港に降り、郊外電車RERで中心部に向かう途中、なんだか予想のイメージと違うなと感じた。パリは数度訪れたことがあったが十年以上も前だったうえ、電車で中心部に向かったのは初めてだった。


エッフェル塔から見たパリの風景車窓の風景があまりにわびしいのだ。成田から高速やJRでなく、京成電車で東京東部の木造住宅密集地を経て上野に向かう時の感じにやや似ている。しかし、もっとわびしく、すさんだ、荒れた風景だった。線路沿いの塀はすべて落書きで埋め尽くされ、途中から見えてくるビル群も、コンクリートの塊のようで素っ気ない。曇り空のせいもあったかもしれない。「華のパリ」に向かっているんだという気持ちがどうにもわかない電車だった。さらに、途中の駅から乗ってくる乗客がほとんど黒人なのだ。これはパリなのだろうか? わけが分からないまま、パリの入り口である北駅に着いた。ここで多くの乗客が降り、また多くの客が乗り込んでくる。ところが、彼らの大半はまた、黒人あるいはアラブ系なのだ。

私はかつて世界最悪の治安に悩む南アフリカ・ヨハネスブルグに駐在し、黒人群集に抵抗はなく、治安問題への対応も心得ている。それはいいのだが、なぜこの風景がパリへの入り口なのか、ぼんやりと考えているうちに予約していたホテルのあるパリ左岸のサンミッシェル駅に着いた。

駅を出て、地図を片手にサンタンドレ・デ・ザール通りをホテルに向かって歩くと、今度はすれ違う人々は皆、白人だった。どうなっているんだろう? 疑問はしばらくして解けた。

赴任してから1カ月ほどした05年10月末、パリ郊外の団地に住む移民系の若者たちが夜間、団地周辺に駐車してある車を燃やし始めた。しだいにパリ周辺のあちこちの郊外にある団地に広がった。世界中で大きく報道された移民系住民による「郊外暴動」の始まりだった。
空港からパリの街中までに私が見て違和感を感じた風景は、まさに移民系住民たちの住む暴動の中心地だったのだ。郊外暴動が生まれた構図は、ある意味でフランスとパリの社会の今を象徴している。この問題を追ってゆくと、華やかなパリの裏側に潜む影の現実が浮かび上がってくる。

暴動のきっかけは10月27日夕、パリ東郊クリーシー・ス・ボア市で、警察官に職務質問を受けた移民系少年2人が変電所の塀を乗り越え中の変圧器近くに身を隠し、高圧部分に触れ、死亡した事件だった。同夜10時ごろ、知らせを聞いた周囲の移民系若者たちが集まり「2人を追い込んだのは警察だ」とし、路上に駐車してあった車23台に次々に火を付け、駆けつけた機動隊数百人に投石。それ以前に、当時内務相だったサルコジ大統領が、移民系若者たちを「ゴロツキ」と呼んだことに移民系若者たちは強く反発しており、移民系2少年の死亡事件で火がついた形だった。以降、若者たちと警察・機動隊との対峙は連夜繰り広げられ、他の都市郊外にも広がり、ピークとなった11月4日の夜には、炎上された車が全国で計754台、逮捕者は203人にも上った。郊外暴動は1カ月近く続き、結局、11月21日までに計1万346台もの車が放火された。

移民系若者たちにすれば「職がない」「フランス国籍を持つのに疎外されている」との不満が鬱積する一方、白人フランス人にとっても「就職難は我々も同じ」「機会は与えられているはず」と、双方がかみ合わない状態が続いていた。


【同時掲載コラム】 「Mainichi Daily News 編集長の目



福井氏が編集長を務める英字新聞「Mainichi Daily News」。
その編集現場でのエピソードをつづっていただくコラム「Mainichi Daily News 編集長の目」も毎日留学ナビにて連載中です。
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Mainichi Daily News編集長日誌



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