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コラム「ニッポン人のさとり方」第36回

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ニッポン人のさとり方

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第36回  ある週末の出来事について:ブエノスアイレスにて

松岡 祐紀さん

株式会社ワンズワード
代表取締役、写真家

松岡 祐紀

19歳でスコットランドのエディンバラに留学。NYにてスタジオアシスタントを経験した後、ロンドンに在住。帰国後はフリーランス・フォトグラファーとして活躍。2009年にノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏の「ソーシャルビジネス」という理念に感銘を受け、株式会社ワンズワードを起業。レッスンの質の高さを売りにしたオンライン英会話スクール「ワンズワードオンライン」を立ち上げる。

2011年よりブエノスアイレスへ移住、さらに第三の故郷としてメキシコシティに居住。2014年3月に中南米・南米の英語学習者のためにスペイン語版ポルトガル語版英語版のオンライン英会話スクールを開設。現在は、ブエノスアイレス、メキシコシティ、日本を行き来して、ソーシャルビジネスの理念の普及と事業拡大を目指している。 >>詳しいプロフィールを読む

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気だるい日曜日の午後。
ふと、思う。
ここは外国だったのだなと。

ブエノスアイレスに住んですでに2年近くになろうとしているので、周りが外国人という状態にすっかり慣れ親しんでしまった。

「毎日とても充実している!」というわけでもないけど、日々やることはあるし、多くの人と同じように問題をたくさん抱えている。それでも、時々ほんのふとした瞬間、「楽しいな」と思うことがある。

べつにそれは、ブエノスアイレスに住んでいるからというわけではなく、とてもコスモポリタンな状況のなか、自分の頭で考え、行動し、決定を下さないとまともに生きていけないからだろう。

そんなものを得るために、地球の裏側であるブエノスアイレスに来る必要もないが、この地でも人々は文句を言いつつも、楽しく暮らしている。そんな人たちに紛れながら、生活を送ることは楽しい。


例えば、金曜日の朝。
ケーブル会社の男二人が、住んでいるマンション全体にケーブルテレビを引くために、やってきた。そして、彼らが帰った後、それまで問題なく繋がっていたインターネットが繋がらなくなった。ついでにいうとケーブルテレビももちろん映らない。

そんなことがなんだかとてもおかしく感じてしまう。そして、仕方なく街の中心街に行って、彼らのオフィスに行き、エンジニアを寄越してもらうように手配をした。何事も自分で動かないと、海外では何も変わらない。人や状況を罵る暇があれば、とっとと行動をお越し、最善と思える方法で問題解決をはかる。 それの繰り返しだ。

自分の国に住んでいると、常識やら行動規範やら、なんだかよく分からない社会的なルールに縛られ、時々とても不自由を強いられる。もちろん、それと引き換えにそれほど自分で考えることはせずに、ののほんと生きていくことが可能だ。高度に発達した社会のあるべき姿といえるだろう。

でも海外では違う。

まずは人ありきだ。ルールなんてものはそこに存在しない。いかに信頼出来る人を見つけ、彼らのサービスを享受出来るように手配し、また同胞のよしみなどで友人を選ばず、厳しい目で査定して、信頼できる人たちを周りに配置する。弱肉強食の世界とは言わないが、自分で自分の楽園を作る意欲がないと、この地でやっていけない。


土曜日の深夜4時。
ここブエノスアイレスの夜の始まりは遅い。たいてい深夜過ぎから人が集まり始まる。たまたま知り合ったイギリス人女性が本国に帰国するというので、彼女の送別会に参加した。さすがに深夜4時となると人もまばらになり、自分もそろそろ帰ろうかと思ったが、知り合いのアメリカ人が来たので、踏みとどまった。

彼はネット関係の会社を経営しており、べつにアルゼンチンに住む理由もないのだが、この地を愛し、ここの人々を愛し、彼らを雇って仕事をしている。会社は3年前には潰れかかったが、今では完全に立て直し、社員10人を雇うまで拡張して、プール付きの広大なオフィスをブエノスアイレスに構えるまで成長したとのことだ。

常日頃から外国人からはこの国の悪口しか聞かないけど、彼はとにかくアルゼンチンを愛し、ブエノスアイレスという街をこよなく愛している。それはとても素晴らしいことだと思う。特に5年も6年も住んだ後に、それでもひとつの街を愛し続けるのはとても労力がいることだ。

この街に住んでいるからこそ、彼がこの街でとてつもない苦労を味わいながらも、それでもたまたま知り合ったこの地に住んでいる外国人にこの街を絶賛できるすごさは理解できる。自分のような根無し草のような生活ではなく、この街にどっぷりとつかって生きる彼の生き方は、とてもまぶしく映った。


再び、日曜日の小雨がぱさつく午後。
この国では日曜日に自殺する割合がほかの曜日に加えて圧倒的に高いらしい。アルゼンチン人いわく、「日曜日はとても淋しいから」とのことだ。土曜日の喧騒をよそに、街は日曜日に死んでしまう。たいていの店はしまり、人通りもまばらだ。

政府が観光業を活性化するためなのか知らないが、この国にはやたらと祝日が多い。先週は週末を挟むと4連休だったのに、来週の水曜日も祝日だ。祝日のたびに街は死に、人混みは消え去り、街の命は消え去る。これが本当に観光のためになっているのか、少し心もとない。

彼らは仕事よりも人生をこよなく愛し、物事がうまくいかなかったら、他人か政府のせいだと思い、経済危機や財政危機とは友だちで、豊富な天然資源を有効活用できず、相変わらず発展途上国のままだ。それでも、僕たちはあまりうまく理由を説明できないままこの地に留まり、生活している。


いつかアメリカ人のように、知らない外国人に会っても、ブエノスアイレスのこと、アルゼンチン人のこと、それらすべてを愛して、「素晴らしい」を連発しながら、ハイテンション気味にあらゆることを絶賛できるようになる日が来るのだろうか。

ただよく説明出来ないけど、そうなれば、いいなと思う。
心の底から、本当にそうなれば、「素敵なことだな」と思っている。



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▼バックナンバーを読む

  1. ステップ1: さとり方の心構え
  2. ステップ2: さとるということ
  3. ステップ3: さとりへの自覚
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