グローバルキャリア塾 連載コラム

ニッポン人のさとり方 (第4回)

第4回 ステップ4: さとった人たちとは

松岡 祐紀さん 株式会社ワンズワード
代表取締役、写真家

松岡 祐紀

19歳でスコットランドのエディンバラに留学。NYにてスタジオアシスタントを経験した後、ロンドンに在住。帰国後はフリーランス・フォトグラファーとして活躍。2009年にノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏の「ソーシャルビジネス」という理念に感銘を受け、株式会社ワンズワードを起業。レッスンの質の高さを売りにしたオンライン英会話スクール「ワンズワードオンライン」を立ち上げる。

2011年よりブエノスアイレスへ移住、さらに第三の故郷としてメキシコシティに居住。2014年3月に中南米・南米の英語学習者のためにスペイン語版ポルトガル語版英語版のオンライン英会話スクールを開設。現在は、ブエノスアイレス、メキシコシティ、日本を行き来して、ソーシャルビジネスの理念の普及と事業拡大を目指している。

個人ブログ: https://keepmyword.hatenablog.com/

株式会社ワンズワード

(2010年7月1日掲載)

“私が心底愛している美徳が、たった一つある。その名は「わがまま」”
ヘルマン・ヘッセ

 

最近、社会起業家や社会貢献などが若い世代から注目されているらしい。テレビなどではしきりに特集が組まれ、そのなかでインタビューに答えた二十歳そこそこの男子は目をきらきらと輝かせながら、「日本の食料自給率の低さをどうにかして改善したいです!」などと言っている。

アホかと思う。
日本の食料自給率をどうにかする前に、おまえの人生どうにかしろと言いたい。

人のためになりたいという想いは一見すると殊勝な心がけのように映るが、たいていの場合「自分の人生をどうしたらいいか分からない、自分自身の能力をどのように自分の人生に役立てていいか分からない」ということへの裏返しである。

よく勘違いされているが、いかなる場合においても役立つ人間、絶対的な価値を持つ人間なんてこの世に存在しない。人の価値というものは、その個体の資質によって決まるのではなく、ただその人の所属する社会との関係性において決定される。

マイクロソフトの創立者であるビル・ゲイツは財団を設立し、世のため人のためにお金を使っているが、彼が乗ったプライベートジェットがアマゾンの未開地に不時着して、彼ひとり未開の部族と一緒に暮らすことになったと想像して欲しい。

それまでの名声や彼の財力、そしてその偉大な精神は言葉が通じない未開の部族においてはなんら意味がない。彼のそれまでの絶対的だと思われていた社会への有用性とその価値は意味を成さなくなり、火起こしのひとつもできない役立たずのおじいちゃんに成り下がる。

人間なんてそもそも自分以外のその他大多数とっては無価値であり、無意味な存在なのだ。あなたを少なからず意味のある存在にしているのは、両親や友人、それに職場の人たちといったあなたが直接関係している人間との関係性においてでしかない。

では、少なくても自分たちが所属する社会にいる限り、その全体のためになる人間とはどのような人たちなのだろうか?

三通りのタイプの人間が考えられる。まず真っ先に思い浮かぶのは、ある程度自分自身が満たされ、その能力を社会全体に役立てられるくらい成熟した人間になった人だ。これを勝間和代タイプと名付けよう。

二つ目は、生まれ持った資質、あるいは才能ですでに自分自身が満たされ、その溢れんばかりの愛情と情熱を最初から他者へと向けるタイプだ。これはかなり高尚なタイプであり稀なので、マザー・テレサタイプと名付けることにする。

最後は、自己の利益を追求する過程で、世の中の仕組みの不公平さや不平等さを目の当たりにし、自己の正義と折り合いをつけるためにそれを改善しようとするタイプ。これが昨今話題になっているソーシャルビジネスの根本的な考え方なので、その創始者の名前を冠してムハマド・ユヌスタイプと名付ける。

お分かりのようにマザー・テレサタイプを別にすれば、どのタイプの人間もまずは自己の利益を追求している。これは言い換えれば、自己の利益を追求できるほど自分の能力に対して自覚的であり、それを自分自身に役立てる術を熟知しているということに他ならない。

自分自身の能力を自分に役立てる術さえ知らない人間が、人様の役に立てるわけがないのだ。

アホ面下げて「社会のために何かしたい、人の役に立ちたい」などと眠たいことを言っている暇があれば、自分の能力に自覚的になり、その能力を最大限生かせる道を進むべきである。それが結果的に社会に役立つことであれば、それは素晴らしいことだと思うが、それはあくまで結果であって目的であってはならない。

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(Photo: Yuki Matsuoka)

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