国際支援と留学 (第3回)
第3回:パキスタンとインドネシアでのこと(成田 俊介)
(2010年5月1日掲載)
日本の大学では国際政治を学んでいました。在学中、ロシアを旅行した際、旅先のモスクワで民族紛争を背景にしたテロ事件が発生し、その体験から、将来は紛争や民族対立の解決に関わりたいと漠然と思うようになりました。
そして、帰国後、たまたま大学の近くに国際協力(旧ユーゴスラビアでの難民支援)をしているNGOがあることを知り、事務所に話を聞きに行ってボランティアを始めたのがジェンとの出会いです。その後、ジェンでのインターン経験を通じて、将来は国際協力に携わる仕事がしたいという思いがますます強くなりました。
大学の交換留学プログラムに応募したのは、その後です。Peace & Conflict Studiesのプログラムが充実しているオーストラリアの大学に1年間留学しました。今振り返ると、実際、その時大学で学んだことは、今の実務にはそれほど繋がりはありません。ただ、異なる価値観や文化的背景を持つ学生と接する機会があったことは、今も役に立っていると思います。
オーストラリアに留学した当初は、文化の違いとコミュニケーションの不便さからフラストレーションがたまり、「何で○○人は○○なんだ!」と憤ることがありました。そんなストレスが続いたある日、ふと「自分はイライラする原因を異文化や他人の中に見つけようとしている」と気付きました。それに気付いてからは、何かあっても、お互いが持つ背景の違いのせいとして決めつけたり、議論を諦めたりせず、正面から個々に分かりあう努力をするようになりました。このことは、イスラマバードに2年間駐在して、パキスタンやアフガニスタンに住む現地の職員や事業関係者と付き合う際にも役に立ちました。
ジェンが行う支援は、現地の人びとが主役です。それは、現地の被災者であり、現地のスタッフです。現地のスタッフとともに、現地の人びとの自立を支えるのがジェンの目指す支援です。ジェンが去った後にも、彼らの自立した生活が続くことが重要だからです。そして、総務・会計という立場から、現地のスタッフが最大限に力を発揮できる環境を整えることが私の仕事です。
よい支援を行うためには、スタッフとの信頼関係が重要です。私自身、人生経験豊富な現地のスタッフを心から信頼していました。彼らとともに、人びとの自立する力を信じることが、事業の成功につながると感じています。最初の赴任地のパキスタンでも、次の赴任地のインドネシアでもそうでした。また。そのことにやりがいを感じます。留学時代の経験は、ここに活きているのだと思います。
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