ここから始まった~NGOスタッフへの道 (第4回)
第4回:イギリスでの悪戦苦闘
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
リレーコラム
長谷部 貴俊
■特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC):
カンボジアやラオスでは、生活の安定を目指す地域開発活動を、パレスチナやイラクでは、医療や食料を届ける人道支援活動を実施。現場と日本をつなぐ、政策提言、調査研究も重要な活動の柱です。「問題の根本に取り組む」これがJVCのポリシーです。
【活動地】カンボジア、ラオス、ベトナム、タイ、コリア、アフガニスタン、パレスチナ、イラク、スーダン、南アフリカ
■長谷部貴俊:
英国留学で国際協力を学ぶ。現在アフガニスタン現地代表、東京事務所での事業担当を兼任。2児の父。
(2009年12月1日掲載)
1995年4月、家族と友人に見送られてイギリスに私は飛び立ちました。それは私にとって始めて欧米圏に行く経験でした。(それまで海外といえばタイしか行ったことがありませんでした。)まず、ロンドン大学School of Oriental and African StudiesのFoundation Diploma コースの前、大学付属の数ヶ月間の英語コースに入りました。
コースにはついていけたものの、日常生活でイギリス人がなにをしゃべっているのか、よくわからず、レストランできちんと注文することもできず、大学の学食ですでに並べられたものを取るか、中華料理屋に行って、英語のメニューの脇に書いている中国語表記から、だいたいこんな食事だろうと想像して、食べていました。食事といえば、学食か、中華料理という、そんな生活が3ヶ月くらい続き、今考えるとかなり偏った食生活でした。しかし、語学コースでは韓国、台湾、ブラジル、タイとさまざまな国から来たクラス・メイトと放課後、喫茶店で話すのはとても楽しかったことを今でも記憶しています。
■今でも役に立っているDiplomaコースの内容
9月からDiplomaコースが始まると専門科目として開発学、カルチャー・スタディーを選択し、英語のクラスも始まりました。開発学では、植民地主義の問題、貧困の定義、ジェンダーのことなど幅広く学ぶことができました。貧困の定義では、単に所得が増えること、減ることでなく、例えば、その人を取り巻く社会環境の変化も重要だと教わりました。例として、実質所得が下がっている小作農でも、地主から強いられるさまざまな労働から解放されたことで、自分は豊かだと感じるようになったインドの農民の例を知ったとき、なるほどと思い、今でも自分がNGO活動に関わる上で大切だと思っています。人は生きるうえで、食べ物はまず必要ですが、自由であると感じることも食べ物同様、重要なのでしょう。
また、このコースで学んだカルチャー・スタディーは、哲学や文化人類学などをごちゃまぜにしたような学問で、開発を実践する際に、開発そのものを自明と信じるのではなく、開発を実施する側の理論だけでなく、住民の視点、西欧以外の視点を考えるというポイントを学び、役立ちました。
■「その英語力でよく留学したね~」
わたしの通ったDiplomaコースは留学生を対象にしたもので、東アジアや中東、日本からの生徒もいました。イギリス人の先生が話す内容がわからないだけでなく、学生の英語レベルの高さに唖然としました。留学生の多くは流暢に英語を話していました。日本から来ているコース・メイトの多くは父親の仕事の関係で10代の時、欧米圏で生活をしていたり、日本に居るときも英語をかなり使う仕事をしたり、大学で英語をしっかりやっていた人がほとんどでした。クラス・メイトの女性から「長谷部くん、そんな英語力でよくイギリスに留学したね~すごく勇気があるわ。私だったら怖くてできない。」と言われたものです。
その女性は留学前にメーカーに3年間勤務し、英語を仕事でよく使っていました。それに対し、私は「大学生時代、自分の周りに留学経験者やこれから留学しようという人が居なかったから、大学の恩師に進められるままに決めたんだよ。もし、はじめから、こんなに留学する人の語学レベルが高いと知っていたら僕だって来ないよ。」と言い返したものでした。(その後、このクラス・メイトの日本人女性と私は修士課程の最中に学生結婚するのですが・・・・)
今では笑い話ですが、そのときは深刻で、そのため、興味もないテレビ番組をよく見るようにしましたし、下手な英語も積極的に話すようにしました。一番やったことは、コースについていくためにリーディングで補おうと考え、先生から与えられたReading listの文献を読み漁っていました。
■ 実践的で刺激的。実りの多かった修士課程
また、コースでは専門科目の模擬試験を実施してくれたのですが、そのときひどいスコアを取り、修士課程に行くために必要なスコアにはほど遠く、もう進学できないと自信をなくしたものです。日本に居る父にその話をしたときに「がんばれ。がんばったけど、成績が悪くて修士課程にいけなければ、もう一度やり直せばいい。」と電話で励ましてもらったことは今でも感謝しています。
その後、なにかふっきれたものがあり、勉強にも実が入りました。どうにか、大学院側から提示されたスコアをクリアして、University of East Angliaの農村開発修士課程コースに行くことが出来ました。
この修士課程に決めたのは、理論だけでなく実践を重んじ、教員の多くがイギリスのNGOやODAに深く関わっていたからです。コース内容も非常に実践的なもので、今仕事をする上でとても役立っています。ともに学ぶ生徒たちは、当時、23、24歳だった自分よりも10歳、20歳も年上で、すでに国際協力の実務経験があり、南ア、カナダ、インドさまざまな国から来ていました。修士課程で一番良かったことは、彼らの経験を聞けたことです。とても刺激的でした。どうにかこうにか修士課程を修了する頃、やっとなまりの強い英語もわかるようになっていました。
次回は私のNGO活動について書きたいと思いますので、よろしくお願いします。
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