Dr. Kの環境と化学 -豪州大学教育の現場から- (第7回)
第7回:大学院進学のススメ
モナッシュ大学 化学科 グリーンケミストリー研究所
レクチュラー(准教授)
齋藤 敬 (さいとう けい)
1976年生まれ。早稲田大学 理工学研究科 応用化学専攻 博士課程修了 (工学博士)。日本で博士取得後、アメリカ、マサチューセッツ州で新しい学問であるグリーンケミストリー(環境に優しい化学)を創始者のもとで学び、2007年8月から現職。
(2010年5月15日掲載)
海外留学としては学部への入学が一般的ですが、今回は海外での大学院進学のお話です。大学院に進もうと考える方は多くはないかもしれませんが、日本でも近年理系では修士が当たり前になりつつありますし、将来海外で働く事を視野に入れているとしたら、海外での大学院進学も考えて損はないと思います。確実に実力が着きますし、海外企業への就職も有利です。
日本では大学院に進学すると就職が難しくなる等言われていますが、海外は学歴社会ではなく資格社会、どのような学位か、資格を持っているかが大きく問われます。つまり大学院の学位、修士、博士等が非常に物を言います。また、専門分野の英語は海外に短期間生活するだけではなかなか上達しません。英語で専門を学ぶ事で、はじめて専門英語は上達します。
更には英語圏の大学、大学院を卒業している事は海外で就職する場合非常に有利に働きます。残念ながら日本の大学は世界に知られているとは言い切れません。しかし意外と違う国の大学でも、英語圏同士であれば生徒、教員の行き来も盛んなので、ある程度皆さんご存知です。
給料体系もまったく違います。特にアメリカでは大学院の学位を所得していればその給料は格段に跳ね上がります。オーストラリアも学位によって、給料は違いますが、それでもアメリカには及ばず、そのため、オーストラリアの大学院卒業生はかなりの数、アメリカで就職しています。これは裏返せば、オーストラリアの学位が海外で認められているという事にもなります。
実際の海外大学院生活ですが、専門により違うとは思いますが、確かに海外の方が日本と比べて大変で忙しいかもしれません。特に日本から来た場合、普通に忙しい大学院生活を過ごしながら、さらに英語というハンデを乗り越えなくてはいきません。しかし、実力を伸ばすためにはある程度の苦労は必要。将来役に立つ実力を伸ばすためと考えれば、乗り越えられないことはありません。
最後に実はオーストラリアはイギリススタイルなので三年半で博士が取れます。日本なら五年が当たり前ですが。これもかなりお得なのではと自分は思います。
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