日本で生まれたあなたに、アジア海外就職という選択肢を! (第9回)
第9回:日本の「普通の」サラリーマンに、「セカ就」という選択肢を
海外就職研究家
森山 たつを
日本で外資系IT企業、日系大手製造業などで10年くらい働いた社畜であり、1年間ビジネスクラスで世界一周をはじめ世界50カ国を回る旅人でもある。その後、海外で働こうとアジア7カ国で就職活動を行うなかで、海外就職の魅力と、海外で生活するという選択肢に希望を感じ、その道のりを伝えることを生業としている。
twitter https://twitter.com/mota2008
森山たつをさんの新刊!2013年4月刊行
『普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド』
(2013年7月15日掲載)
日本の「普通の」サラリーマンに、「セカ就」という選択肢を本コラムでも何度もお伝えしてきていますが、海外で働くということが、段々と特別なものではなくなっていると感じています。ただ、多くの人に取って、周りにそんなことをした人もいないし、向こうでどんな生活が待っているかも想像がつかないと思われていると思います。
そこで、私が会った数十人のセカ就(世界就職)体験者のエピソードをまとめて、ひとつの本を書きました。「セカ就 世界で就職するという選択肢」です。
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今回、本コラムをお読みの皆様に、本書の前文を公開致しますので、是非ご一読頂けたらと思います。
「日本人が働ける場所は、日本だけじゃない。世界を舞台にした就職にも目を向けてみよう!」そんなコンセプトの「セカ就」(世界就職)という言葉をご存知ですか?
海外に就職・移住という、人生の大きな岐路ともなりそうな事象に対して、いささか軽い言葉です。でも、私はこの軽さは悪くないと思っています。なぜなら、海外で働くことは、もはや今後の自分の人生の道をすべて決めてしまうようなたいそうなものでもないし、選ばれた才能を持った人にしかできない特別なものでもないからです。
私は、ここ1年ほど、多くの人々に海外就職の魅力を伝えることを生なり業わいにしてきました。私の本を読んで、セミナーを聴いて、海外就活ツアーに参加して、海外で働き始めた人が、私が知っているだけでも50人以上います。私がアジア各国を訪れたときに、彼らに実際に会って話していると、ほとんどの人が日本のどこにでもいる普通の若者であることがわかります。
この物語に登場する人物たちは、私がそうして実際に会って話をした、海外で働いている人たちがモデルになっています。ブラック企業を辞めてインドネシアに渡った男性、シンガポールで楽しく働く女性、香港に転職し世界を飛び回るビジネスマン。みんなの「セカ就」のリアルなエピソードを詰め込んで紡ぎ出したストーリーです。夢物語と思われるかもしれませんが、この物語はそうした人々の実話が基になっています。
アジア各国で現地採用されて働くということは、海外に留学経験がある人や、グローバル企業での勤務経験がある人のようなエリートだけの選択肢ではなくなりました。勇気を出して新たな一歩を踏み出せば、多くの人がチャレンジできる現実的な選択肢なのです。
本書では、そんな、ちょっと勇気を出した普通のサラリーマンやOLが5人出てきます。
年齢も、性別も、職業もバラバラの5人。そんな彼らが、どんな理由で海外で働くことを決意し、どうやって海外で仕事を見つけ、現地でどんな仕事をしているのかを、彼らの目線で描いています。
英語がネイティブ並みに話せるわけでもないし、世界を何十カ国も周って外国人の友達が何十人といるわけでもない、ましてや海外で働いた経験なんてない。日本の学校を出て、日本で働いていた、普通のサラリーマンたちの「セカ就」の物語です。
彼らは、日本での働き方に悩み、海外の就職活動という困難を乗り越え、新しい国、新しい職場で、楽しく、時に逆境と闘いながら働いています。
海外で働いている若者に実際に会って話すと、日々の苦労を楽しそうに笑い飛ばしながら、それをどうやって乗り越えて行くつもりかを熱く語ってくれます。
「セカ就」した先輩はまだ少ないですから「10年後の自分」のモデルケースはありません。そもそも、経済成長ゆえに日々激変しているアジアの街は、来年どうなっているかすら想像もつきません。不確実性に満ちあふれていて、安定とはほど遠い世界なのですが、それをチャンスだと感じ、乗り越えるだけの意志と楽観性を持っている人がほとんどです。
この本の中で私が伝えたいことは、「舞台が日本を離れて世界に広がっただけ。彼らがやっていることは、日本国内でチャンスを求めて引っ越しするのと変わらない」ということです。
映画『ALWAYS 三丁目の夕日』では、堀北真希扮する青森在住の主人公・六ちゃんが、集団就職で東京に来るところから話が始まります。1950~60年代は、高度経済成長で人手が足りなくなった東京に、チャンスを求めて地方から若者がやってきたのです。
20世紀末から、日本国内は成長が止まり、失われた10年とも20年とも言われてきました。しかし、そんな日本を尻目に、中国や東南アジア各国は60年代の日本のように圧倒的な勢いで経済成長しています。そして、その多くの国で、そうした成長に貢献する優秀な人材を求めています。
チャンスを求めて地元から東京に上京するように、日本から世界に引っ越しをする時代が来たのです。
インターネットを中心とした技術革新のおかげで、世界中の最新情報はたやすく手に入れることができ、日本に住んでいる家族や友人ともほぼ無料でメールや通話をすることができるようになりました。
アジア各国には多くの日本人が在住するようになったため、日本人向けのサービスも進化を遂げる一方です。日本にいるのと変わらないクオリティの日本食を提供してくれるレストランもたくさんできています。日本の本も、ショッピングモールの中の日系の書店や電子書籍で簡単に手に入ります。ジャスコやダイソー、無印良品やユニクロがある街もあります。アジアの主要都市は、日本の田舎よりも東京に似ているかもしれません。
また、日本企業はまだ現地で大きな力を持っているので、日本人の市場価値は高く、現地の人と比べると非常に高い給料をもらうことができます。
激動の中のチャンスに目を向けて、ある人はリスタートのため、ある人は自分の能力を伸ばすためにアジアへ向かっています。それは、日本国内で転職するのと何ら変わりのない理由です。
自分が彼らの立場になって「セカ就」するとしたらどうだろう?と思いながら本書を読んでみてください。いま自分が置かれている社会的立場を、別の角度から確認できると思います。
また、アジア経済のひとつの側面としても読んでみてください。日本がいま置かれている立場を理解し、これからのアジアとの付き合い方のヒントが隠されているかもしれません。
そして、現代の若者の成長物語として読んでみてください。草食系、ゆとり教育世代などと揶揄されている彼らですが、たくましく自分のチャンスをつかんで自分の人生の舵取りをしている姿がそこにはあります。
船に乗り、もう一生故郷の地は踏めない、といった悲壮な決意で海外に向かう時代は終わりました。貨幣と情報は、インターネットを通じて一瞬で世界中を駆け回り、物は物流業者が陸海空のあらゆる方法で届けてくれます。人の移動も、アジアの主要都市であれば東京から3万円程度で簡単に飛行機の片道切符が買える時代。
さらに、「日本人であること」を評価して、現地で雇い入れてくれる日本企業や外資系企業もあります。 こうした環境を追い風に「セカ就」という選択肢を選んだ彼らの姿をお楽しみください。彼らの生き方を通じて、皆さん自身がどんな生き方をしたいか考えるきっかけになったら幸いです。
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