中学高校ボーディングスクール留学 (第1回)
第1回: リベラルアーツ教育の大切さ
株式会社E-Concierge
代表取締役
斉藤 克明 (さいとう かつあき)
1981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。
(2013年12月15日掲載)
なぜ日本の初等、中等教育において、リベラルアーツがしっかりと教えられないのか、留学に携わり英語圏の教育を知れば知るほど思います。リベラルアーツの基本は徹底した「読み、書き」にあります。それを訓練していくなかで、論理的な自己表現と主張、ディスカッション力、コミュニケーション力、リサーチ力など、実践的社会性が広がっていきます。
日本の場合、リベラルアーツ教育は、会社に入ってOTJで学ばれていくのではないかと思うのは私だけでしょうか。相手に簡潔に正確にこちらの意思を伝えるために、どのような文章を作成すればいいのか、仕事ではそのような発想が欠かせません。また、相手は何が言いたいのかを簡潔に理解するために、まとめる力は読解力と結びついています。
さらに、発展して相手をよりよく理解するためには、その人たちの育った環境やその文化的特徴を知らなければなりません。そうなれば当然、哲学、倫理、宗教、芸術といった分野の体系的、論理的学習が必須になります。
日本の小学校から高校までで教えられていることは、「試験に出る」ことに対する準備や対応が基本になっていて、生徒の視点からみた「なぜ」が欠落していると思います。また、これからのグローバル社会に対応するためには、英語圏、イスラム文化圏、中華思想などの世界文化地図をかなり早い段階で子どもたちに学ばせる必要があるのではないかと思います。そのような要素はすべて、リベラルアーツの教育に含まれる一般教養であるといえます。
しかし、現実には、人々の生活を支えている精神的なバックグラウンドの学習などはみな高等教育に棚上げされて、「試験に出ることを優先して学びましょう」となります。それでは、やらされる側は納得できないと思います。
「教育は教えられる側におもねる必要はない」という意見もあるかもしれません。しかし、少なくとも、ボーディングスクールの場合は、生徒が発する「暗記だけの勉強はつまらない」、「勉強が日常にどのように役立つのか」という疑問を無視はしません。
中等教育までの学習がすべて楽しいとは言えませんが、少なくとも読み書きの基本は社会に出てから絶対に必要な知識です。それ故に、最低限のことは、試験に出る、出ないにかかわらず学んでもらいたいと思います。また、試験に出ることが絶対という価値観や、テストの点数イコール自分の評価という偏った価値観はグローバル社会では何の価値もないことです。
リベラルアーツ教育の早期導入は日本の教育界に必要不可欠な課題ではないかと思います。
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