グローバルキャリア塾 連載コラム

ジャーナリズムの現場から (第3回)

第3回:ジャーナリストとして必要な素養・スキルとは

共同通信社外信部デスク

半澤 隆実(はんざわ たかみ)

1962年福島県会津若松市生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、1988年共同通信社に入社。大阪支社、浦和支局、本社社会部などを経て、外信部へ配属。カイロ支局特派員、ロサンゼルス支局長としてパレスチナ紛争、アフガン、イラク戦争、ハリケーン「カトリーナ」被害などを取材。2007年から外信部デスク。著書『銃に恋して 武装するアメリカ市民』(集英社新書)

(2009年6月15日掲載)

2008年に開催された「自分らしく生きるための就活応援セミナー」(主催:早稲田総研インターナショナル・キャリア教育研究所/「グローバルリーダー養成プロジェクト」関連で、講師の一人として登場した共同通信社外信部デスク・半澤隆実さんの講演(2008年6月28日開催)内容から抜粋し、3回に分けてご紹介します。


― 報道内容に関して、外部からの圧力がかかったりすることはありますか?

半澤: 自分自身はそのような経験はありません。これは個人的な意見ですが、憲法上、言論の自由が保証されているとは言え、実際問題として、言論の自由が完全に保証される環境など、あり得ないと思います。ことさらに自由を主張する米国でも、イラク戦争の際にはマスコミ各社がホワイトハウスの情報をそのまま報道し、結果として現在のような泥沼に陥ったという反省があります。重要なのは、ジャーナリズムが権力者の発信する情報を鵜呑みにすることなく、自らの取材によって事実を明らかにし、報道するという姿勢を堅持することではないでしょうか。

― 海外に留学していた学生さんからは、日本は他の先進国に比べて国際報道に関する雑誌などの媒体が少ないように思えるとの指摘がありますが、国際報道に携わられている立場として、この意見に関してどのようにお考えですか?

半澤: ご指摘のように、日本人全般としての国際時事に関する関心は、残念ながら低いですね。新聞でも国際面は社会面などと比べても、読まれていないという調査結果があります。その要因として言われているのが、国際面の文章が堅苦しいということですね。専門家による専門家のための文章になってしまっている。たとえば、「中東和平問題」という用語を読んだだけで、それほど中東情勢に興味の無い人は「なんだか難しそうだからいいや」という気持ちになるのでしょう。実際テレビでは、同じ中東問題でもテロのニュースに続けて、理解しにくい和平会議問題に移ったとたんにいきなり視聴率が落ちるそうです。   やはり報道に関わっている私たちジャーナリストが、中東和平問題のような話題を一般の人にもわかりやすく報道するように、日頃から心がけることが大切だと思います。

― ジャーナリスト志望の女子学生からすると「女性でも記者の激務はつとまるのか」といった不安があるかと思いますが、共同通信社には女性記者はどれくらいいるのですか?

半澤: 10%くらいはいるのではないでしょうか。今日は男女平等が原則の世の中ですが、ジャーナリズムの世界では、やはり男女の仕事内容がまったく同じというわけにはいかない部分はありますね。やはり会社としても危険な戦地に送り込むのは、どうしても女性よりも男性という配慮が働いてしまうところはあると思います。とは言っても、最近は日本のメディアが中東に女性特派員を派遣したりしていますので、「男女差別」とまで言われるようなものはないのでは。逆に、女性記者のほうが男性記者よりも有利な場合もありますよ。たとえば警察取材の場合、取材対象の警察関係者は大抵男性ですので、男性記者が夜回りをしてやっとゲットできる情報を、その警察関係者とメル友になった女性記者はメールで送ってもらえるなんていうこともあるようです。

― ジャーナリズムの世界の「出世」は、他の業界と何か違うところはあるのでしょうか?

半澤: 現場の記者からデスク、シニアデスク、部長職などを経て、最終的には役員・社長まで昇り詰める流れは、他の業界とあまり変わらないと思います。ただ、現場取材がものを言う業界ですので、マネジメントに回ることを嫌ってフリーランスの記者として生涯現場を飛び回る人もいます。また、本を何冊か出して、大学教授に転身する人もいますね。

― 最後に、ジャーナリストの仕事に必要な素養・スキル・心構えなどがありましたら教えてください。

半澤: ジャーナリストだから特に必要という素養やスキルはないと思いますよ。記者の中にも、ネタをつかむのは得意だけれど文章が下手な人、取材力はそれほどではないけれど、文章力はピカイチの人など、いろいろなタイプがいますから。要は、自分の特徴を自分自身がよく把握して、どうしたらそれらをジャーナリストという職業に活かせるかについて真剣に考えればよいのではないでしょうか。フレッシュな活力がジャーナリズムの世界の入ってくることを、心待ちにしています!

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