グローバルキャリア塾 連載コラム

YOU CAN DO IT (第4回)

第4回:アメリカの大学とdiversity

留学・キャリアアドバイザー

池田 剛(いけだ ごう)

日本の大学を卒業後、旅行会社勤務を経て1982年渡米。修士課程修了後、日系メディアで報道番組制作や留学生のための進路指導業務に従事。2009年帰国、現在はLAの日本語ラジオ局向けに情報番組を制作したり、個人で留学指導や進路指導を行っている

TJS

(2010年5月1日掲載)

当初6ヶ月間の語学留学の予定であった私が正規留学へと変わったのは、前回書いたように、大学付属の英語研修機関(ELI)で共に学ぶ他の国からの留学生たちのモチベーションの高さに刺激を受けたことと、彼らの「一緒にやろうよ」という励ましのおかげであった。

私の通っていた大学の図書館は通常は夜中の12時まで、また中間や期末試験前などは24時間のオープンであった。私はクラスメイトのタイ人やボリビア人の学生たちに誘われて毎日閉館まで図書館で勉強をした。

もちろんこんなに勉強をしたのはこのときが初めてだ。

図書館

私は短期語学研修を目的にアメリカに来たので、アメリカの大学のシステムに関してはまったく無知であった。実はTOEFLという試験があることもこの時に初めて知った。

留学生活でまず最初に驚いたのは、アメリカの大学には実に多くの外国人留学生がいることだった。私の学んだオレゴン州立大学も学生全体の15パーセント程度が外国からの留学生であった(1982年当時)。

留学生は実に多くの国から来ていた。その国籍は80数カ国で、中には私の知らない国からの留学生もいた。その大半は正規留学を目指していて、3ヶ月から半年程度の短期留学生はほとんどが日本人であった。

その後ワシントンDCにある私立大学を取材する機会があったが、その大学ではなんと全体の25パーセント以上を外国からの留学生にするという方針が立てられ、世界120カ国以上の国からの留学生を受け入れていた。

アメリカの大学が留学生を積極的に受け入れているのは、アメリカの大学経営の根底に流れるdiversityという考えかたの表れの一つである。

Diversityということから言うと、もうひとつ驚いたことがあった。

アメリカの大学には幅広い年齢層の学生が学んでいたことだ。私は25歳の時に留学をしたが、25歳という年齢は決して高いものではなかった。

英語研修中にも、30代、40代の留学生は珍しくなく、中には夫婦で留学している人や家族づれの留学生もかなりいた。大学には普通の学生寮のほかに家族向けのファミリー寮があった。

私が大学に入って最初に友人になったアメリカ人の学生は64歳の男子学生だった。彼は林業に従事しており春から秋にかけては仕事が忙しい。彼が大学に通えるのは冬の学期だけだった。しかも彼は20代の時大学で授業を受けていたが、やがて結婚して家族を養うために仕事に従事、次に大学にもどってきたのは50代になってからだという。

実際、20代で一度学生をスタートさせたが、家庭を持ち学業を中断、子どもの独立などを機に再び大学にもどってくるというケースは、それほど珍しいことではなかった。

アメリカの大学では学業を中断している期間中に学校にお金を納める必要はないし、まして何年以内に卒業しなくてはいけないという規定もない。過去に履修した単位もそのまま生きているから、生活が安定したり、区切りがついたときに学校に戻っていきやすいのだ。

また、アメリカでは高卒後一度社会にでたあと、一定期間キャリアを積んでから大学に入学してくる人も多いから、私よりも年長の学生がかなりいるのだ。

学生が教授の元上司というケースもあった。

このように年長の学生もいるが、反対に私よりもずっと年下の大学生もちらほらいた。

私の息子は12歳で、娘は14歳で大学に入学をしたが、アメリカにはこのように18歳未満の大学生もいる。

彼らは年齢の差をまったく気にすることなく、一緒に机をならべて勉強をしているのだ。

日本の大学でそのような経験のなかった私にはその光景は実に新鮮であり、かつ刺激的であった。

学ぶ上でも、色々な考え方を多面的に学べて実にためになった。

同時にアメリカの大学の懐の広さを感じたものだ。

だがこの時に感じた懐の広さは、実はまだごくごく一部に過ぎないということが学ぶにつれて分かっていく。

それらについてはまた次回に。

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