グローバルキャリア塾 連載コラム

YOU CAN DO IT (第6回)

第6回:Just different

留学・キャリアアドバイザー

池田 剛(いけだ ごう)

日本の大学を卒業後、旅行会社勤務を経て1982年渡米。修士課程修了後、日系メディアで報道番組制作や留学生のための進路指導業務に従事。2009年帰国、現在はLAの日本語ラジオ局向けに情報番組を制作したり、個人で留学指導や進路指導を行っている

TJS

(2010年7月1日掲載)

先日、知り合いの高校生の定期試験の勉強を手伝う機会があった。当初は英語だけということで気軽に引き受けたのだが、結局理科を除く全科目に目を通す羽目になった。

国語の問題を一緒に考えていた時、「あぁ、まだこんな問題があるんだ」と苦笑いした。

その問題とは(今でも日本の大学の受験問題ではままあるパターンらしいが)エッセイの文中に傍線の箇所があり、「この傍線の部分から作者の思いを書きなさい」という設問であった。

私は日本にいた時からこの手の問題が嫌いで、高校2年の時ついに「作者がどう思っているかは作者に聞かないとはっきりとはわからない」と書いて提出したことがあった。返却された答案にはX(バツ)がついていた。

それ以来、心の隅で「こんな問題はおかしいんじゃないか」と根に持っていた私は、留学中のディスカッションの授業の時に、この問題を取り上げたことがあった。

日本の高校で、エッセイを読み作者の気持ちを代弁しろという問題がよく出題されるが、本来は、このエッセイを読み読者がどう思ったかを書く問題であるべきである」

キャンパス内のイベントにて

これが私の提案であった。

結論から先に言うとこれはディスカッションとしてはあまり的を射たテーマとはならなかった。


なぜなら、クラスの全員が「その問題はおかしい。エッセイを読み自分の考えを述べよとすべきだ」という意見で簡単にまとまってしまったからだ。

アメリカ人の学生だけではなく、他の国からの留学生たちも「エッセイを読み、それをもとに自分なりの考えを構築していくことが大事」と一致してしまったのだ。

そんなわけで、ディスカッションのテーマとしてはすっかり盛上げに欠けたものになってしまったが、「なぜ日本ではそのような問題がでるのか」という点で、授業自体はけっこう盛り上がった。

私の履修したこのクラスはビジネスメジャーの学生が多く、学生たちにとっては、エッセイの答案に自分の考えを書くのではなく、作者の考えかたを推察して書くという点と、当時アメリカの新聞なんかでも記事になりはじめていた年功序列や上司の指示は絶対といった日本式ビジネスとを結びつけて考える機会になったのだ。

余談になるが、後日私がメディアで働くようになった時、高校時代のあのエッセイの作者にインタビューをする機会があった。

そこで作者に当時のあのエピソードについて話をしてみた。

すると作者も、「私のエッセイは時々大学の入試にも使われるのですが、試験の模範解答を見ると、私はそんなことを思って書いたわけではないと絶句することがあるんですよ」と笑っていた。

留学中の3年間を振り返った時、私は専攻した学部での専門知識以外にも実に様々なことを学んでいたんだということを痛感する。

その一つが、「違うんだ」ということである。

「日本の常識は世界の非常識」という言葉を耳にしたことがある人もいると思うが、世の中には実に様々な考え方、価値感が存在しているということを、アメリカ人や他の国からの留学生たちを通じて学ぶことができた。

留学当初は、日本で体験したことと違うことに出会うと、私はそれを「ネガティブ」に捉える傾向があった。

今までと違うこと、過去に習ってきたこととは違うことに接したとき、自然と「良し悪し」を判断基準にしている自分がいたのだ。

しかし、長くアメリカに住み、様々なカルチャーやバックグランドの方々と意見を交わし、生活や学びを共にしている中で、違うということは単に「違う」ということに過ぎないことを知った。

そして違うからこその面白さや奥深さを体験してきたことが、その後メディアで働く上で大きな財産となった。

私はしばしば「お前は変わっている」とか「変な人」と言われるが、そんな時「そんなに褒めてくれてありがとう」と心の中でつぶやいている。

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