グローバルキャリア塾 連載コラム

世界に羽ばたく日本人と、日本でがんばる外国人を応援するコラム (第7回)

第7回:南米移民のストーリー(1)

多文化情報誌「イミグランツ」ライター
ルポライター/在日外国人研究家

和田 秀子

出版社、コンテンツ制作会社勤務を経て、2004年に独立。著名人や起業家インタビューなど幅広く手がけるほか、ライフワークとして日本に住む外国人や、世界で活躍する日本人らの取材・執筆を手がけている。原稿・原稿作成代行サービス Cool Dog Press 代表。

ブログ「hideinu日記」:
http://ameblo.jp/hideinu-nikki
取材・原稿作成代行サービス「Cool Dog Press」:
http://cooldogpress.main.jp/

(2010年10月1日掲載)

最近の日本人は「内向きになっている」という声をよく聞きます。
「わざわざ海外に出なくても、安全で便利な日本で暮らしていた方がいい……」そんな声が多いのも事実です。それはきっと、日本が豊かで快適な国になったからこそでしょう。

今では多くの外国人が、豊かな日本を目指してやってくる時代になっています。しかし、ほんの50~60年前までは、日本は“移民の送り出し国”だったのです。
日本人移民たちは、それぞれ移り住んだ国で、生命の危機や想像を絶するような苦難に襲われながらも、日本人がそこに生きた証しを、その国の発展に寄与するという形で残してきました。

なかでも、もっとも多くの日本人が移民したのは、南米のブラジルでした。
ブラジル移民の歴史は、1908年に「笠戸丸」という移民船が781人の移民を乗せて神戸港からブラジルのサントス港に向けて出発したのが始まりで、以後、第二次世界大戦で一時中断されたものの、1973年まで続きました。その65年あまりの歳月のなかで、合計約25万人の日本人がブラジルに移民したと言われています。

なぜ彼らは、海を渡ったのか――。
貧しかった日本人は、広大な面積を持つ南米に渡り、そこで農地を開墾して大農場主になることを夢見ていたのです。
「いつか立派になって故郷に錦を飾りたい」という思いで、片道切符だけを持って遙か南米の地に渡って行ったのです。

しかし、現実は甘いものではありませんでした。農場主の元で働いた人々は奴隷同様に扱われ、一方で自ら農地の開拓にあたった人々は、“緑の地獄”と呼ばれる原生林や、マラリアなどの疫病と闘わねばなりませんでした。
「この移住は失敗だった…」と気づいても、全財産売り払ってブラジルの地に渡ってきた人がほとんどでしたから、日本に帰りたくても帰ることはできません。
病気で亡くなってしまう人、自殺してしまう人、行方不明になってしまう人……。
そんな過酷な運命に翻弄されながらも、日本人移民たちは少しずつ、少しずつ、南米の地で“日本人”の存在感を示していきました。

たとえば、“野菜”をブラジルに根づかせたのも、日本人です。
ブラジルには戦前まで、野菜を食べるという習慣がありませんでしたが、日本人が野菜を栽培し、流通させるようになってからブラジル全土に「野菜を食べる習慣」が定着していきました。また現在ブラジルは、アメリカに次いで世界第二位の大豆生産国ですが、大豆の栽培を軌道に乗せたのも、じつは日本人の貢献が大きかったと言われています。
日本人の高い農業技術と粘り強い精神で、ブラジルの“セラード”と呼ばれる痩せこけた大地を開墾し、肥沃な大地へと生まれ変わらせ、大豆栽培を成功に導いたのです。

さらに日本人移民たちは、貧乏と苦労のドン底でも、子弟にだけはしっかり勉強をさせていたので、2世~3世の中には医者や弁護士、大臣などになる者も多く、今やブラジル社会を牽引する存在となっています。

皆さんは、ブラジルで日本人がどう呼ばれているかご存じでしょうか?
“ジャポネス・ガランチード(信頼できる日本人)”と呼ばれているんですよ。
私は恥ずかしながら、つい4~5年くらい前まで、こうした日本人移民の苦労と努力の歴史を知りませんでした。しかし、彼らの活躍を知ったとき、「日本人って、素晴らしい。こんなに信頼されているんだ!」と、誇らしく感じたことを覚えています。

これから「海外に出よう」と思っている皆さんにも、そんな日本人移民たちのストーリーを知ってほしいと思い、来月から数回にわたり、日本人移民のストーリーをご紹介することにしました。きっと、力になると思います。お楽しみに!

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