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グローバルキャリア塾 連載コラム

支援現場で会った人びと (第3回)

第3回:「死にたくなければ、有機野菜を育てて食べろ!」

一般財団法人 民際センター

冨田 直樹

1961年生まれ。大学4年の時に起こったエチオピア大飢饉で欧米の学生が次々に支援地域に出かけるのを見て、 いつか自分もと思っていた。サラリーマン時代にパレスチナの難民キャンプ支援をするNGOとかかわったのがきっかけで、 この世界に。現在、東南アジアの経済的に貧しい子どもたちの教育支援をしているNGO民際センターのファンドレイジング事業開発部第一部長。

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一般財団法人 民際センター

(2013年3月15日掲載)

タイ東北地方では、財源不足から全校生徒に毎日、昼食を提供できない中学校が少なくありません。それで、NGO民際センターのタイ事務局(EDF)は奨学金事業から生じた為替差額などで助成金を提供するOne School One Product事業(頭文字をとってOSOP)を実施しています。OSOPはただ昼食を提供するだけではなく、生徒が放課後、野菜や魚、豚や鶏などを育てる方法を専門家らから学び、取れた農産物を昼食の食材にしたり、市場で売って得た収益を翌年度の事業費に当てたりしています。

2007年に同事業の評価をするために訪れたチャイヤプーム県で、時間があると近隣の農家に「死にたくなければ、有機野菜を育てて食べろ」と説いて回っている校長がいました。バンワンプーカム中学校のソムサイ校長です(写真右)。ソムサイ校長は、学校近隣の農家で農薬の使用が増えるにつれて、癌やその他の疾病にかかる人が増えていることに気がつき(その中には生徒の父兄もいました)、いつしか危機感を持ちはじめました。郡の役所も農薬の使用と農業従事者が罹る疾病の関係について関心をもっていて、友人の郡長からも話を聞いていたようです。

ソムサイ校長

同校がOSOPの助成金を得て有機農業を始めるにあたって、ソムサイ校長は農業知識のある先生を郡の無農薬有機農業トレーニングコース(2週間)に派遣したり、校長自身も郡主催の有機農業視察ツアーなどに参加したりした後、学校の菜園で有機農業を始めました。さらに学校をオープンにして、生徒だけではなく近隣の農家も有機農業を学べるようにしました。これまで50~60人の農家が参加し、無農薬有機農法に切り替えた農家も若干いるそうです。しかし、現実は「無農薬に切り替えない農家の方が圧倒的に多い」と渋い顔でした。

学校から100メートルぐらい先でほうれん草、唐辛、トマト、きゅうり等を育てているチャールックさんもその一人です。無農薬有機農法に切り替えない理由を彼に尋ねると、以下の3つを挙げました。①野菜が育つのに時間がかかる(資金の回収が遅い)②有機農法では、売る際の野菜の姿が悪い(売れない)③有機肥料は農薬使用よりもコストがかかる(価格が高くなり、売れない)。また「農家が農薬を使って病気になった話は聞くが、周りの多くの農家が相変わらず農薬を使っているので、オレは気にしないよ」と強気です(しかし、家族が食べる唐辛子は有機農法で栽培していました!)。彼の横で、このコメントを聞いていたソムサイ校長は「いつか体を壊すぞ!それに、農薬を使っていると土壌が悪くなるスピードが速い。長い目で農業を考えるべきだ」と反論。二人の議論は平行線でした。

民際センターのダルニー奨学金をもらっている生徒の家庭は貧しい農家が多く、その平均年収は7~10万円に過ぎません(バンコクのそれは100万円を超えています)。その日その日のやりくりで精一杯の彼らには「長い目で」コメや野菜を育てる余裕はなく、体を壊すかもしれない農薬を使用せざるをえないのかもしれません。

チャールックさん
▲真ん中がチャールックさん

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