グローバルキャリア塾 連載コラム

所変われば品変わる (第11回)

第11回:肩こり

Endeavour Japan エンデバー・ジャパン
主宰

川内 和子(かわうち かずこ)

東京都出身。早稲田大学卒業。大学3年次に米国国際線航空会社のフライト・アテンダントに最年少で採用され、米国でのトレーニング後、米国に居住し世界路線で世界をめぐる。大学卒業後は、米国最大手銀行、米国大手投資銀行等を経て2008年春に、世界の知識を広め・知識を共有することをめざすEndeavour Japan エンデバー・ジャパンを創設。

(2009年8月15日掲載)

7月15日にエンデバー・ジャパンが開催した「日本の文化、特にポップ・カルチャーは、なぜ世界的に大人気なのか」という英語セミナーで、米国人講師のリードさんが開口一番、その前の週に、東京からパリに飛び、空港からその足で市内の会場で開催されたJapanEXPOに向かい、15万人を超える入場者に対し、着物の着付け、合気道、書道や、なんばウォークのデモと実演を行ったと話されました。

しかし、そのあとの一言に参加者は本当に驚きました。それはリードさんが、「パリで会った日本人全員に、長旅でお疲れだったでしょう?飛行機の座席に長く座っていて肩がこっていないですかと聞かれましたが、私はこれまでの人生で、肩こりを感じたことがないのですよ。日本人は、よく『肩こり』がつらい、とか言いますが、私の故郷のアメリカでは、肩がこったということを聞いたことがないですね」と言ったからです。

リードさんが疲れ知らずなのは、毎日、合気道の練習や、なんばウォークなどのエクササイズで筋肉を鍛えている賜物と思いますが、アメリカ人のほとんどが、「肩こり」を知らないということは、日本人参加者たちには衝撃的でした。

しかし、英語で「肩こり」という表現はあるそうで、have a stiff neckというとのこと。アメリカでは、いくら食べ物や生活様式など日本と文化的な違いがあったとしても、同じ人間だから、「肩こり」くらいはアメリカ人でもあるだろうと思っていた私には、驚きでした。リードさんは、日本滞在37年ということですから、生活様式も日本人と同じはずなのに、「肩こり」を感じたことがないと言うのです。

セミナー後に近くの居酒屋で行われた交流会では、参加者のひとりで博識のアメリカ人のフランクさんが「『肩がこる』という表現は、あの有名な小説家の夏目漱石が創作した言葉だと知っていました?」との質問に、日本参加者の誰も知らなかったのが印象的でした。もちろん私もその一人でしたが。

リードさんがセミナーで話された話を補足するようにフランクさんが言うには、欧米人にも「肩こり」はあるものの,その認識とそれに付随する文化に違いがあって、こる部位の認識が違うようです。日本人は「肩」がこるというのに対し、英語では「首」がこるという言い方をするそうです。ということは、shoulder の位置が日本語と英語では異なるということですね。

フランクさんが、自身の肩をお箸を使いながら説明してくれたところによると、日本人が考える肩こりの「肩」は首の付け根から肩の関節までの間の部分であるのに対し,英語でいうshoulderは肩の関節部や肩甲骨を中心とした部分を言うようです。アメリカでの「肩こり」の解釈は、日常生活で姿勢が悪かったりしておこるのではなく、スポーツなどが原因で起こる痛みやこりを指すことが多いそうです。

日本人は、「肩こり」の治療というと、透明セロハンをはがして、メンソールの薬が塗ってある面を痛む部位に貼るという冷たい湿布ですが,アメリカでは、なんと電子レンジであたためるタイプのものが主流とのこと。どうも、日本の湿布薬のように、薬が塗ってあるタイプはないようです。

フランクさんによると、日本人も夏目漱石が、「肩こり」という言葉を創る前は、肩の筋肉が硬くなる症状全般を自覚していなかったとのこと。しかし、「肩こり」という言葉を知るようになって、多くの日本人が症状を意識し始めたそうです。肩こりの原因は、同じ姿勢をとり続けるなどして、頭や腕を支える筋や、その周辺の筋肉の緊張によって、筋肉が硬くなり、局所に循環障害が起こり、それにより酸素や栄養分が末端まで届かず、疲労物質が蓄積し起こるとのこと。

それにつけても、日本人の会話には、老若男女を問わず、「肩こり」の話題が多いですね。 私などは、美容院に行くと、最後に肩もみをしてくれるサービスがとても楽しみで、ヘアーカットの腕前より、マッサージの腕が良い美容師がいる店を選んでしまう傾向があります。先日行った美容院で「肩もみのサービスを断るお客さんはいるの?」と聞いたところ、答えはNoで「全員が喜んでくださいます」とのことでした。

また、この頃は、どこの温泉に行っても、マッサージ機の椅子が置いてあり、気持ちよさそうに目をつぶり、マッサージを楽しんでいる人たちの光景があります。夏目漱石の造語がなければ、マッサージ機の発明(?)もなかったかもしれませんね。

私たちには日常語となっている「肩こり」でも、「所変われば品変わる」で、国や文化によって感じ方や認識が異なるのに驚きました。皆さんも、エンデバー・ジャパンの英語セミナーにご参加になり、友人の輪を広げるとともに、一層見識を広めていただきたいと思います。

 

エンデバージャパンのセミナー日程

夏の間は、英語セミナーは休ませていだきます。
秋に再開いたしますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

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