グローバルキャリア塾 連載コラム

所変われば品変わる (第5回)

第5回:靴を脱ぐか・脱がないか

Endeavour Japan エンデバー・ジャパン
主宰

川内 和子(かわうち かずこ)

東京都出身。早稲田大学卒業。大学3年次に米国国際線航空会社のフライト・アテンダントに最年少で採用され、米国でのトレーニング後、米国に居住し世界路線で世界をめぐる。大学卒業後は、米国最大手銀行、米国大手投資銀行等を経て2008年春に、世界の知識を広め・知識を共有することをめざすEndeavour Japan エンデバー・ジャパンを創設。

(2009年2月15日掲載)

Endeavour Japan/エンデバー・ジャパンでは、世界の知識を広め・知識を共有することをめざし、世界の種々のトッピクスを各国の専門家に英語でセミナーをしていただいています。毎回セミナー後の楽しい交流会では、いろいろな国ご出身の皆さんと話をしていると、文化的差異などで「所変われば品変わる」という諺を身近に実感します。
今回は、あるセミナー後の交流会で、「室内では、靴を脱ぐか・脱がないか」について参加者達が情報を交換した興味深い話をしたいと思います。

参加者のひとりの景子さんが、同じく参加者のドイツ人のペーターさんと話をして、彼が日本に1年間住んでいることを知ると、こんな質問をしました。「家に入る時に靴を脱ぐ習慣に慣れましたか?」。 するとペーターさんは、「最初は靴を脱ぐのをすっかり忘れて、畳の上に泥のついた足跡を残したものですが、この頃では、玄関で靴を脱ぎスリッパに履き替えると、なにかホットします。特に汗をかく夏場はいいですね。ドイツでは、靴を脱いで人に足の裏を見せるのは、ものすごく無礼なことなのですよ。ですから、夜パジャマに着替えてから室内履きに替え、翌朝シャワーを浴びて服を着替える時に、靴を履いていましたよ」と、答えました。 

横にいたアメリカ東部出身のローレンスさんも、「私は、今年で日本に7年間住んでいますが、最初は同じような失敗をしましたよ。でも梅雨時だけは、足の換気が悪く、早く家に帰って靴を脱ぎたいと思ったものでした。日本人の妻は、自宅でホーム・パーティーをすると、必ずゲストの皆さんに、『玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えてくださ~い』と毎回大声でうるさく言っていますよ。私は、我が家の掃除担当係なので、部屋が汚れると仕事が増えて困りますから、この頃では妻と一緒になって、ゲストへ口やかましく言っています」。 その話を聞いた参加者全員が大声で笑ってしまいました。やはり、郷に入れば郷に従え、というところでしょうか。

ローレンスさんは、こんなことも話してくれました。「私は仕事の関係で短期間カナダに住んだことがありますが、そこでは、ほとんどの人が室内では靴を脱いでいましたね。すべてのカナダ人が同じとは思いませんが・・・。そういえば昔、アラスカ出身の友人が、室内では常に靴を脱いでいました。多分、雪や雨などが多い地域では、土などで汚れた靴を脱いで、室内を汚さないようにする配慮から、靴を脱ぐ習慣ができたのでしょう」。

それを聞いた日本人参加者から、「ということは、アメリカやカナダでは全員が室内では靴を履いたままということではなく、地域的なものもあるのですね?」の声があがりました。 日本人だけが世界で唯一室内に入る時に靴を脱ぎ、アメリカでは誰もが室内で靴を脱がないもの、と思っていた何人かの参加者から、驚きの声があがりました。

そこで、話が振られたトルコ出身のオスマンさんは、「私の国では、室内では靴を脱ぎます。アラブの国々も同じです。イスラム教では、穢れたものを中に持ち込まないという教えによるものと思います。中国人のルーム・メートは、自分の国では室内で靴を履いていたので、日本は面倒くさい、とよく言っています。ところで、私が気に入っている健康サンダルは、日本人が考え出したものですよね。換気が良くて足裏が気持ちよくて大好きです。買い物に行く時は、いつも履いています。このサンダルを編み出した日本人は頭が良いですね」。 ペーターさんもローレンスさんも、健康サンダルの件では大きくうなずいていました。しかし、日本人参加者たちは、日本人がこのサンダルを作り出したことを知らなかったようでした。皆さんご存じでしたか?

最後にペーターさんが、「日本の皇室の皆さまの、室内で撮影されたお写真を拝見すると、どんな時でも皆さま靴を履いていらっしゃいますね」との一言に、日本人参加者全員が、ペーターさんの観察力に感嘆した次第です。

景子さんのちょっとした質問から始まった、「世界の国々では、室内で靴を脱ぐか・脱がないか」に関する短時間の考察から、参加者全員が多くのことを学びました。結論的には、絶対的な答えはなく、アメリカでも清潔、掃除が簡単といった理由から、室内で靴を脱ぐ地域も人達もいて、靴を脱ぐことはそれほど特別なことでもないのかもしれません。
ぜひ皆さんも、エンデバー・ジャパンの英語セミナーに参加され、セミナー後の交流会でも見聞を深めてください。今後の予定は以下のとおりです。ご参加をお待ちしています。

 

エンデバージャパンのセミナー日程

世界の文化シリーズ第1回
「Progressive Laws of the Netherlands/
世界に先駆け安楽死等を法制化した先進国オランダの文化を学ぶ」

講師: Mr. Ed Kuiters (エド・クイターさん)
日時: 2009年3月18日(水) 午後7時-9時30分 (6時30分開場)
場所: 港勤労福祉会館(東京・田町)

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