グローバルキャリア塾 連載コラム

所変われば品変わる (第9回)

第9回:夏休みの宿題

Endeavour Japan エンデバー・ジャパン
主宰

川内 和子(かわうち かずこ)

東京都出身。早稲田大学卒業。大学3年次に米国国際線航空会社のフライト・アテンダントに最年少で採用され、米国でのトレーニング後、米国に居住し世界路線で世界をめぐる。大学卒業後は、米国最大手銀行、米国大手投資銀行等を経て2008年春に、世界の知識を広め・知識を共有することをめざすEndeavour Japan エンデバー・ジャパンを創設。

(2009年6月15日掲載)

前回、フィンランドの小学校教師リッカーさんを講師にお招きして行われた英語セミナー「フィンランドの教育システム」では、参加者の中に、在日フィンランド大使館のウェブサイトで、このイベントを知ったというフィンランドの高校生で、現在交換留学生として東京の高校に通っているマッティ君もいました。

講師のリッカーさんは、国際学力調査PISA(OECDの15歳を対象)で、00年, 03年, 06年と常に上位を占め、現在世界中の国々から注目をされているフィンランドの教育について、丁寧でわかり易く、お話をしてくださいました。その教育システムの特長は、比較・競争とは無縁で、基本を大切に学び、生涯にわたり学習する基本的な能力を身につけるというものでした。

参加者の多くは、教育者、幼児英語講師、父親や母親の立場から、フィンランドの特別な教育方法を是非知りたいと出席されていました。その、たおやかで、詰め込み教育でない教育システムに驚嘆していました。しかし、誰でも、実際はどうなのかを知りたいですよね。そこで、偶然参加していたマッティ君が、セミナー後の交流会で大活躍をしてくれました。

マッティ君には、参加者の多くから「リッカーさんは、フィンランドでは、夏休みの宿題は全く無いと言っていたけれど、本当はどうなの?」との質問が異口同音にありました。そこで、マッティ君は、自分の経験から次のような話をしてくれました。「全く宿題は出ませんよ。だって、暑い夏休みはゆっくりして、自分で好きな時に好きな勉強をすればいいので、あれをしなさい、これをしなさい、なんて言われたくないですよ!ゆっくり休めば、それだけ新学期が楽しみで、新たな気持ちで勉強しようと思いますからね」と明快な答えをくれました。

すると次に「それでは、毎日の宿題は?」の質問には、「先生に、『これをやってきなさい』って言われると、僕たちはあまりやる気がでないから、誰も宿題をやっていかないですよ。でも、先生が『もっと勉強したい人は、ここをもう一度読み直して、この問題を解いてみようね』と言うと、俄然やる気が起きて、ほとんどの人がやってくるよ」という回答でした。次に「塾や予備校はあるの?」という問いに、「えっ?そんなの全く無いよ」との答えでした。

驚く参加者たちに、マッティ君は、こんな説明をしてくれました。「フィンランドの国土は、日本よりちょっと小さいけれど、国の総人口は550万人弱で、東京の人口の半分くらいです。だから、他の人と比較・競争して、僕の方が上とか下かっていう考え方をしないですよ」という答えでした。そこで、参加者たちは、フィンランドでは、個人主義が徹底していて、誰がやるから僕も私も負けないように頑張るのではなく、競争とは無縁な社会に、すっかりあこがれてしまいました。50歳代の男性参加者が「もう少し若ければ、移住したかったなぁ~。特に嫌な思い出がある夏休みの宿題が無いのは最高だなぁ~」と大きな声で真顔で言うと、他の参加者たちは、大笑いしながらも、大きくうなずいていました。

しかし、この参加者は、以前エンデバーの英語セミナーに出席し、オランダの先進的な国事情を聞いた時にも、「オランダに移住したかったぁ」と言っていましたっけ。暑く長い夏休みが始まる時は嬉しくて開放的になる日本の小学生たちも、8月の後半になると大慌てで、兄姉や親にアドバイスをもらい、手伝ってもらいながら、ドリル、絵日記や、自由研究、工作、絵画などの完成にバタバタしがちです。書いている私も、昔小学生だった頃、新学期が始まる前の1週間くらいの大変さは、今でも思い出すのが嫌なものです。

ところで、高校生のマッティ君の話す英語は、私達がテレビやテープ教材で聞くネイティブの英語と全く変わらないことから、彼がどうやって英語を勉強したのかに参加者の質問が集中しました。

マッティ君いわく「さっき言ったように、僕の国では人が少ないので、コスト・パフォーマンス上、英語の映画や番組に字幕や吹き替えは作らないから、どうしても理解しようと、英語を集中して聞かなくちゃならないんですよ。僕は小学校の夏休み中、朝から晩までビデオで英語の映画を見ていました。」次に、来日してから数か月しか経っていないのに、すでに日本語で日常会話を問題なくこなすマッティ君の勉強法を聞いてみたところ「小学校の頃から、毎日大好きな日本語のアニメやまんがを見たり読んだりして覚えたんだ。日本のアニメのおかげで、日本が大好きになり、こうして交換学生として日本で勉強できて、感謝しています。将来は、日本と関わりのある仕事に就きたいです。」との興味深い回答でした。

さて、現在、日本のアニメやまんがは、ヨーロッパ全土にわたり、若者達の間で空前絶後の人気だそうです。フランスに10年以上前に紹介されてから、あっと言う間に流行したとのこと。
次回7月15日(水)のエンデバー・ジャパンの英語セミナーでは、日本に約40年お住いで、日本文化に造詣が深いWilliam Reedさんをお招きし、「何故、いま、日本のアニメやまんがなどの現代ポップ・カルチャーを含む日本文化が、世界で現在これほどまでに人気があるのか?」についてお話しいただきます。Reedさんは、7月初旬にパリで開催される”Japan EXPO”で、’COOL JAPAN’をテーマに、ヨーロッパの人たちへ、合気道、書道の実演の他に、日本文化についてお話しをすることになっています。どうぞ次回英語セミナーをお楽しみに!

 

エンデバージャパンのセミナー日程

「Japan - Tradition vs Modern: What is Attracting the West?
 何が西洋を魅了するのか?-日本の伝統・現代文化」


講師: William Reedさん
日時: 2009年7月15日(水) 午後7時 - 9時15分 (6時30分開場)
場所: 港勤労福祉会館(東京・田町)

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