違うから面白い世界 (第3回)
第3回:電話の切り方で垣間見る国民性
Addictalk
代表
安 榮智
2004年、韓国建国大学を卒業後、文部科学省の国費留学生として東京大学大学院へ留学。2007年より見本市開催会社にて、イ・ビョンホンをはじめ、キム・スンウ、チ・ジニなど韓流スターのイベント通訳を経験。以後、フリーの通訳者、韓国語教師として活躍。2011年10月、代表事業主として韓国語オンラインスクールAddictalkを設立。自身がネイティブ並みに日本語を話せるようになった経験を活かして、楽しく効果的に学べる韓国語レッスンを開発・提供している。
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(2012年1月15日掲載)
日本に来て8年。日本には一人で来ているので、韓国にいる家族とはよく電話で話をする。最近は1日1回程度だが、最初の1年間ぐらいは親から1日3, 4回は電話がかかって来た。これだけの回数だと、日本人の友達といる時に電話がかかってくることも多く、その場で電話に出て話が終わって切ると必ず言われることがあった。それは、「え、それで終わり?」。私にとっては至って普通の電話のやりとりなので、何がおかしいのかわからず、「うん、なんで?」と聞き返すと、「まだ話の途中だと思ったのに切っちゃうから」という答えが帰ってくる。
日本は電話の最後に「じゃね」や「バイバイ」などといった簡単な挨拶をお互い数回交わして電話を切る。韓国でも「안녕 (じゃね)」と挨拶を交わして切ることもあるが、友人や家族など親しい間では、用件が済んだら電話の最後には大体次のような会話になる。
A: 그래, 알았어. (はい、わかった)
B: 응, 쉬어. (うん、お休み)
A: 응, 안녕. (うん、じゃね)
B: 응. (うん)
上のように、電話の最後にはお互い「응. (うん)」という答えでシンプルに会話を終わらせることが多い。このやりとりをBの側にいる日本人が聞いたら、質問に対して答えている、あるいは相づちを打っている途中で電話を切るという風に思うのも理解できる。
一方、日本は電話の最後のやりとりが多少長く、別れの挨拶のような言葉を繰り返すことが多い。たとえば、
A: じゃ、そういうことで。
B: わかった。
A: じゃ。
B: はーい。
A: またね。
B: じゃね、バイバイ。
A: バイバイ。
用件が終わったらさっさと片付けるように電話を切る韓国人。そして、なかなかきっぱりと電話を切れない日本人。電話の切り方という小さな言語行動に、せっかちだけどある意味合理的な性質、そして、お互いを気遣う丁寧な性格がそれぞれよく現れていると思う。
日本の国民性がよく現れていると思う言語行動の一つが冒頭の「お世話になっております」の使用である。会社で社外の人と電話やメールのやりとりをするときには、とりあえず「お世話になっております」から始まる。最初は皆相手に何をそんなに世話になっているのだろうと不思議に思った。だけど、これは「世話になる」という言葉通りの意味ではなく、本題に入る前の一言「ワンクッション」のような表現であることがわかった。この言葉には、単刀直入に本題に入るような露骨な行為を少しでも避けたいという日本人の気持ちが非常によく現れている。もちろん、韓国語にはこれに当てはまる表現はない。
言語行動を見ているとその国の国民性がよく現れていてとても興味深い。しかし、一方だけを見ていても気づきにくく、お互いを比べてはじめて特徴が見えてくることが多い。これも言語を学ぶ大きな魅力の一つであり、言語の多様性の面白さである。
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