海外で自分の声を見つけるまで ～Finding my voice through living abroad～

最近私の周りには、転居や転職、離職に起業など、何かしらの変化の時期にいる人が多くいます。その変化が起きるタイミング。時にはいろいろなことが妨げになって、見えづらくなるときもあります。

***********************

１０数年前のこと。仕事をしていて、それも興味のある分野で、対外的には辞めなくてもいい理由には事欠きませんでした。だけれど、自分の中で使命のようなものが形を成してきた頃で、そのためにはいつか一回日本を出た方がいいだろうと、通勤電車の中で悶々と考える日々。

でも「いつか」っていつ？待っていたら「いつか」はやって来るものなの？

そんな時に、私の当時のアメリカ人メンターは私の目を見て、こう言いました。
「Kei, why are you still here?（Keiは、まだ何故ここ(日本)にいるの？）」

彼には、私が内側に渦巻く行き場のないエネルギーを持ちつつも、「いつか」を受け身で待ち続けていた様子がはっきりと見えていたのかもしれません。

私はなんでまだここにいるのだろう？会社を辞める勇気がないから？英語がまだ充分じゃないから？持っているものを手放すことが怖いから？見知らぬ土地でやっていけるか不安だから？

その時の私は、離陸前に滑走路をぐるぐると走り続ける飛行機のようだったのかもしれません。行き先も分かっている。風向きも協力的。見送り客も整備士の人たちもみんな手を振ってくれている。だけど、まだ飛ぼうとしていない。

目を見て聞かれたその質問に、結局私は答えられませんでした。でも、妨げになる大きな理由も見つからない今こそが「いつか」なんだ、と気づいた瞬間でした。

***********************

「いつか」をいつだと捉えるのは、本当に人それぞれだと思います。

私のように、すぐ近くに来ていること自体に気づかず、きっかけが来たことでようやく気づけた時。
逆にもう来ているのは気づいているけれど、必要な最後の何かが揃うのを待っている時。

自分の身体の調子や、わずかな日々の変化も自分にしか分からないように、「いつか」のタイミングも自分にしか分からない。自分という人間と、それなりの年数を共に生きてきたからこそ分かるものなのかもしれないと思っています。

***********************

「Why are you still here?」

１０数年前の私にとっては、この言葉がノイズキャンセリング機能を持ったヘッドフォンようになって、ざわめき続ける声を静かにさせてくれました。そしてはっきりと聞こえてきたのは、「外に出たい」という強い思い。

ともすれば「いつか」を待ちつつ、毎日の繰り返しを続けていくかもしれなかった私を目覚めさせ、離陸を後押しする言葉になりました。

それ以降も「何故、私はまだここにいるの？」の問いは「いつか」を知るための私の指標となり、今でも事あるごとに自分に問いかけています。

そして、慌ててかき集めたその場しのぎの答えや言い訳でなく、自分の正直な声から出る答えが見つからなくなった時。何も返す言葉が出てこなくなった時。その時こそ「いつか」がもう来ている時で、また新たな変化のタイミングが訪れている知らせなのだと思うようになっています。

（次回へつづく）

Photo by Ross Parmly on Unsplash