海外で自分の声を見つけるまで ~Finding my voice through living abroad~
第1回:ぐらつくアイデンティティ
米国NPO法人Rootspring
プログラム統括
エリクセン恵(けい)
個人が持つ内面の豊かさを社会への変化に繋げることがミッション。リーダーシップ教育が専門のRootspringをはじめ、日本とアメリカの人材育成分野で約20年間、個人の成長を醸成する環境づくりに取り組んできた。Rootspringでは組織運営、パートナーシップ構築、ファシリテーションを行う。バーモント州の大学院SITで国際教育修士号取得。東京の多摩地域で育ち、現在はアメリカのシアトル在住。一児の母。
(2020年9月1日掲載)
初めまして。私はアメリカ北西部ワシントン州シアトルという豊かな自然と、自由な発想が根付く西海岸の街で人材育成の仕事をしています。長年関わっているこの仕事は、自分の過去の経験から学んだことに支えられています。アメリカで暮らし始めてからもうすぐ13年。このコラムでは、海外に住んだからこそ見えてきた自分の資質や、聴こえてきた内なる自分の声について書いてみたいと思います。
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社会人留学において何が大変か、という記事を読むと「お金」「時間」「英語力」「勉強量」「留学後の就職」などがあると思いますが、私の場合は断然、社会人であるからこその「アイデンティティのぐらつき」が一番大変なことでした。
日本で正社員として5年間働いた会社を退職し、バーモント州という美しい山々が魅力の州にある小さい大学院に行くために渡米したのは28歳の時。念願の学生生活だったものの実際授業が始まると、20代後半にもなって、こんなに日々泣いていていいのかというくらい辛い日々。その辛さはもちろん自分の低い英語力や、睡眠時間も取れないほどの勉強量もあったのですが、何より一番つらかったのは、自分の在り方に疑問を持つようになった事でした。
元から私は外側に発信するよりも、内側へエネルギーを向ける、いわゆる内向的(Introvert)な性格。基本的に話すよりも聴くこと、大勢の人たちといるよりも一人で静かに過ごすことが好き。けれども、寮生活だといくら忙しい時でも週末はパーティーがあり、授業では先生よりも生徒が話す量の方が絶対的に多く、グループワークは必須。いくら私なりの「静かだけど積極的な」参加をしていても、まわりからは発言もほぼない学生にしか見えないであろう私の在り方では、評価も得られず、自分の存在が日々小さくなっていくことを感じていました。日本では立派な社会人だったのに、仕事もちゃんとできる大人だったはずなのに。
そんなある日、担当教授がたまたま悪気もない様子で発した「You are really talkative, aren’t you? (ケイは、本当によくしゃべるね)」という一言。これは事実に反したことを言うアメリカ的な皮肉を含んだジョークでした。これにはさすがに笑えず、日々何とか脱しようと思っていた「非積極的で、発言しない静かな学生」という取り消しが効かないハンコを押された気分になり、本当にとても落ち込みました。高い学費を払って、安定した職を手放して、私はこの山の中で一体何をやってるのだろう・・・と自問自答したのを覚えています。
発言回数が多く、社交的で、自己主張が強く、人の注目を簡単に集めるような在り方でないと、ここでは上手く生きていけないということ?英語も勉強も頑張ればなんとかなる。でも28年間生きてきた「自分」はどう頑張ればいいの?
「自分」の扱いが難しかったのは、自分の年齢も関係があると思っていました。
私がまわりを見たところ、10代後半あたりのアイデンティティが形成していく段階で高校や大学留学をしている人は、上手い具合にアメリカのエッセンスが融合され、その後のアメリカでの暮らしがスムーズなように見受けられました。
一方、私のように日本で生れ育ち、義務教育を受け、日本社会で働き20代後半にもなっていると、在り方やコミュニケーション方法、信念など、自分の中に刻み込まれた行動や思考パターンが、良くも悪くも確立されていました。だからこそ、変えること、手放すこと自体にかなり強い抵抗感が付きまとっていたのです。
いま考えると「自分の在り方や性格をそのまま生かしつつ、それでいてグローバルな環境でどうやって生きていくのか?」という問いに立ち向かっていたのだと思います。グローバルって言われるのに、特定の特性を持つ人しか活躍できないなんて、そんなことはないはず。私のような人間でも居場所や活かし方が絶対にあるはず。
日々周辺に追いやられるような感覚に苦しくなりながら、私なりの在りようを見つける静かな歩みが始まりました。
(次回につづく)
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