韓国雑記-異文化の海を泳ぐ (第17回)
第17回:テジコギ・ロック
NPO法人日韓コミュニケーション協会
理事長
木村 妙子
1998年ナレーター時代、韓国のスタジオで収録の為初渡韓し韓国に一目惚れ。以来仕事で日本と韓国を頻繁に行き来する事となる。1999年初頭から独学で韓国語を学び始め、同年8月休業して高麗大語学堂に短期留学。2004年KLPT(世界韓国語認証試験)日本開始の際設立された検定協会に入社。以後運営に奔走し2008年KLPTを引取りNPO法人日韓コミュニケーション協会設立。
(2012年2月1日掲載)
その昔、まだ韓国語の勉強を始めたばかりの頃、韓国人ネイティブとメールのやり取りをしながら日常会話を教えて頂いていた事がある。テキストには出てこない、初めて読む言葉が沢山散りばめられたそのメールを、必死で辞書を引きながら読んでは、返信していた。
ある時私が、「どんな音楽がお好きですか?」という質問をすると、このように書かれた返事が来た。
「私は、ポークロックが好きなんですよ。」と。
「ポークロック」という言葉は外来語なので、ここではカタカナ表記をしたのだが、この本文の韓国語を見た私の脳みそは瞬間こう判断した。ポーク → テジコギ → つまり豚肉。
はて?豚肉ロックってどういうジャンルなのだろうか?頭の中では、大昔ポンキッキーズを見ながら聞いていた「ホネホネロック」が勝手に流れてきてどうにも止まらない。
テジコギ(豚肉)ロック・・・そんな音楽まであるとは!恐るべし韓国!私如きには知りえない、まだまだ未知の音楽ジャンルが沢山存在している、それが韓国・・・。そしてそんな気持ちを込めて必死になってこう書いた。
「ポークロックとはどのような音楽なのですか?私はまだ韓国の音楽シーンには明るくないので・・。」
すると、このような返事が来た。
「ポークロックというのは、ポークとロックが融和した音楽ですよ。アコースティックギターの柔らかな音色にエレクトリックギターという電子的な音が加わって。日本ではスピッツが代表的ではないかと思いますよ。」
これを読んでようやく気が付いた。韓国語の特徴として、外来語の「F」音は「P」音で発音するという決まりがあったのだという事に。
つまり、ポークは、テジコギ-豚肉(Pork)ではなく、フォーク(Folk)、つまり「フォークロック」だったのである。私はこの一連の勘違いの流れをメールに書いて送り、双方で大爆笑となったという思い出がある。
「テジコギ・ロック、面白いかもしれませんね。エルトン・ジョンのクロコダイル・ロックという曲もありますから、なくはない話しです。一度作ってみましょうか?」
当時、博士論文発表前の過酷な時期にありながら、このような洒落た言葉で沢山の素敵な韓国語を教えて下さったその方こそ、私の韓国語の師匠であり恩人の、現ソウル大学教授南基正氏である。これほど出来の悪い教え子など、後にも先にもいないであろう。
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