韓国雑記-異文化の海を泳ぐ (第5回)
第5回:混ぜる文化
NPO法人日韓コミュニケーション協会
理事長
木村 妙子
1998年ナレーター時代、韓国のスタジオで収録の為初渡韓し韓国に一目惚れ。以来仕事で日本と韓国を頻繁に行き来する事となる。1999年初頭から独学で韓国語を学び始め、同年8月休業して高麗大語学堂に短期留学。2004年KLPT(世界韓国語認証試験)日本開始の際設立された検定協会に入社。以後運営に奔走し2008年KLPTを引取りNPO法人日韓コミュニケーション協会設立。
(2011年1月15日掲載)
韓国という国は、食べ物を混ぜて混ぜて混ぜ倒して食べる国である。上に何か掛かっているようなもの、つまりトッピングしたものとその下にあるものを徹底的に混ぜ合わせる。そしてその混ぜ具合は半端ではない。
盛り付けの美しさを愛でながら食を楽しむ文化を持つ日本とは、これもまた真逆の習慣ではないかと思える。恐らく日本人にとっては受容れがたい程の混ぜ加減ではないかと思うのだが、実は私は元々食べ物を混ぜて食べるのが大好きだったので、この混ぜる文化を知った時、この国にいれば自分らしく楽しく生きられるとほくそ笑んだものである。
私の場合は単純に、味が均等になるまで混ぜて食べたいという嗜好なのだと思う。カレーライスもご飯全部にルーがいきとどくまでしっかりと混ぜて食べるのが好きだし、冷やし中華もあの盛り付けを、跡形もないように崩して混ぜ込んで食べるのが本来好きなのだ。
がしかし、悲しいかな日本人として日本で生まれ育った私は、両親により幼少の頃にこの嗜好を徹底的に否定され矯正をされた。以降、人前ではこれを封印し、1人で食事をする時だけの楽しみとしてきたのである。
だからわたしは、韓国の混ぜる文化をなんの抵抗もなく受け入れられた。というより、やっと解き放たれたと言った方がしっくりくるかもしれない。
しかし、こんな私でも「なにもそこまで混ぜなくても・・・」と見るたび爆笑する食べ物がある。それは、今では有名になった夏の風物詩、パッピンスだ。つぶ餡や練乳、フルーツやゼリー等、色々なものがトッピングされたカキ氷、パッピンス。その美味しそうに美しく飾られたパッピンスを、これでもかと言うほど、ドロドロになるまでかき混ぜる。
初めてそれを見た時は、さすがの私も「ご飯や麺だけじゃなかったのね」と心でつぶやいた。そしてすっかり慣れたはずの今でも、パッピンスだけはその混ぜ具合を見るたびに思わず笑ってしまうのである。
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