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留学と国連-世界8カ国で学んだブレずに自分の軸で生きる力

第11回 変化のサポートが価値になるということ① ー紛争後の南スーダンで真っ先にオープンしたお店はなぜネイルサロンだったのか?ー

Peace Blossom 代表
キャリアコーチ・マインドセットコーチ
異文化リーダーシップトレーナー
元国連行政官、米軍専門家

大仲千華

国連の行政官(社会統合支援担当)として国連ニューヨーク本部、南スーダンなどで和平合意の履行支援、元兵士の社会統合支援、人材育成に約10年従事。80人強の多国籍チームのリーダーを務める。閣僚経験者も任命される政府要員向け国連PKO国際研修の講師。内閣府「平和構築・平和維持に関する研究会」委員。「自分の軸で生きる練習-オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」を刊行。コーチングのプロとして自分の軸で生きる大切さを伝えている。オックスフォード大学修士課程修了。

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Peace Blossom

(2021年9月10日掲載)

東ティモールとカザフスタン、国連ニューヨーク本部での勤務を経て、再び現場に赴任することになりました。今度は南スーダンです。国連本部のPKO局(DPKO)に勤務していた時、40年近くも続いた内戦が和平合意の締結によって、いよいよ停戦に向かう見込みだ、という現場から届く報告に日々触れることで、再び現場に身を起きたいという気持ちが高まっていました。

2005年1月9日、ついに約半世紀続いたスーダンでの内戦が「南北包括和平合意」(Comprehensive Peace Agreement: CPA)の締結により終結しました。和平合意によって、南スーダン自治政府の設立と暫定期間中に南スーダンの独立を問う住民投票を実施することが決まりました。

そのようなニュースを聞きながら、国連支援の最前線だった国連PKO活動 「United Nations Mission in Sudan: UNMIS」(国連スーダン支援団)に自ら志願し、赴任が決まりました。

南スーダンに降り立った瞬間、東ティモールと比べてもチャレンジが一気に10倍に上がったような感覚を覚えました。

南北内戦による死者は約200万人。難民・避難民は約400万人とも言われ、これらの数字も内戦の激しさを物語っていました。

争いの深さ、国の大きさ、教育のレベル、これから必要となる政府やインフラの規模、南スーダンの人々の気質。。。南スーダンは様々な点で私にとっても体験したことのない領域でした。

さて、南スーダンでの仕事は、除隊兵士の人たちの社会統合支援、和平合意の履行支援、設立されたばかりの南スーダン政府の制度構築・整備でした。

南スーダンでは、ともかく生き残るため、教育を受けるため、または、家族が目の前で殺された子どもたちが報復のために、軍に参加することは珍しいことではありませんでした。また、長年の紛争の影響により、直接的でなくても、全員がなんらかの形で軍に関わっていたという歴史的背景も合わせて、国全体の非常に多くの割合の人たちが兵士であったという事情がありました。

そうした中で、兵士の人たちが軍を離れて新しい生活に「移行」するための支援が必要となったのです。さらに言うと、和平合意では兵力の削減が重要な合意点の一つとされていたので、なんらかの形でこの合意を履行することは、今後の和平と南スーダンの独立のためにも重要な事であると認識されていました。

南北包括和平合意
約半世紀続いたスーダンでの内戦を終結に導いた「南北包括和平合意」(Comprehensive Peace Agreement: CPA)。約200ページにもわたる。
南北包括和平合意
コリン・パウエル米国務長官(当時)の署名もある。

ただ、当時、驚くくらいに物資も道路も建物もなかった南スーダンで、職業訓練を提供することは、文字通りネジから屋根までを一つづつ隣国のウガンダかケニアから運んでくることを意味しました。ですから、職業訓練の一つをとっても、その運営には非常に大きな労力を要しました。

そのような環境にあったにも関わらず、今でもその一員であれたことが感謝であり、誇りに思いますが、幸いにチームの士気は高く、みなが一つとなって、最初は何もないように見えた南スーダンの地においても、雨季のために陸路で移動できない時にはヘリコプターといった輸送手段も最大限に利用して村々を周り、また、ありとあらゆるネットワークを駆使して、支援のために必要な人員や設備、資材を確保し、準備することができました。

そして、南スーダン全州におけるニーズ調査や一万人近い除隊兵士のヒアリングとスキル調査<削除>を経て、新しいスキルや技能を身につけるための起業支援、教育、職業訓練、農業支援を提供するまでにこぎつけることが出来ました。

ここまで一つの大きなハードルを超えることができたことにホッとしたのも束の間。すぐに新たな課題に直面しました。

それは、その時点でできる最善の技術的な支援や訓練を提供することができたとしても、当然ながら、学ぶ人もいれば学ばない人もいるということ、でした。

日本で専門研修を行ったとしても、学ぶ人もいれば学ばない人もいるでしょうから、「そもそもそういうもの」と言えるのかも知れません。

ただ、単にそれだけでは説明することがができない、なにか紛争の影響があるように思えてしょうがなかったのです。

すぐには分からなかったのですが、訓練の過程や彼らの様子を観察しながら、また、各地からの報告を受ける中で少しづつ明らかになってきたのは、それは「変化への適応」に関係することではないか?ということでした。

スーダンの内戦は、同じ国の中でもアラブ系のイスラム教徒を中心とする政権下の中で、南部出身のアフリカ系でイスラム教徒ではないという理由だけで公務員試験を受けることもできず、「二流市民」の扱いを受ける中で、差別ではなく平等と尊厳が尊重される自分の国を持ちたい、という「独立闘争」でした。

ですから、兵士であることは、生存や安全、教育の機会を意味しただけでなく、尊厳や誇り、意義、目的、帰属意識、参加、アイデンティティーのより所でもありました。

新しい生活へ移行するということはそれらを失うことを意味しますから、ある人にとっては、技術やスキルの習得以上に、新しい生活へ移行することに対する不安の方が大きかったのです。

彼らの中にあった言葉にならない不安をあえて言葉にするならば、長い間離れていた土地に自分は馴染むことができるだろうか?、これから何をよりどころにして生きていけばいいのだろうか?、これからの新しい生活の中で自分はやっていけるのだろうか?といった不安があったのだと思います。

ですから、ある人たちにとって本当に求められていたのは、新しい知識や技術の習得といった「技術的な側面」というよりは、「価値観の適応」に関するサポートだったのです。

ハーバード大学ケネディースクールで40年近くリーダーシップについて教鞭をとり、各国政府や世界的企業のアドバイザーを務め、国の大統領も輩出してきたロナルド・ハイフェッツ教授は、私たちが直面するあらゆる課題は大きく二つに分けられると言います。

一つ目は、知識やスキル、技術や品質、サービスの向上、コスト削減、組織の体制強化等、専門知識と技術的な取り組みによって解決できる『技術的問題』(tehnical challenge)です。二つ目は、考え方や価値観など人の適応や価値観の転換や移行が求められる『適応課題』(adaptive challenge)です。変化の時こそ求められるのは、価値観の適応に対するサポートであると言います。

ハイフェッツ教授は、「私たちが労力を注いで取り組んでもなお解決できずにいる問題のほとんどは、『技術的課題』というよりは『適応課題』であることが多く、問題は、それが『適応課題』であるにもかかわらず、『技術的課題』として扱ってしまうことだ」と言っています。

そして、今の時代に求められるのは、価値観の適応に対するサポートであると言います。

具体的にそれはどういうことなのでしょうか?ー次回は、紛争が終わったばかりの南スーダンで真っ先にオープンしたお店は、なぜネイルサロンだったのかという事例を含めてお伝えしたいと思います。

石碑
和平合意に向けた交渉は何回かに分けて行われ、段階的に合意が結ばれていった。最後の難関に、治安に関する合意が残ったが、無事に合意に至り和平合意の成立にいたった。その交渉がケニアの避暑地の一つであるナイバシャ湖湖畔で行われたので、ナイバシャ議定書(Naivasha Protocol)とも呼ばれる。交渉の舞台となったホテルにはそれを記念する石碑がある。
ホスピタリティー産業向けのトレーニング
ケニア人のシェフから南スーダンの食材を使った食事を使ったホスピタリティー産業向けのトレーニングを受けた人たちが何週間ものトレーニングの最後に成果発表を兼ねて振る舞ってくれた時の食事。思った位以上の出来に驚き、人ともてなす側としての挨拶や立ち振る舞いを短期間で身につけた彼らの生き抜くたのもしさと前を向いて進んでいく姿に心が打たれた。
『技術的問題』と『適応課題』

宣伝会議 2021年5月号 NO.955に大仲さんの執筆した記事が特集巻頭記事として掲載されています。

<<宣伝会議ONLINE>「宣伝会議」2021年5月号 NO.955のご紹介
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