留学と国連-世界8カ国で学んだブレずに自分の軸で生きる力
第4回:答えは一つではない時代のオックスフォード式自分の頭で考える力
Peace Blossom 代表
キャリアコーチ・マインドセットコーチ
異文化リーダーシップトレーナー
元国連行政官、米軍専門家
大仲千華
国連の行政官(社会統合支援担当)として国連ニューヨーク本部、南スーダンなどで和平合意の履行支援、元兵士の社会統合支援、人材育成に約10年従事。80人強の多国籍チームのリーダーを務める。閣僚経験者も任命される政府要員向け国連PKO国際研修の講師。内閣府「平和構築・平和維持に関する研究会」委員。「自分の軸で生きる練習-オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」を刊行。コーチングのプロとして自分の軸で生きる大切さを伝えている。オックスフォード大学修士課程修了。
(2020年12月1日掲載)
前回は、留学を経て、自分のアイデンティティーが揺るがされた時期に、自分の内から「なんの為に勉強するのか」「どんな人生を送りたいのか」という想いが湧き上がる体験をしたこと、その体験に導かれて英国オックスフォード大学大学院に入学する事になった事をお伝えしました。
さて、9月のある秋晴れの日に英国オックスフォード大学のキャンパスに到着しました。世界最古の大学の一つであるオックスフォードには、日本で見られるような大規模校舎や高層ビルはありません。石造りの街並みの中に、中世と近代を合わせたような佇まいを持つ研究所が点在します。
校舎がないことも驚きでしたが、さらなる驚きは、講義というのは補完的な扱いで、教授と学生が一対一で対話形式で学びを進めていく「チュートリアル」がメインの学びとされている事でした。
チュートリアルは週一回1時間程度行われます。学生は毎週与えられたテーマに対して、20冊〜50冊ほどの参考文献を読み(全てを最初から最後まで読むことはありません)、論点をまとめ、小論文という形で課題の質問に答えます。
オックスフォードでは、この作業を1学期8週間×3学期=計24回を1年間で繰り返します。
チュートリアルでは、学生に与えられた課題に対して、模範回答が配られたり、一つの正解が示されることはありません。それは、答えは一つとは限らないこと、多様な答えがあってよいということが強調されるからです。ここで学んでいるのは、何(科目)を学ぶかではなく、どう学ぶかを学び、自分で答えを出すための訓練です。つまり、どんな状況や課題に対しても自分の頭で考え、探究し、検証しながら「自分なりの答え」を導き出す力です。
学生は、まず、大事なポイントを整理し、すでに分かっている点をまとめていきます。自分の言葉で言語化することで理解を深めます。教授からの質問に答え、分かっていないところを確認します。
毎週新しいテーマが与えられ、大量の資料(文献)に目を通し、限られた時間内になんらかの答えを出さないといけない状況に置かれるので、仮説を立てること、大体このような結論になるんじゃないか、というアタリ(見当)をつけて読み進めていくことを身につけていきます。
毎週全く違うテーマが与えられますが、世の中のどんな課題でも、実際には全くのゼロベースから始めるものはなく、なんらかの類似事例を起点にして始めればよいという事に気づきます。
この作業を繰り返すことによって、簡単な答えのないテーマに対しても向き合っていくための思考法と姿勢が鍛えられていきます。
未知で複雑な現象に対しても、一つ一つ分解し、どのように考え、取り組んでいけばいいのかという耐性が身についていきます。
私は国連での勤務を通じて、東ティモールと南スーダンという国で、新しい独立国の制度をつくるという国連にとっても前例のない職務に従事する事になりましたが、その際にも、オックスフォードで身につけた解のない問いに向き合うための思考法とメンタリティーは私にとって大きな力となってくれました。
寮のハウスメートたちと一緒に
しかし、今振り返ってみると一番の驚きは、唯一の解が示される代わりに、教授から発せられる「なぜ?」(なぜあなたはそう考えるのか?)という問いかけの繰り返しによって、チュートリアルでの学びが成立していったという事です。
なぜという質問には、大きく分けて二つの意味があります。
一つ目は、あなたの考えや結論の根拠は何ですか?という意味です。
自分の考えに対する根拠を示し、その前提に誤りや偏りがないかを検証し、人の意見にも耳を傾けながらよいよい発想や考えを求めていく為に、この「なぜ」という質問はとても重要です。自分の出した意見が独りよがりになっていないかを確認し、根拠と共に説得力のある説明をすることができるのは、どのような仕事でも重要な資質だと思います。
二つ目は、「なぜあなたはその事、テーマ・課題に興味があるのですか?」という、その人の興味、関心、情熱、課題意識を含めたその人独自の視点・着眼点、切り口、強みや目的、存在意義(ミッション)についての方向性を指し示す「なぜ」です。
私は、
それを実際に見せてくれた一人が、オックスフォードに講演に来てくれたノーベル経済学賞を受賞したばかりのアマルティア・セン、ケンブリッジ大学教授(当時)でした。
次回は、彼の講演から学んだ人生を引き上げる二番目の「なぜ」
オックスフォードで学ぶ思考法の具体的なステップについて、さらにそれをどのようにして自分の事例や仕事に当てはめていけばいいのかについてを「3つの質問」としてまとめ、拙著「自分の軸で生きる練習~オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」で紹介しています。ぜひご覧くださいませ。
日経ビジネス 2020/11/09号「特集コロナ後の新人ーPART4 新人教育改革の難問」にて大仲さんがインタビューを受けた記事が掲載されています。
コロナ禍で教育や人材育成の意義が見直されていますが、人材育成の目的は、仕事のやり方や社会のルールを学ぶだけでなく、自分の頭で考えることができ、高い目的意識と意欲を持つ自律型人材の育成である、と記事はまとめています。
グローバルキャリア塾でのコラムが人材育成や教育という観点からもなんらかのヒントとなりましたら幸いです。
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