留学と国連-世界8カ国で学んだブレずに自分の軸で生きる力
第6回:最初はまったく高尚じゃなくていい。「楽しい」から始まった出会いと導き
Peace Blossom 代表
キャリアコーチ・マインドセットコーチ
異文化リーダーシップトレーナー
元国連行政官、米軍専門家
大仲千華
国連の行政官(社会統合支援担当)として国連ニューヨーク本部、南スーダンなどで和平合意の履行支援、元兵士の社会統合支援、人材育成に約10年従事。80人強の多国籍チームのリーダーを務める。閣僚経験者も任命される政府要員向け国連PKO国際研修の講師。内閣府「平和構築・平和維持に関する研究会」委員。「自分の軸で生きる練習-オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」を刊行。コーチングのプロとして自分の軸で生きる大切さを伝えている。オックスフォード大学修士課程修了。
(2021年1月1日掲載)
国連で働く人は何か使命感や高尚な理由を持っているんだろうと思われるかも知れません。正直に告白しますが、私の始まりは「ちょっと不純な動機」でした。使命感が全くない訳ではありませんが、最初からそれが強くあったというよりは「楽しい」体験を追っていくうちに、自然とそこに収まっていったというのが私の体験です。
私の大学時代について少しお話しすると、志望して入った大学でしたが、最初は授業があまり面白いと思えず(今聞けば面白い授業はあると思います)、手応えのないままに一年目が終わってしまいました。
「水を得た魚のよう」と自分で思ったのは、夏休みに初めて訪れたタイやネパールでした。何か特別なことをした訳ではないですが、タイ人の友人のお宅に泊まってタイの日常生活を垣間見たり、タイ料理について習ったり、市場をぶらぶらしたり、南国のフルーツを味見したり、ローカルの列車に乗って地方へ行ったり。。。
片言でもなんとか通じて食べてみたら美味しかったーそんな事が楽しかったのです。
新しい世界に触れる楽しさ。自分の目で見て、聞いて、五感を通じて「自分の中の世界」が広がっていくる楽しさと言ったらいいでしょうか。
それが楽しかったので、「少し長めのバックパック旅行をしながら単位も取れる」という「妙案」を思いつき、帰国してすぐに私は香港への交換留学に申し込みました。香港を選んだのは、アジアには二カ国しか留学先がなかったこと、当時アジアを志望する人が少なかったので月に10万円の奨学金があること、そのお金で周辺国に旅行もできそう、という理由でした。さらに白状すると、、、当時好きだった人が中国系(華僑)の留学生だったからでした(汗)。。。
大学2年生の9月に香港に渡航しました。
香港中文大学のキャンパス
そんな動機で始まった香港生活ですが、ある出会いがきっかけで、私の中の何かが変わっていきました。大学の寮でルームメートになったメイ(Mei)との出会いでした。私たちは不思議なくらいに最初に会った時から気があって、小さい寮の部屋でよく夜遅くまでおしゃべりをしました。
香港生まれの学生が大半を占める中で、彼女は中国本土から逃れてきた移民でした。「逃れてきた」と書いたのは、海南島生まれの彼女の両親が文化大革命で糾弾され、必死の思いで12歳の時に家族で香港に渡ってきたからです。
家族全員が働いて生活を支えなければならない状況だったので、彼女は中学校に通いながらレストランでウェイトレスをしていたそうです。幼児の頃から英語教育を受ける人の多い香港で英語ができず、田舎者と笑われたこともあったそうです。
それでもめげずに道を切り拓き、奨学金をもらい高校と大学へ進学し、香港のエリート大学である香港中文大学に進みました。最終年度に、今までやったことのないことにチャレンジしてみようと思い、「留学生をルームメートにしよう」プログラムに申し込み、日本人のルームメート(私)と一年間を過ごすことになりました。
彼女の誕生日にご両親のアパートに呼ばれたので、私はケーキを持参して行ったのですが、それまでケーキというものを食べたことがなかったそうで、家にはフォークもスプーンもなく、ぼろぼろのお箸しでみんなでケーキを食べました。ただ、悲惨さとか惨めさは全くなく、みんなで明るく笑ってケーキを食べたのでした。
彼女は芯があっていつも明るく前向きでした。卒業後の将来のこともよく二人でおしゃべりしました。
同じ頃、私は米コーネル大学で博士号をとったアメリカ人の先生の授業を受ける中で、大学で初めて勉強が面白いと体験し、その科目は真剣に勉強をしていました。帰国後は、それがきっかけで国連というキャリアや大学院への進学を意識するようになりました。
人類学という科目は「きっかけ」であって、その時に大事だったのは、何かに真剣に取り組むこと−その情熱から来る面白さと手応えを掴んだことだったと思います。
香港留学中にはメイや他のクラスメートと一緒にタイや中国、ヨーロッパにも旅行をしました。その時期に楽しい体験をたくさん積むことができたのも幸いでした。
それからも私たちは交流を続け、それから7年後、今度は私の国連の赴任先のニューヨークで彼女と再開しました。
今思えば、この時期に彼女に出会ったことは大きなことでした。彼女の強さに触れ、彼女との友情に支えられる中で、私は新しい環境や挑戦を楽しめたように思います。それが「楽しかった」ので、将来にむけて新たなチャレンジをしてみようと思えたのだと思います。
新しい体験や環境、チャレンジによって人は成長する機会を得ますが、人との出会いによって支えられ助けられ、進んでいけるのだと思います。
今では私が紹介したアメリカ人の友人と結婚し、12部屋もある大屋敷に暮らしています(写真の庭は自宅の一部で30分も余裕で歩ける広さだそうです)。彼女と一緒にお箸でケーキを食べたことを覚えているので、本当に驚きです。
といっても、ご主人が大金持ちのアメリカ人と結婚した訳ではありません。ご主人は香港で私が受講していた広東語クラスのクラスメートだったのですから。
彼女は目の前に与えられた一つ一つの機会に取り組み、その時々に与えられた「人生のテスト」に合格し、人生を切り拓いてきたのだと思います。
彼女にとっての一つの転機は、香港を離れてから10年後、今度は私の国連の赴任先のニューヨークで彼女と再開した時に起こりました。
続けてそのことについてお話しをしたいと思います。
大仲さんの書籍「自分の軸で生きる練習~オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」が雑誌「東洋経済」にて紹介されています。
日本人は「ランキング」が好きな傾向にある。例えば、偏差値、人気企業、芸能人のランキング等々。つい、ランキングに流されて自分の進路を決めたり、重要な判断を下したという人もいるのではないだろうか。しかし、そもそも海外には日本のようなランキングは存在しない。「ランキングがあれば、自分の頭で考えて判断しなくて済むが、そうした指標が妥当かどうか、または自分にとって役に立っているかどうかはまったく別の問題」と著者の大仲千華さんはいう。この記事では、「他人の指標や意見に流れないための考え方」を紹介しています。
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