グローバルキャリア塾 連載コラム

留学と国連-世界8カ国で学んだブレずに自分の軸で生きる力

第13回:世界で日本人の力が求められているということー紛争地の最前線で体験した「仲裁の力」<南スーダン編> 1/2

Peace Blossom 代表
キャリアコーチ・マインドセットコーチ
異文化リーダーシップトレーナー
元国連行政官、米軍専門家

大仲千華

国連の行政官(社会統合支援担当)として国連ニューヨーク本部、南スーダンなどで和平合意の履行支援、元兵士の社会統合支援、人材育成に約10年従事。80人強の多国籍チームのリーダーを務める。閣僚経験者も任命される政府要員向け国連PKO国際研修の講師。内閣府「平和構築・平和維持に関する研究会」委員。「自分の軸で生きる練習-オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」を刊行。コーチングのプロとして自分の軸で生きる大切さを伝えている。オックスフォード大学修士課程修了。

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Peace Blossom

(2022年10月1日掲載)

 今のような変化の時代には、「不安や心配に寄り添いつつ、人々に安心を与えること」、「『本当に大切なこと』を見分けること」、「争いよりも平和の方がいいよ」と体現できる人が求められている、とお伝えしました。

こうした事は、国連や政府といった大きな組織が得意な訳でもない。だからこそ、一人一人の力が重要になるーそう確信しています。

今回は、紛争解決の最前線で体験した「仲裁の力」について、そして、世界で日本人の力が求められているということ、をお伝えしたいと思います。

ナイル川

ヘリコプターの窓から広がるナイル川(中流)。世界で一番長い川であるナイル川は、ブルンジを源流とし、エチオピア、ウガンダなど10か国を通り、最後はエジプトの首都カイロの中心地を流れ、地中海に注がれる。

南スーダンでの職務の一つに、和平合意(南北包括和平合意=Comprehensive Peace Agreement:CPA)が守られているかどうかを紛争当事者争であるスーダン軍とスーダン人民解放軍(SPLA)と共に確認する定期会合に出席するというものがありました。

今でこそ、南スーダンの独立は既成事実として語られていますが、当時は、紛争当事者間で衝突が起こることも珍しくなく、南スーダンの独立が本当に果たされるのか分からない状況でした。

紛争再発を防ぐため、合意遵守のために様々な仕組みが設けられていました。その一つが、国連が第三者として中立の場所を提供し、和平合意の履行状況を当事者と共に一つ一つ確認していくというものでした。

議長を務めるのは、一万二千人強の国連軍を指揮するForce Commanderと呼ばれる軍司令官。その会合は、国連の役割の中でも最重要の一つとされ、かつ、最も緊張を強いられるものでもありました。

なぜなら、会合では双方の怒りや不満が噴出することも珍しくなかったからです。

「◯◯地域で武力衝突があった。武器を提供していると思われる車両が目撃された。」「撤退合意地域で相手軍の活動が目撃された。」「あなた達は本気でこの和平合意を守るつもりがあるのか?」

時には、そのような彼らの怒りや懸念を何時間も聞き続けなければいけません。

「まあまあ、そんなに怒っていないで冷静になって話し合いましょう」とでも言おうものなら、それ自体が「暴力」だと言わんとばかりに、彼らはさらに怒りました。

南スーダン(SPLA)側の訴えは、私にはこう聞こえました。

「同じ国なのに、自分たちの地域(南部)だけ学校も病院もない。舗装道路すらない。南スーダン出身というだけで、公務員試験さえ受けられない。石油という資源がありながら、自分たちはその恩恵に与かることもなく、ずっと「野蛮人」扱いされてきた。

停戦は実現したものの、本当に独立できるのかわからない。私たちはこの和平合意の通りに住民投票を行い、独立国になることを本気で求めているんだ。あなた達はどうなんだ!」

私たちの理解は、そこまではそう間違ってたわけでもなかったと思います。
でも、次の会合でも、その次の会合でも、またはその次の次の会合でも、
彼らは再び同じことを言い続けるのです。

こちら側の態度を確認するかのように。。。

この定期会合には「何かがあと一歩足りない」気がする。。。
そんな感覚を覚えながらも、
それが何なのかまだ分かりませんでした。。。

それはいったい何?!

わからないながらも、
どうしたらこの状態から「その先」に進むことができるのか?
彼らは なぜ同じことを言い続けるのか?
彼らがほんとうに訴っえようとしていることは何なのか?

そんな事を考えざるを得ない時期がありました。
そんな時期がしばらく続いた後、
ようやく、彼らが言いたい事はこうなんじゃないか、と
突然「わかった!」💡💡💡と、感じた瞬間がありました。

ナイル川

ナイル川(白ナイル)の源流近く。気候も穏やかで涼しい風が流れる@ジンジャ、ウガンダ。

【次ページ】仲裁に必要なこととは?南スーダンでの経験から得た実感

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