行けばわかるさ (第14回)
第14回 中国人の面子
丹 勇貴(たん ゆたか)
大学卒業後、特殊法人職員、翻訳・通訳業などをしながら、週4日はサッカークラブの夜間練習に参加するという“夢追い人生活”を経験。夢追い終了後、商社勤務、レストラン経営等を経て現職。著書「就職は自分の“売り”で勝負しろ」
北京五輪、終わりましたね~。ディズニーランドも劇団四季も真っ青の演出で世界中の人の度肝を抜いた開会式、ともすれば観客さえも会場に寄せ付けないほどの厳戒警備、たぶん死ぬ寸前まで強化されたであろう中国選手団、そしてやっぱり時間の長すぎる閉会式。まあ、個人的には、良くも悪くも中国らしい五輪だったとは思いますけど・・・。
中国人は面子や体面をものすごく重んじる人たちです。日本語でも「面子をつぶされた」という言葉がありますが、「面子をつぶされる」ことの意味合いは、おそらく中国人と日本人とでは比較にならないほど違うと思います。
たとえば、日本では職場で上司がみんなの前で部下を叱り飛ばすことなど、それほど珍しい光景ではありません。叱られた部下も多少へこむかも知れませんが、「面子をつぶされた云々」ということにはならないでしょう。
しかし、中国では、上司がみんなの前で部下を叱り飛ばしたりしたら、たいへんなことになります。叱られた部下は「面子をつぶされた」として会社を辞めるか、あるいは叱り飛ばした上司をものすごく恨むでしょう。
在中日本企業の駐在員が赴任時によく注意されることは「中国人の部下を叱るときは、個室に呼んで、こっそりと叱れ」ということです。中国人はみんなの前で叱られて恥をかかされることはプライドが許しませんし、みんなの前で叱られている姿を見られてしまった社員は「仕事の出来ないヤツ」というレッテルを貼られてしまいます。
これはある日本企業駐在員から聞いた話ですが、上記セオリーどおり、中国人の部下を叱るときは個室に呼んでやっていたところ、だいたい叱られる部下は決まっているので、そのうち「あいつが個室に呼ばれた」=「叱られた」という風にまわりが見るようになってきたそうです。
そこで、この駐在員は、まずは「ダミー」で成績優秀な社員を個室に呼び、世間話をした後お叱りの本命ターゲットを個室に呼び出すようにして、カムフラージュするようにしたと言っていました。まあ、いずれこのカムフラージュもパターン化してしまえば見破られてしまうでしょうが・・・。
相手が精神面において何を大切にしているかを知ることは、異文化交流の鉄則ではありますが、現地社員の叱り方にまで気を遣わなくてはならないのは、仕事第一の企業戦士が多い日本人にはなかなかたいへんですね。
というわけで、中国はなんやかんやと奥深いので、北京五輪が終わり、落ち着きを取り戻しつつある中国に、この秋出かけてみては如何でしょうか。
(2008年9月15日掲載)
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