グローバルキャリア塾 連載コラム

行けばわかるさ  (第4回)

第四回:「自分が成長できる職場」を求める中国人の「発展空間」という発想

扶桑法務事務所

丹 勇貴(たん ゆたか)

大学卒業後、特殊法人職員、翻訳・通訳業などをしながら、週4日はサッカークラブの夜間練習に参加するという“夢追い人生活”を経験。夢追い終了後、商社勤務、レストラン経営等を経て現職。著書「就職は自分の“売り”で勝負しろ」

中国人は見た目は日本人と似ていますが、思考回路はどちらかというと米国人に近いように思います。米国人の「個人主義」は比較的良く知られていますが、中国人も「自分の価値」というものを常に意識しており、また社会のシステムも「個人の価値」を評価するように出来ています。

この個人の価値を評価するシステムは、新卒採用の場面でも機能しています。日本ではあまり考えられないことですが、同じ新卒採用にも関わらず、出身大学によって初任給に差がつく場合があります。上海ならば、複旦大学や交通大学などの名門校出身者の初任給は、他大学出身者よりも1,000元も高いということがあります。一般的に上海での大卒初任給は5,000元くらいが相場ですので、この「割増率」は相当なものです。
また、新卒以外の転職でも「英語が出来ればいくら増し」といった「語学手当」のようなものがあり、自分が頑張って語学や資格を身につければ、それが金銭に換算されて還元される仕組みになっています。

それはオフィスワーク以外の仕事でも同じです。たとえば、上海の日本人駐在員を主要顧客としている和食料理店のウェイトレスの場合、日本語が出来るかどうかで、時給が違ってきます。日本だったらウェイトレスのような労働集約型業務は、基本的には長くその店に勤めている人のほうが時給が高いのが当たり前ですが、中国の場合、後から入ってきたウェイトレスのほうが、前からいるウェイトレスよりも業務上必要な日本語が良くできて、単なる給仕だけでなく、日本語でかかってくる予約の電話を取る業務も出来るとなれば、その店での勤務実績に関わらず、後から入ってきた人に高い時給が支払われます。ですから、やる気のあるウェイトレスは、少しでも勤務先での自分のポジションを良くしようと、安い賃金の中から日本語学校に通う学費を捻出して自己啓発に励むそうです。
もちろん、中国と日本を単純に比較することは出来ません。中国は人口が14億人もいて、「私は他人と違う」とアピールしないことには、経済的満足が得られることはないでしょう。学歴競争にしても、誰もが東大入学に挑戦できる日本とは異なり、地方出身者が北京や上海などの都市部の名門大学に入学するには、受験のチャンスを得るための熾烈な「予選」を戦い抜かなくてはなりません。

このように中国と日本とでは、社会的背景が大きく異なるのですが、先の事例のように中国の職場で「個人の価値」が重視される背景には、上述した思考回路の違いが影響していると思います。中国人は自分が成長することの出来る職場を「発展空間」と呼んでします。彼らはこの「発展空間」を求めて、頻繁に転職をします。よく在中日本企業の日本人駐在員が「中国人スタッフは他所にカネが高いところがあるとすぐに転職してしまう」とぼやいているのを耳にすることがありますが、中国人が日本企業を辞めてしまうのは、必ずしもカネのためだけではありません。
日本企業の中には、中国人スタッフに「どのような働きをしたら、どのようなポストに昇進できる」といったキャリアパスを明確に示していなかったり、あるいは中国人スタッフの給与水準を入社年次だけで年功序列的に決めていたりしている会社もあり、発展空間を求める優秀な中国人からすると、そのような会社は「あまり長くいてもメリットのない会社」と思われているだけです。
この中国的な「発展空間を求めて転職する」という考え方については、「石の上にも三年」という諺のある我が国では賛否が分かれるところではありますが、個人が発展空間を目指すためには、自己啓発が不可欠であることを考えると、企業側もこのように上昇志向が強い個人にとっての発展空間となれるように努力しないと、今後の国際競争は勝ち抜いていけないと私は思います。

今留学に行くことを検討中の貴方、貴方にとっての「発展空間」はどこですか?今回の留学を発展空間に行き着くための自己啓発の場と考えると、一味違った留学になるかも・・・。

(2007年11月1日掲載)

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