行けばわかるさ (第3回)
第三回:成功した有名スポーツ選手に見る就職先選びのコツ
丹 勇貴(たん ゆたか)
大学卒業後、特殊法人職員、翻訳・通訳業などをしながら、週4日はサッカークラブの夜間練習に参加するという“夢追い人生活”を経験。夢追い終了後、商社勤務、レストラン経営等を経て現職。著書「就職は自分の“売り”で勝負しろ」
今年も10月にいよいよ2009年新卒採用の企業エントリーが開始されます。近年の大卒就職戦線は学生側にとって売り手市場となっており、企業側は年々、欲しい人材を確保するために、内定を出す時期を早めています。学生たちは「ヨーイ、ドン!」で企業の求人シートにエントリーし、早い人ならば年内に内定を獲得しているのが昨今の実状です。
学生にとって求人が多く、大して労することなく就職先が確保できるということは結構なことなのですが、その分、「就職」という人生の一大イベントの重みが薄れ、就職活動を契機として自分の将来について真剣に考える機会が減ってしまうことが懸念されます。就職事情が良くなると、企業の知名度やブランドだけで就職先を選ぶ傾向が強まります。しかし、企業のイメージと実際の社風や仕事内容は必ずしも一致しないので、業界研究・企業研究をおろそかにして、イメージ先行型の就職をしてしまうと、後で「こんなはずじゃなかった」「本当はもっとやりたい仕事があったのに・・・」などと後悔するはめになりかねません。社会経験の乏しい学生が、自分が将来活躍できる職場を見出すことはそんなに容易なことではありませんが、世界で活躍する日本人スポーツ選手の成功事例を見ると、何となくイメージが湧くのでは。
たとえば、今やスコットランドの名門サッカークラブ「セルティック」で不動の地位を築いた中村俊輔選手の場合、イタリアの中堅クラブ「レッジーナ」から、イタリア・スペイン・ドイツ・イングランドなどの国内リーグと比べると、ややレベルの落ちるスコットランドリーグに移籍し、昨シーズンはMVPに選ばれるなど、大成功を収めています。中村選手は「サッカーの質が高いスペインリーグでプレーしたい」と言っていたこともあり、どちらかというとパワーで押してくる無骨なプレーが主流のスコットランドリーグに移籍することには、内心抵抗があったかも知れません。しかし、結果的に、中村選手はその高いテクニックによって、これまでスコットランドリーグでは見られなかったようなプレースタイルを披露し、2シーズン連続してリーグ優勝を成し遂げるというチームの偉業に貢献しました。
中村俊輔選手の成功事例を会社就職に関する教訓とするならば「自分の特性・スキル・資格が最も活かせる業界・企業に就職せよ」ということになるのではないでしょうか。私の知人にも、自分が帰国子女であるという特性を活かして、英語が得意な人が比較的少ない業界に就職し、長年にわたる海外勤務を経た後、外資系企業にヘッドハンティングされ、今ではその外資で副社長をしている人がいます。これから就職する学生の皆さん、会社選びにあたっては、企業の知名度やブランドではなく、まずは「自分の特性を活かして、楽しく仕事が出来るかどうか」を選択基準にしてください。
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