グローバルキャリア塾 連載コラム

行けばわかるさ  (第6回)

第六回:主体的英語学習のすすめ②

扶桑法務事務所

丹 勇貴(たん ゆたか)

大学卒業後、特殊法人職員、翻訳・通訳業などをしながら、週4日はサッカークラブの夜間練習に参加するという“夢追い人生活”を経験。夢追い終了後、商社勤務、レストラン経営等を経て現職。著書「就職は自分の“売り”で勝負しろ」

「英語がぺらぺら」というイメージ先行が英語力の向上を阻害する!

多くの日本人は「英語は早口で軽やかに話すもの」というイメージを持っているため、英語を多少でも早口でしゃべれば、すぐに「あの人は英語がぺらぺら」という評価が得られます。逆に言えば、「英語は早口で軽やかに話さなくてはならないもの」といった“強迫観念”が植え付けられてしまっているため、言葉を探したり、選んだりしながら、たどたどしく英語をしゃべる姿は「格好が悪い」というイメージを、若い人などは持っているのかも知れません。

英語は“コミュニケーション・ツール”の一つに過ぎません。したがって、如何に早口で、一見流暢に“見える”ように英語を話したとしても、相手がそれを聞き取れなかったりしたら、意思伝達という目的が達成できないので、全く意味がありません。日本人が英語の学習を始める際に起こしがちな最初の間違いは、この「英語がぺらぺら」を意識し過ぎて、英語を学習する本来の目的=「意思伝達の手段を日本語以外にもう一つ増やす」というゴールを見失ってしまうことです。

ひとくちに「英語」といっても、日本に方言があるように、アメリカやイギリスでも地域によって、発音は相当に違います。多くの日本人が聞いていて格好良いと感じるのは、恐らくニューヨークなど米国の大都市部で話されている英語かと思いますが、ニューヨークの若者がスラング交じりで話す早口の英語は、いわゆる「標準語」ではありません。また、英国人サッカースターのベッカムが話す英語も「クィーンズ・イングリッシュ」からは程遠く、日本で言えばズーズー弁のようなもので、英国人からすれば、日本人のイメージする「ぺらぺら」の英語とはやや違うような気がします。

ただ、若いニューヨーカーが話すスラングだらけの英語も、ベッカムが話す英国中部地方訛の英語も“コミュニケーション・ツール”としては十分に機能しています。我々日本人も「英語を話す=格好良い」という表面的なイメージよりも、英語が持つ意思伝達手段としての機能にもっと注目しながら勉強すれば、学習効率は今よりもはるかに向上することと思います。

テレビのニュースで、非英語圏の外国人国連大使が記者会見をしているシーンを目にすることがありますが、彼らの多くは、決してネイティブスピーカーのようなきれいな発音の英語を話しているわけではありません。しかし、それでも彼らは、非常に豊富なボキャブラリーで、自分の言いたいことを的確にメディアに伝えています。

体裁を気にし過ぎる日本人

我々日本人は「自分が他人からどう思われているか」ということを非常に気にします。そして、また「他人が何をしているか」といったことも気にする傾向があります。このような国民性が英語の学習にも影響していると私は考えます。たとえば、ある程度、英語を使う仕事に携わっている中国人に“Do you speak English?”と訊ねると、ほとんどの場合、“Yes”と何に臆することもなく返事してきますが、同じ質問を同じような立場にある日本人にした場合、“A little”といった“制限”の付いた控えめ(自信が無さそう)な答えが返ってくることのほうが多いでしょう。

これは国民が14億人もいて、自己主張しないと喰いっぱぐれてしまう中国人と控えめなことを美徳とする日本人の国民性の違いもありますが、それに加えて、日本人の体裁を気にし過ぎる性格が災いしているのではないかと私は思います。実際、上述の質問をした中国人と話してみると、発音や文法もネイティブとは程遠いし、理解力のほうも話の内容が少し込み入ってきただけで“意思疎通不能”に陥るレベルだったりすることが少なくありません。しかし、それでも彼らは“I speak English”と胸を張って英語を使う仕事に就き、日々の業務や自己研鑽の努力を通じて、徐々に英語力を伸ばし、いずれ誰しもが納得する“I speak English”のレベルに到達するのでしょう。
  
それに対して、控えめな日本人はどうかといいますと、実際よりも自分の英語力を過大申告して、後で恥をかくのは嫌だという体裁保持の心理が働くのか、中国人ほどの図々しさで“はったり”をかますことのできる人はあまりいません。中学生の頃に、英語のリーディングの授業で当てられて、皆の前で教科書を音読させられた際に、へたくそな発音を笑われて以来、英語に対して苦手意識を持ってしまった人も少なくないのではないでしょうか。また、それとは反対に、ネイティブスピーカーに近い帰国子女が、クラスメートに「英語で何か言え」とか言われてからかわれ、それ以来、英語の授業が嫌になってしまったという話も聞いたことがあります。

結局、我々日本人は「英語を話している自分が他人からどう見えているか」という体裁を気にするあまり、英語をはじめたばかりの頃から、「英語を話す」ことの本来の目的であるコミュニケーションに関するトレーニングが不足し、結果的に長い期間にわたり英語教育を受けているわりには、英語による意思伝達能力が伸びていないのです。
(つづく。次回はいよいよ「主体的英語学習のすすめ」の核心に迫ります。)

(2008年1月1日掲載)

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