留学と国連-世界8カ国で学んだブレずに自分の軸で生きる力
第1回:あなたの自信と力を一歩引き上げてくれるマインドセットの力
Peace Blossom 代表
キャリアコーチ・マインドセットコーチ
異文化リーダーシップトレーナー
元国連行政官、米軍専門家
大仲千華
国連の行政官(社会統合支援担当)として国連ニューヨーク本部、南スーダンなどで和平合意の履行支援、元兵士の社会統合支援、人材育成に約10年従事。80人強の多国籍チームのリーダーを務める。閣僚経験者も任命される政府要員向け国連PKO国際研修の講師。内閣府「平和構築・平和維持に関する研究会」委員。「自分の軸で生きる練習-オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」を刊行。コーチングのプロとして自分の軸で生きる大切さを伝えている。オックスフォード大学修士課程修了。
<大仲千華さんの活動や受賞歴はこちら!>
(2020年9月15日掲載)
その日、私はちょっとびっくりしながら嬉しさで一杯でした。
クラスの全員が、堂々と素晴らしいスピーチを次から次へと披露するからです。みんな輝いていて、内容も素晴らしいものばかりでした。しかも全部英語で!!!自然と拍手の手が強くなっていました。
最後のスピーチを終えると、一つのチャレンジを乗り越えた自信でみんな誇らしげな顔をしているのが分かりました。お互いについての新しい発見もあって、このスピーチを聞けて本当によかったと思ったのでした。
突然失礼しました。
みなさん、はじめまして!
大仲千華と申します。
今、紹介させてもらったのは、私が教えている大学のクラスでの体験です。
このクラスでは、英語をペラペラと間違いなく話すことよりも、つっかえてもいいから、体験から自分が学んだことを自分の言葉で相手に伝えること、聞く人に何か役立つようなこと、励ますようなことを伝えることを一緒に学んでいます。
最初から出来る訳ではありませんが、スピーチがどんどんとよいものになっていく様子を見れることは心が満たされる体験です。
このクラスでは、自由に表現していい、体験に価値があること、そして、あなたには根源的に価値がある、ということを重ねて強調しています。
なぜ、この体験談を先に紹介したいと思ったかと言うと、こうして培っていくマインドセットが、自信やモーチベーション(意欲・やる気)、語学上達や留学にとって、また、今のように新型ウイルスで不安や新しいチャレンジの多い時でも、前向きに力強く歩んでいける秘訣でもあると思うからです。
「人は何ができてもできなくても、何をしてもしなくても、根源的に価値がある」という考え方・観念・世界観(=マインドセット)は、単なる道徳論でもなく、精神論でもありません。実際的にパフォーマンスややる気に大きく影響することも明らかになっています。
株取引で自動売買をするAI(人工知能)の例ですが、最初は良い成績だったのに、ある暴落で全資産を失ったことがあったそうです。
後で分かったのは、「利益を出すと褒める」、「損失を出すと叱る」という教育を受けることによって、「叱られたくない」と思ったばかりに、損を隠し続けてどんどんと損失が大きくなってしまった、ということでした。
あまりに人間っぽくて、少しびっくりする程ですが、AIも褒められると嬉しい、叱られるのは嫌という感覚を持つことができるそうで、与えられた役割を最も効率的にこなすはずのAIが、「失敗を避ける」ということを優先したのです。
この例から分かることは、私たちの心理や行動パターンの中で働く「失敗を避けたい」という力は、私たちが自覚する以上に強いということです。弱い人間であるわたし達はなおさらだと思います。
そして、成績や成果、生産性が強調されると、人はそれで自分の価値を図られてしまうように感じ、縮じこまってしまい、逆に本来の力が発揮されるのを邪魔してしまう、ということです。
これではなにか「もったいない」だけでなく、もどかしいし、生きにくくなってしまいますね。
なので、クラスではもっと自由に表現したり、体験することを心がけています。
私は、約10年ほど国連の行政官(社会統合支援担当)として、国連ニューヨーク本部や南スーダンで、和平合意の履行支援と元兵士の社会統合支援等に関わりました。閣僚経験者も任命される世界的な国連PKO研修では米軍の専門家を務めました。
大学で平和学や異文化理解を教えながら、コーチングのプロとして、マインドセットの大切さ、自分の軸で生きることの大切さを伝えています。
このコラムでは、どうして語学の習得や留学、多国籍な環境ではマインドセット(考え方・観念・思考態度)や自分の軸で生きることが大切になるのか、日本で生まれた私のマインドセットや世界観は留学や国連勤務でどう変えられ育まれていったのか?ーという切り口で、エピソードを交えながら具体的なヒントをお伝えしていきたいと思っています。
大仲千華さんの活動・受賞歴
- 雑誌「クーリエジャポン」(講談社)にて連載『答えを求めない勇気』を持つ。国際紛争の現場で学んだ仲裁の力やグーグルと国連研修の共通点などキャリアやリーダーシップに関する記事を多く執筆。
- 2016年に来日のウィーンフィル管弦楽団を取材。東日本大震災後の支援として5年連続東北へ通い続けた団員は何を東北で感じ何を学んだのか?について記事を執筆、クーリエジャポンに寄稿。
- 朝日新聞にて自著「自分の軸で生きる練習-オックスフォード・国連で学んだ答えのない時代の思考法」(大和書房)、紹介、雑誌anan(マガジンハウス)で記事掲載。
- コーチングのプロとして、医師、国連職員、 政府職員、ビジネスパーソン(製薬, 銀行, 外資系金融, 製造業等), NGO職員、臨床心理士等のクライアントから支持される。
- 国連事務総長特別代表養成研修パネリスト、防衛副大臣向け勉強会プレゼンター、上智大学教職員向けに講演。中学、大学等その他講演多数。
- アジア・中東8カ国の士官を含む軍人約400名に、国連PKO戦略策定、課題解決(シナリオ)演習、交渉、異文化理解等について指導。
- 国際赤十字委員会・国際問題研究所共催「人道支援に関する研究会」委員
- Oxford University New Century Scholarとして、オックスフォード大学大学院より全額奨学金を授与され修士課程を修了。
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