ニッポン人のさとり方 (第18回)
第18回 コンフォートゾーンから抜けだして、この人生で何かを掴むこと。
松岡 祐紀さん 株式会社ワンズワード
代表取締役、写真家
松岡 祐紀
19歳でスコットランドのエディンバラに留学。NYにてスタジオアシスタントを経験した後、ロンドンに在住。帰国後はフリーランス・フォトグラファーとして活躍。2009年にノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏の「ソーシャルビジネス」という理念に感銘を受け、株式会社ワンズワードを起業。レッスンの質の高さを売りにしたオンライン英会話スクール「ワンズワードオンライン」を立ち上げる。
2011年よりブエノスアイレスへ移住、さらに第三の故郷としてメキシコシティに居住。2014年3月に中南米・南米の英語学習者のためにスペイン語版、ポルトガル語版、英語版のオンライン英会話スクールを開設。現在は、ブエノスアイレス、メキシコシティ、日本を行き来して、ソーシャルビジネスの理念の普及と事業拡大を目指している。
(2011年9月1日掲載)
最近、よく考えるのが「語学習得とは?」ということだ。特に思うのは、「話しているだけでは語学は上達しない」ということだ。特にある程度話せる中級者レベルになると、これがよく当てはまる。
同じような言い回し、絶対に間違いのない暗記している単語・・・・・・その結果、当たり障りのない会話に終始してしまい、金太郎飴のようなレッスンが量産される。
ワンズワードで心がけているのは、上記のようなことに陥らないように、生徒様の今のレベルよりも一歩上の教材を提供し、彼らの英語力の向上を図るということだ。ただ、これがなかなか難しい。
間違いを犯すのは恥ずかしい。だから、自分のコンフォートゾーン(気持ちのいい空間)から出ようとせずに、ずっと同じ場所にとどまり続ける。
これは自分がよく経験しているので分かる。自分も英語でもスペイン語でも当然のように間違いは犯すし、とくにスペイン語なんて間違いだらけだ。このあいだはカフェでコーラを注文しようとして、スペイン語で「コカ・コーラって、なんて言うんだっけ?」と考えたが思い浮かばず、結局「COLAをください」と言ったら店員さんに笑われた。
スペイン語で「COLA」はお尻という意味らしい。
たしかに、カフェで「ケツくれ!」と注文するのは、変態だけだろう。
それでも、懲りずに僕は拙いスペイン語でブエノスアイレスの不動産屋に入り、堂々とその拙いスペイン語で「ああだ、こうだ」と言いながら、今では新しい物件を探していたりする。
英語やスペイン語で間違いを犯すのは、恥ずかしい。この感覚はとても重要だ。なぜなら、羞恥心がなくなると、同時に向上心もなくなるからだ。(この地に滞在している多くのアメリカ人のひどいスペイン語を聞いて、本当にそう思う)
恥ずかしいと思うと同時に、その間違いを心に刻み、今度からは間違わないように心がければいい。それでも、しばらくしたら同じ間違いを犯すだろう。そしたら、またその間違いを再度心に刻み、その単語、その文法とともに恥ずかしさを心に刻めば、今度は間違えなくなるかもしれない・・・・・
英語やスペイン語の間違いで人は死ぬこともないし、人は言葉の間違いに関しては寛容だ。別にRとLの区別がつかなくても英語でコミュニケーションを取ることは出来るし、ブエノスアイレスのカフェで「ケツくれ!」とスペイン語で言っても、笑い話になるだけで、誰も傷つかない。
間違いを怖れて同じ場所に留まるよりは、どんどん間違いを犯しながらももっと上の目指すべきだろう。同じことを繰り返すよりは、ずっと何か新しいことに挑戦し続ける人だけが、この短い人生で何かしら身につけることが出来ると思う。
(Photo: Yuki Matsuoka)
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