ニッポン人のさとり方　（第2回）

第2回ステップ２：さとるということ

松岡　祐紀

19歳でスコットランドのエディンバラに留学。NYにてスタジオアシスタントを経験した後、ロンドンに在住。帰国後はフリーランス・フォトグラファーとして活躍。2009年にノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏の「ソーシャルビジネス」という理念に感銘を受け、株式会社ワンズワードを起業。レッスンの質の高さを売りにしたオンライン英会話スクール「ワンズワードオンライン」を立ち上げる。

2011年よりブエノスアイレスへ移住、さらに第三の故郷としてメキシコシティに居住。2014年3月に中南米・南米の英語学習者のためにスペイン語版、ポルトガル語版、英語版のオンライン英会話スクールを開設。現在は、ブエノスアイレス、メキシコシティ、日本を行き来して、ソーシャルビジネスの理念の普及と事業拡大を目指している。

個人ブログ： https://keepmyword.hatenablog.com/

（2010年5月1日掲載）

「美よりも才能のほうが永持ちする」
オスカー・ワイルド

あなたが「町で一番の美女」や「薄幸の美青年」というような異名を取っているようであれば、今回のコラムは不要だ。読み飛ばしてもらいたい。外見的な特徴はそれだけで人を惹きつけ、コミュケーションを取るためのきっかけになる。

日本人が海外において犯す戦略的な間違いは「人からいかに嫌われないで済むか」という態度だ。日本のような外国人がほとんどいない島国では、「人と違う」ということが大きなディスアドバンテージになる。だからこそ、我々は必死に他人と自分を区別出来ないように、それに埋没させ目立たず波風立てないようにしようと涙ぐましい努力をする。

残念ながら海外ではそのような態度は、非常にマイナスに働く。なぜならば、そもそも海外ではあなたは異国の人であり、そこになんらか興味が引く要素がない限り、「自国の人」よりも数段魅力に欠け、コミュケーションすらままならない「箸にも棒にもかからない人物」なのだ。

控えめ目な表現で言ってもあなたは「鼻くそ以下」の存在だ。

まずはそれを深く自覚する必要がある。そこがスタート地点だ。実際に現地の言葉がしゃべれない間は、特に人間扱いされることもないだろう。そのような孤独と差別と侮蔑に耐えつつも、いかに人間としての尊厳を確保し、現地の人よりも魅力的な人物足りうるか、それを論じていきたい。

あなたと他者の違いはなんだろう？これを認識することは、海外では非常に重要になってくる。違いを明確に意識し、それを戦略的に用いてアピールしていくことが必要だ。「外国人」であることもひとつの違いであり、それを生かすも殺すもあなた次第だ。何もここであなたと他者との根源的な違いについて述べようとしているわけではない。あくまで目に見える違いについて認識し、それを自分のアピールポイントにしていく必要があると説いているだけだ。

日本人は自他共に認める控えめな民族だ。自分の長所をこれ見よがしに他人にアピールするなんて、心外かもしれない。ならば、ブログやFACEBOOK（海外のmixi）、ツイッターなどのソーシャルメディアを使って、間接的に自分と他者の違いを明確にするのもひとつの手である。口下手ならば、書き言葉によって自分だけのストーリーを語ればいい。ソーシャルメディアに精通していること、これも海外で生き残るための必須の要素ではないだろうか。

あなたが持っている「言わなくてもなんとなく分かるよね」的な態度は捨ててもらいたい。海外ではそんなものは通用しない。あなたは誰からも興味を抱かれず、言葉が通じない異国の地へと行く。そのことを最初から認識していれば、それほど大きな失望を味わうこともないだろう。

海外生活におけるゴールは人それぞれだ。多くの人は、１年やそこら「お客さま」として海外で過ごし、日本に帰ってくる。それが特に悪いとは言わない。だが、どうせ行くのであればその国の価値観を身につけ、すっかり順応するに越したことはない。そうなれば、あなたはお客さまとしてではなく、「１個の個性を持った人間」という扱いを受け、誰もあなたを「日本人」という目で見ないだろう。

あなたが自国で培った属性を克服してはじめて、海外の人たちと心が通ったコミュケーションが可能になる。そのことだけは肝に命じておくべきだ。

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Brasil (Photo:Yuki Matsuoka)