グローバルキャリア塾 連載コラム

次世代教育 (第15回)

第15回:ボーディングスクールのハークネステーブル(楕円卓)

株式会社E-Concierge
代表取締役

斉藤 克明 (さいとう かつあき)

11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。

株式会社E-Concierge

(2010年11月1日掲載)

ボーディングスクールを象徴している一つがハークネステーブルです。
これは大きな楕円状のテーブルで多くのボーディングスクールの授業で
使われています。

ボーディングスクールの一クラスの人数は10名前後です。
日本の子どもたちがおおよそ経験したことのないこのクラスに
彼らのカルチャーショックは相当なものと思います。
「日本でも、塾は少人数クラスで運営されている」という反論がありそうですね。
物理的にはその通りと思います。しかし、塾は少人数でも、大人数でも
その目的とするところは受験対策ですから、子どもたちの意見を
クラスの運営の中で求めることはまれでしょう。
覚えることが明確に決まっているので、
質問の量と質もおのずと制限されると思います。

ボーディングスクールのハークネステーブルというコンセプトとプライドは
「少人数制」ということではなく、子どもたちに課題を与えて考えさせ、
問題解決に導くという「方法論」にあります。

「理屈はわかるが、それではカリキュラムをこなせるはずがない」
という声が聞こえてきます。
私もそれは不思議に思っていました。たとえば、歴史のクラスなど
覚えさせるべきことがたくさんあるのに、板書もせず先生と子どもたちが
お互いにまるく向き合って意見交換をしながらの「授業」など
信じられないというよりも内容が理解できませんでした。

実はボーディングスクールの授業というのは、受身では成り立っていません。
覚えたことを正確に表現できることよりも、たえず考えさせられ、
それを伝えることに重点が置かれています。

たとえば、関が原の戦いで西軍が勝っていたらその後の日本はどうなっていたか
という仮説に対する解答が宿題となったりするわけです。
否が応でも考える、考えさせられるのが彼らの信じている「学習方法」です。
当然、クラス内では盛り上がるでしょう。
正解はありません。むしろ、正解を自分で作り出してゆくわけですから。
テーブルの人たちが納得すればそれでよいわけですから。

では、関が原に参加した武将と、それぞれの大将の戦略、
そして結果説明はどうするのでしょう。
それは、「教科書に書いてあるから読んで覚えること」
という先生の一言でほぼ片付けられるわけです。
結果的に暗記すべきことは、このようにして押さえられるわけです。
この方式が絶対に良いとは私は思いません。
そもそも教育に「絶対」という方法論などあるわけがありません。

私が感心しているのは、子どもたちが元気におしみなく自分の意見を
素直に授業で表現することなのです。
「あーでもない、こーでもない」ということを子どもたちに議論させ、
先生はそれをまとめ、方向を決め、そして仮説に必要な要素を
彼らに与える。いわば、MBAのケーススタディーの原型のようなものです。

すべての授業が「議論」中心にはできません。
語学、数学、理科系の実験など広義形式でないと進まない学習も当然あります。
そのなかで、最も大切なのは学ぶ側が元気で好奇心に満ち、
学びたいと思うことです。

ゆえに、「なぜ」を出来る限り追求することは必要なのだと思います。
すべてのボーディングスクールがハークネステーブルを
持っているわけではありません。しかし、すべてのボーディングスクールが
子どもたちの「なぜ」を大切にしていると、私は思っています。

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