次世代教育 (第33回)
第33回:ボーディングスクール-スポーツと人格教育
株式会社E-Concierge
代表取締役
斉藤 克明 (さいとう かつあき)
11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。
(2012年4月1日掲載)
アメリカ、ボーディングスクール卒業生の集まりで話されることは、「寮生活とスポーツ」といわれています。難しかった微分積分、苦労した歴史の先生から課せられた小論文、楽しかった化学の実験などを卒業生たちが話題にすることは、確かにまれであると思います。
ボーディングスクールではスポーツがきわめて先生と生徒たちの身近にあります。運動能力の優れている生徒も、そうでない生徒もスポーツ競技参加機会が均等に与えられる工夫があります。スポーツが無理なく生徒に受け入れられています。ボーディングスクールにおいては、スポーツによる競技活動が、生徒たちに成功体験、達成感、チームワーク、協調性、感謝の気持ち、思いやり、プライドなどを、具体的に教えます。
日本のクラブ活動におけるスポーツ競技とボーディングスクールのスポーツ競技は、ボーディングスクールのそれが、多様性があり、全員参加、全員競技出場という点において決定的に違います。日本の場合は、競技スポーツ大会は一つの学校から複数のチームの出場はできません。試合出場のメンバーになるには、まず同じ学校内での競争に勝ち残らなくてはいけません。さらに、日本の場合は、いくら能力があっても先輩、後輩の関係から、試合に出場できないということもあり得ます。
日本の場合、複数の競技スポーツクラブに所属することは不可能ですが、ボーディングスクールにおいては、一年を三シーズンに分けて、それぞれのシーズンごとに独立して競技スポーツを生徒に課しています。リーグに属している学校は、秋、冬、春のシーズンごとに、スポーツの種目が決まっています。それゆえに、同一のスポーツを競技としてシーズン外に行うことは物理的に不可能なのです。
ボーディングスクールでは、すべての学校が競技スポーツにおいては、生徒全員が複数競技に参加するという方針を貫いています。そのために、生徒の数だけ、チームを作成するのです。最強チームはバーシティー(一軍)、次がジュニアバーシティー(二軍)、さらに希望する生徒がいれば、三軍、四軍とチームを増やしていきます。
日本の場合は、一年のうち、試合のシーズンに向けてあとの時期は練習に励みますが、ボーディングスクールの場合は、毎週、(通常は水曜日と土曜日)それぞれの学校が所属しているリーグ間で、ホームとアウェイに分かれて対抗試合を繰り返します。対抗試合では、技量が拮抗したチームが試合できるように、各校のコーチ間で調整が図られています。それぞれのチームの技量は担当する先生(コーチ)が日々の寮生活のなかで十分に心得ているからできる配慮です。
この全員参加による競技スポーツ活動により、生徒たちはレギュラーになれない敗北感、劣等感、挫折感、ひいてはスポーツに対する嫌悪などを持つ必要がありません。また、常に自分の技量のベストを尽くして、多くの生徒とスポーツを通じて交流ができるのです。
このシステムにより、新入生にも適切なチーム配置が行われるため、スポーツに対する親近感や達成感をボーディングスクールの生徒たちは、入学した年から無理なく学習することができるわけです。
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