次世代教育 (第27回)
第27回:親がわが子に「ホッ」とする時
株式会社E-Concierge
代表取締役
斉藤 克明 (さいとう かつあき)
11981年より一貫して海外の初等・中等教育コンサルティングに携わる。1999年、中学・高校留学ガイドを出版。 2001年、日本人初のアメリカに本部を置くIECA(教育コンサルタント協会)のメンバーとなる。E-Concierge代表取締役、海外留学協議会副理事長。
(2011年12月15日掲載)
アメリカのほとんどのボーディングスクールは感謝祭の間、寮を閉じます。
学校全体が休むわけですが、日本のゴールデンウィーク、
お盆休みといった全国的な休日期間となります。
その時期は11月の最後の週で、アメリカだけの習慣です。
この期間、日本に帰国する生徒が多いのですが、
友達宅に行く、ホームステイをするなどで帰国しない生徒も
全体の2割くらいいます。
さて、感謝祭休みが終わり、あるお母さんからメールをいただきました。
塾のようなモーレツ学習プログラムに参加していたわが子が
無事、学校に戻ったとの連絡に、ホッとしたそうです。
「ホッとした」という表現がなんとも現実味があり
お母さんの安堵の気持ちに共感します。
卑近な例で恐縮ですが、私の息子が留学した時、
私がホッとした時はどんなときだったろうかと振り返ります。
当時、私は大阪におり、家内と二男が埼玉でした。
元気でやっていてくれれば、特に望むものはありませんでした。
しかし、なかなか成績が「親が思うように」は、上がりません。
そこで、国際電話でTOEFL英語を教えるという、
親バカに私は至るわけです。
では、私と家内は息子の成績があがれば、「ホッとした」のでしょうか。
たぶん、違うと思うのです。
成績ではなく、彼が伸びのびと現地でやっていることが、
伝わった時が、いくつかのホッとする瞬間だったのだと思います。
上をみればきりがなく、下を向いてもきりがありません。
成績は子どもが納得しなければ、絶対に向上しません。
さて、時がたち、息子はニュージーランドでの3年間を終了し、
帰国して大学には行かず、コンピュータの専門学校に入学しました。
親が考えた道からは外れましたが、好きでもない勉強を無理やり、
やらせるわけにはいきません。
そこでの3年間もあっという間に過ぎてゆき、
独断でさっさと医療機関にコンピュータによる患者管理システムを
提供している会社に就職しました。
家内は比較検討もせず安易と言っていましたが、
私は息子の就職が決まって「ホッとしました。」
会社勤めも4年目になった今年、息子はある
ヘッドハンティングの会社から連絡を受けたそうです。
家内は、チャンスとばかり、「会うだけでも会ってみれば」と
促したようですが、息子はそのつもりは全くないようです。
彼曰く、「何もわからなかった自分を育ててくれた会社だから、
他の会社に行く気はない」とのことです。
特に、直属の上司には大変世話になったそうです。
仕事柄、英語圏で学校の仕事に従事する沢山の人と知己を得ます。
彼らは3年程度でどんどん職場を変えていきます。
そんな中で、職場を変えない人もいることも事実です。
いずれも、自己選択、自己責任。
生き方は十人十色です。
少しずつ生き方が固まりつつある息子のように思います。
そんな彼に私はホッとしています。
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